kimono furisode sakura


一昨日は午後会社休んで遊びに行きました。友人の家に何人か集まってお茶とお菓子でお喋りし、夜はレストランに行ってまた喋りまくっただけですが、普通じゃないのは、私たち和服姿だったんです。

去年からこうして何度か集まっては着物を着る機会があるのです。友人のお友達で日本から留学にいらしてた着物好きの女性が着付けを教えて下さり、更に彼女の着物仲間の方々が日本から着物をたくさん送って下さったんです。ロンドンでは手に入らないだろうとご親切に譲って下さったのですが、中には新品も何枚かあり、私もお裾分け頂いたりお借りしたりして、その度にちがう着物を着る楽しみを味わっています。その方、ときどきここにもコメント下さる春さんですが、3月に留学を終えて帰国なさったのですが、今回お仕事でロンドンにいらしたので、皆で集まって旧交を温めたわけです。

私は、着物を見るのはずっと前から大好きで、何年か着物雑誌を定期購読し(日本の3、4倍の料金ですが)、写真を何度も何度もなめるように見入っては「これいいな、あれ素敵」と楽しんでいたのです。もし日本にいてちょっと小金持ちだったらハマってしまったにちがいないですが、ここにいる限りは手の出しようがなくて安全ですから。ロンドンでは会社のクリスマスパーティなどで何度か着たことはありますが、自分で帯が結べないので付け帯。娘時代には着付け教室にも行ったし、お茶やお花のお稽古には時々自分で着てましたが、すっかり忘れてしまいましたもんね。

最近の日本の着物ブーム、里帰りしたときの目の保養が増えました。とくに若い女性の浴衣姿の可愛いこと。カラフルで浴衣というより木綿の着物ですが。ガールフレンドを花火大会なんかにエスコートする男の子の浴衣姿もたまにあり、やっぱり日本人は和服だと魅力が三割増しだと確信します。
そう、体格の貧弱な日本人は洋服では西洋人に絶対負けるので、男性も女性も、外国でも日本国内でも、皆さん勝負するときは和服にしましょう!

私もこれからオペラに行くときはなるべくおベベにします! 
秋に一度だけ仲間二人とロイヤルオペラハウスに和服で行ったことがあり、チャールズ皇太子臨席の特別チャリティ・ガラ公演だったので、タキシードとイブニングドレスの正装の人がたくさんいた中、私たち3人はとても目立って、ラブリー! ビューティフル!と絶賛されました。ビューティフルなのは着物だってのはわかってるけど、あんなに誉められたのはじめただからすっごく気分よかった~。他に日本人も何人かいて正装してたけど、ご婦人方は「っんもう、私も着物着てくればよかった!」という悔しい顔なさってましたよ。そうですよ、今度からはあちこちに着物で行って下さいね。

因みに、そんなすごいガラ公演、さぞ高かっただろうとお思いでしょうが、たしかに終演後ディナー付の切符は半端じゃない値段で、なんと2千ポンド!一人分がですよ。でも、私たちは横の上の方の貧乏人席なので13ポンド。もちろん飲み物すら付いてません。気合の入った格好をしていった割には情けないほとチープな席でしたが、まあこれはこれ。
しかし、オペラに着物で行こうと思っても、会社帰りにどこで着替えて荷物はどうする、帰りの足は?と問題が山積み(これは日本でも同じでしょうが)。幸いこの頃着る機会があるのも、着替えさせてもらってときには泊めてもらえる友人の家が便利なところにあるからです。さらに一人ではとても勇気がないけど、一緒に行ける仲間もできたし。エキスパートの春さんがいなくなって後は初心者ばかりになってしまいかなり心細いですが、これからはせいぜいあちこちに皆で出かけようねと誓い合ってるところです。

でも、ここでは日本での決まりごとをきっちり守らなくてもいいんだと割り切れば、初心者ばかりでもなんとかなりそうです。真夏に袷(裏地付)を着てもいいし(暑くないから平気)、桜模様は日本のシンボルだから年中オッケーとか、グループで訪問着の人とウールの人が混じってても別に構わないですもんね。だらしないとこを見せるのは嫌ですから、着付けと振る舞いはきちんとしたいですが。

しかし、着物でさえあれば何でも注目されて誉めてもらえるというのは外国で着物を着る場合の単純な喜びでかつ楽ちんでもありますが、いわば底の浅い喜び。日本の着物通の人は、その場に相応しい着物の格や帯との組み合わせ、季節感、素材選び、色彩感覚という「知識と感性」、更に経済力も加えた総合点で「おぬし、できるな」と思われることが醍醐味なのでしょうが、ここではそういう深い楽しみが期待できないのはつまらない気もします。

なんて、初心者の私がそんな物足らなさを感じるのは十年早いわけで、眉をひそめる人がいないから自由にできるという利点だけ利用してせいぜい楽しみたいと思います。もうひとつ嬉しいことは、うんと若作りできること。日本では絶対着られないド派手な着物の方が受けるので、娘時代の着物を活用することができます。冬に実家から何枚か持ってきたのですが、私の着物の始末に困っていた母がとても喜んだので思わぬ親孝行にもなりました。それを先日娘に着せて写真も送ってあげました。そう、着物ってサイズが関係ないのも便利で、うちのデカ娘にも、多少不恰好ではありますが着せられます。

大昔私は他にも日本的なお稽古事をしていたので結構着物は持っていて、実家の箪笥の肥やしになっているので、夏に行ったらまたいくつか持って来る予定。ン十年前の振袖も持ってきて着てみようかしら、などという大胆な発想も出てきます。

手はじめに、来週は2回着物でオペラハウスに行きます! まずは明日、師匠の春さんと。