オペラハウスに多額の寄付をしてきたキューバ人のAlberto Vilar氏については、テーマ別オペラはいかが?の「お大尽がこけた-オペラハウスの救世主、逮捕されるの巻」でご紹介しましたが、今週、ロイヤルオペラハウスは彼の寄付で設立した若手オペラ歌手育成プロジェクトVilar Young Artstsから彼の名前を外すことを決定したそうです。あくまで約束したお金を送ってこないからというのが理由であると強調しているのですが。もう一つ、彼の名前を付けたガラス張りの大きなロビーVilar Floral Hallの名前の変更も検討せざるを得ないようです。


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Mr. Alberto Vilar




さて、そのVilar氏が作ったファンド・マネージメント会社Amerindoには共同経営者がいて、その人も客のお金に手を付けたという同様の疑いで一緒に逮捕されてます。

その人Dr. Gary Tanakaは61歳の日系アメリカ人で、第二次世界大戦中、幼いときにアメリカで日系人収容所にいたこともあるそうです。ロンドンの名門大学インペリアル・カレッジで数学を学び、博士号まで取っている彼は、この数年間Amerindoのロンドンでの経営責任者だったのですが、彼も分野はちがえどお大尽なのです。


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Dr. Gary Tanaka

Vilar氏はオペラハウスの救世主となりましたが、一緒に儲けたお金でタナカさんは学校を作りました。

彼が寄付した27百万ポンドで母校インペリアル・カレッジにTanaka Business Schoolという大学院が創立され、一年前にエリザベス女王によって開校されたのです。新校舎はイギリス建築界の第一人者で世界的建築家Sir Norman Fosterの設計。これは凄いことです。

百年近く前に創立されたインペリアル・カレッジにとっては最も多額の寄付だそうで、イギリスでの教育機関向けの寄付の中でも歴代2位だそうです。トップはかのビル・ゲイツ氏がケンブリッジ大学に寄付した150百万ポンドで、それと比べるとかなりスケールに差はありますが。


そしてタナカさんの道楽は競馬。競馬と言っても、耳に赤鉛筆挟んで賭馬を選ぶようなケチな趣味ではもちろんなくて、サラブレッドを数頭所有するオーナーです。投資家のお金を個人的に使ったという疑いで現在捜査中のこの事件も、お金の使い道はサラブレッド購入ということのようです。



キューバからの移民であるVilar氏、日系米人のTanakaさん、境遇的ハンデはあっただろうに、鋭い時代感覚と相場観で大富豪になり、寛大な寄付で世の中に還元もしたのに、ちょっと魔が差したために、サクセスストーリーがこんな結末になってしまうなんて悲しいことです。