ロイヤルオペラハウス(以下ROH)の新シーズンの始まり始まり~! 


9月はROHで3つのオペラの切符が買ってあります。

以下は、5月にこの期間の会員先行予約について書いたときの文章をちょっと手直ししたもの。

そう、それを書いてから4ケ月してやっと実際に行くときが来たのです。


① ドニゼッティの「ポルトガル王セバスチャン」をコンサート形式で

去年のオープニング「ジョコンダ」に続き、又コンサート形式での一年のシーズンの幕開け(シーズンは9月から7月まで)。ジョコンダは、設定のスケールが大き過ぎて実際に舞台にしようとするとすごく費用が掛かるので、それならいっそなーんにも無しで、あなたの想像の中で思い切り豪華なセットを作り上げて下さいねというスタンスだと私は努めて好意的に取ってあげたけど、また今年もと言われると、なーんだ経費ケチっただけだったのね、と思わざるを得ない。

コンサート形式といういのは、やる方も聴く方も歌にだけ集中できる分ピュアで、ある意味すごい緊張感もあり素晴らしい体験できることが多いので私は好きだけど、それはオペラ用にできていない他のコンサートホールでやるべきものであって、オーケストラピットがあるオペラハウスがやると、なんかケチ臭いんだよな。

ドニゼッティだから、美しくて聞きやすいメロディのベルカント・オペラなんだろうけど、ほとんど上演されないということは、印象に残らないつまんない作品かもしれないことを覚悟しなくちゃね。でも出演者がROHにしてはかなり豪華顔ぶれ。そりゃこんな立って歌うだけの舞台、人気歌手を出さないと切符売れないから当然だけどね。

メゾ・ソプラノのトップの一人である個性的な声のブルガリア人のヴェッセリーナ・カサローヴァ、イギリスの人気バリトンのサイモン・キーンリーサイドとベテランのイタリア人バリトン、レナート・ブルソン。ブルソンは日本にはよく行くけどロンドンには全然来てくれないので、やっと聴けるのが楽しみ。ピークは過ぎてるだろうけど。サイモンは得意な芝居なしの歌だけの勝負でいつもよりちょっと不利。もちろんすごく上手なので心配はしてませんが、でも自慢のカラダは見せてもらえないだろうなあ。燕尾服を「ちょっと暑いから・・」と途中で脱ぐわけにいかないもんね。

因みに、コンサート形式と言っても実際にはまちまちで、衣装もセットも全くなくて歌手が横に並んで楽譜を見ながら歌うだけのものから、椅子とテーブル程度で雰囲気を出してフル衣装で芝居入りというスタイルまで色々見たことがある。 例えばROHでドヴォルザークの「ルサルカ」という人魚姫の物語のオペラをやったときは、セットも衣装もなかったけど、フルに芝居もしてる人と楽譜を見ながら歌ってる人が混じってて、妙ちくりんなパフォーマンスだった。


② プッチーニの「西部の娘」


オペラには珍しい西部劇。ゴールドラッシュ時代のカリフォルニアが舞台の酒場の女主人とならず者のロマンス。ドミンゴのビデオを観たことあるけど、やっぱりすごい違和感! カウボーイがイタリア語で歌うんだもの。まあそんなこと言ったら、「蝶々夫人」は和服姿でイタリア語だし、「カルメン」ではスペインの闘牛士がフランス語で歌うのも同じと言えば同じだけど。でも、そう言えば70年代の初めごろでしたっけ、マカロニウェスタン映画が流行ったよね。あれも変だった。まさかプッチーニのこのオペラをヒントにしたわけではないだろうけど。

アルゼンチン人の人気テノール、ホセ・クーラが出るので、この予約期間では一番の目玉。クーラは長身で一応ハンサム。あの濃い顔立ちは私の好みじゃないし、ナルシストでええかっこしーだから、なんだこいつ、と思うときもあるし、ふーん結構上手いじゃいないのと思うときもあるし、好きなのかどうかよくわかんない。


jose cura

クーラは目も鼻も(特に鼻が)大きくて造作の派手な顔だし、芝居も大袈裟だから、そんなに近くで見なくてもいいかなという気もしたけど、この舞台は写真で見ると随分まともでお金も掛かっていそうだから、舞台横の近くの席にした。ホコリをはらって10年振りにお目見えする舞台セットだそうだ。



③ カール・ニールセンの「Maskarade」

このオペラの定着した日本語題名あるとは思えないけど、「偽り」と意味で、素性を隠すこと。仮面舞踏会という意味にもなり得るので、そういう設定かも。カーペンターズが有名にしたスタンダードナンバーもあるよね。

ニールセンはデンマーク人ではもっとも有名な作曲家(というか他には知らない)。交響曲中心の彼がオペラ書いたなんて知ってる人はデンマーク以外にはいなかったと思う。これはデンマークでは人気のあるコメディオペラだそうだ。でもそれなら英語版じゃなくてデンマーク語でやってよね、と言いたい。歌手は知らない人ばかりだから、きっとデンマークではこれを歌って知られてる人たちなんだろうけど、それなら余計、そのままやればもっと生き生きするのにね。

歌詞を翻訳するのは私は大嫌い。本来の言葉の響きにメロディを付けてるんだから、変えたらぶち壊しよ。それともこのオペラを世界的に広めようという計画なんだろうか? そのためには英語にしちゃうのが一番、という気持ちはわかるけど、私は断固反対。だからEnglish National Operaに行かないんだ。

 

♪ ~~ ♪  ♪~  ♪  ♪  ♪


この他に、まだ切符買ってないけど、明日グノーの「Romeo et Juliette」に行く予定。British Youth Operaという若い人ばかりの臨時グループで、毎年夏に二つの出し物をやるんだけど、今年はこれと、モーツァルトのコジ・ファン・トゥッテ(略してコジ)。コジはモーツァルトの中で私が一番好きなオペラの一つだけど、ちょっと飽きたし、仕事も忙しいので行けない。


彼らは毎年South Bankにある中劇場Queen Elizabeth Hallで公演するんだけど、今年はそこの大劇場が改装工事中なのであおりを食って追い出されたんだろう。今年はピーコック劇場というROHの近くの劇場でやることになっているけど、切符の売れ行きはすごく悪いらしい。数日前に電話予約しようとしたら、「たくさん余ってるから、当日来て直前に買えばいいのよ」なんて言われてしまった。そう言えば、宣伝も見てない。レギュラー客である私は積極的にホームページを見に行ったから知ってるけど、PR不足だ。


私はここ数年、ほぼ毎年行っていて、舞台セットは安普請だけど歌の実力はなかなかだというのは知っているし、何よりも若い人たちが一生懸命に充分練習してこのチャンスに賭ける情熱が伝わってくるのが嬉しい。年寄りの役も若い人がする点は無理があるけど、若い設定の役を本当に若い歌手が演じるのは、有名オペラハウスではなかなかできないことなので、このオペラ団の一番の強味だ。

特にロメジュリはティーンエージャーだから、少なくとも絵的にはぴったりの筈。


実は私はこのオペラにかなり思い入れがある。それは鑑賞後の記事で書くね。