15日にグローブ座でシェイクスピアのお芝居を観に行きました。

シェイクスピア時代の劇場をそのまま再現したこの「芝居小屋」、アメリカ中堅俳優の故サム・ワナメーカーが再建提唱しはじめたのは20年くらい前かもしれません、何度か資金集めに挫折しかけたけど、8年前に完成。いつか行ってみたいとずっと思っていましたが、芝居に疎くて腰の重い私、やっと行けました。


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↑これは模型

グローブ座

セント・ポール寺院の河向こうに位置するこのエリザベス朝の円筒形芝居小屋、すぐ近くのテート・モダーンと比べたりすると外からは小さくみえるのですが、中はそこそこのサイズで、舞台の前がヤードと呼ばれる立見席で、600人入れるそうです。プロムス同様、体力さえあればこの立見席ががベストの席で、昨日は半分ちょっとの入りだったでしょうか。屋根がないので、天気の良い日は快適ですが、雨が降ると濡れちゃいますが。


その周りをほぼぐるっと囲む傾斜の急なギャラリー座席は13ポンドから29ポンドで、1,400席くらいはあるでしょうか。私たちが座ったのはほぼ一番上の階で18ポンド。舞台を横の上から見下ろす席だったので、役者の背丈の比較とかできないのですが、声はよく聞こえました。もっとも、時々ヘリコプターの音がうるさかったですが(これは大きな誤算でしょう)。小さな子供が泣き出したり、遅刻しても席に入れてくれたり(私たちはちょっと遅刻)、雑然とした雰囲気は、すましたオペラハウスとはかなりちがってました。但し、全てオリジナル通りの設計と建材で建てられているので、席は板ベンチで硬いし狭いこと(1ポンドで貸クッションあり)。下の階、かつては貴族やお金持ちが座ったんだろうから、もうちょっと余裕があるのかしら? そうでなかったら、膨らんだスカートの当時の貴婦人たちは困ったでしょうに。

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Measure for Measure

私たちが見たのはMeasure for Measureというお芝居で、それまで題名さえ聞いたことなかったですが、無理に悲劇か喜劇かに分類すれば、かなりダークですが誰も死なないしハッピーエンドだから喜劇でしょう。内容を一言で言うと、公爵が修道僧に変装して悪者を退治して弱い者を助け、最後に実は私は偉い人だがね~、へへーっおみそれしました!という「遠山の金さん」。でも、この殿様もずる賢いし、登場人物全員が結構自分勝手で複雑なところがさすがシェイクスピアの奥深いところ。

因みに日本の題名は「尺には尺を」って言うんだそうですが、これではあまりにも直訳で意味がわからないので、「目には目を」という意味です。普通には使いませんけどね。ご興味ある方はシェイクスピアの森 を覧下さいませ。



映画「恋に落ちたシェイクスピア」そのままの世界

この映画をご覧になった方は、雰囲気がわかると思うのですが、舞台の設えも衣装も台詞のトーンも丸っきりあの通りです。この舞台をロケに使ったのかどうかは定かではないですが、使わなかったとしたらかなりそっくりなセットを作ったわけです。

映画の中でグイネス・バルトロウ(これでアカデミー主演女優賞)が舞台に出るために男性と偽って男装するのですが、いつもそうであるとは限らないようですが、今日はかつてのスタイルでの上演で女優は登場せず、全員男性です。歌舞伎の女形のようなつくり声はせず、普通の男性喋りで演じますが、立ち居振る舞いはわざとらしい女々しさではありませんがとても女らしくて、今回の主役の二人の女性役は長身で若くてハンサムな男優だったのですが、お白粉塗った顔の美しいこと。

(着物姿でも舞台映えのする男性の方が綺麗ですよね~。「名古屋おどり」のとき、あ、あのお姉さん美しい!と思った人はみな男性だったし、「歩く日本人形」坂東玉三郎に敵う女性がいるでしょうか?)


パフォーマンス

私は生の芝居をほとんど見たことがないので演技の良し悪しは判断できないし、俳優さんたちが演劇界で有名なのかどうかも知りませんが、当たり前だけやたら台詞が多くて、あれを流れるように喋るだけでも大変だ。あらためてシェイクスピアって戯曲なんだから本で読むものではなくて舞台で聞くものだと再確認。言ってる単語を全部聞き取れるわけではないけど(程遠い!)、英語の響きの美しさを堪能するのが一番の醍醐味にちがいないです。だから、他の言葉に翻訳してしまったらオペラと同じで、魅力は激減なのではないでしょうかね? にも拘わらず世界中で人気があるのは、内容の濃さだけでも充分価値があるってことでしょうけど。

だから一番いいのは、まず本を読んでみて、それから生舞台で鑑賞する、なのでしょうが、でも原文はとても難しいんですよ。我が家に古文そのままの全集があるのでちょっと読んでみた読んでみようとしたんだけど、全く歯が立たん!因みに舞台は古文そのままではなくて、現代語になってます。そうでなくっちゃ、かなり教養あるイギリス人でも理解できんぜよ。


最初はだらだらと喋ってばかりで、しかもしょっちゅうわからないので退屈だったけど、段々耳が慣れてきて、といっても相変わらず英語は聞き取れないけど、そのリズムに体が順応してきて、何度も見るとハマってしまいそうな気もします。これって宝塚と同じかも。最初はすごい違和感で気持ち悪いけど(宝塚ファンの方ごめんなさい)、1時間くらいで順応してくるもんね。


14人の俳優の他に、5、6人の音楽隊もそれらしい衣装を着て登場。全て古楽器で演奏レベルも文句なし。こちらはFゼッフィレリの映画「ロミオとジュリエット」(Oハッセーがジュリエットだったやつね)そのままです。

今回の席からは表情が見難かったので、次回はかぶりつきで立って見たいものです。といっても今年はもうこれでお終いなので(夏だけしかできないですよ、寒くて)、来年の夏ですが。今回は午後2時からのマチネでしたが、本来は夏の夜に楽しむもの。段々日が暮れて、照明(電気は使うのかな?)を灯してくのが風情を味わうために次は夏に行こうっと。



着物イベント

ねえ着物でどこかにお出かけしましょうよ、そうねどこかいいかしらね~、そうだ雰囲気いいからグローブ座にしましょうよ、ということだったんです。

10月中旬はかなり寒いかもしれないので心配でしたが、運良くピカピカの快晴で20度以上というロンドンでは夏の気候。でも暑くないから絶好の着物日和、3人で羽織着て、しゃなりしゃなり(着付けに手間取って遅刻したので走ったけど)、3人いるとインパクトも強くて、ビューティフル!と何度も言ってもらいましたわ、オホホ。

気をよくした私たちは、この秋オペラ以外にも着物でお出かけするイベントを作ろうねということになりました。