今年５月の総選挙の敗北後直ちに辞任表明したマイケル・ハワードの後任者選びはこの数ヶ月、数人の正式候補者を保守党国会議員の投票で一人一人落としていき、最終決定は２０万人の全国党員による郵便投票により行われました。
最終投票はDavid Davis(５６歳）とDavid Cameron（３９歳）の「二人のデイビッド」の間の一騎打ちとなり、最初はDavis氏が最有力でしたが、その後若いＣａｍｅｒｏｎ氏がぐんぐん追い上げ、秋の党大会での討論で逆転し、それからはCameron氏の勝利ほぼ間違いなしと言われてました。投票結果は134,446票対64,398票で予想通りCameronの勝ち。
一時は麻薬経験があるのではないかという疑惑がありましたが、結局真相はわからず終いで影響なしでした。
どっちになってもデイビッド。 でもどっちが良い男と言ったら、そりゃあねえ・・。・
キャメロン氏の経歴と家族
上流階級のお坊ちゃまの証である名門私立イートン校出身でオックスフォード大学卒。国会議員になったのは僅か４年前なのに党首にまで一気に駆け上った異例の出世（なにかと比較されるブレア首相は１１年掛かった）。でも、母方の先祖には著名な政治家が何人もいてコネもあり、大学卒業後は政界に就職し、ジョン・メジャー首相の助手、有力政治家の特別アドバイザーとなり、自ら政治家になること決心してからは「他の世界も経験して視野を広げるため」に民間テレビ局にPR取締役として数年間勤務。
９年前に結婚したサマンサ夫人は３４歳。キャメロン氏の妹の親友だったそうな。ブリストル大学でアート専攻。ネル・グインというチャールズ二世の有名なお妾さんの子孫でなかなかの名門出身。今は王室ご用達の超高級文房具屋Smythson社の取締役。
１男１女があり、来年初めに３人目出産予定であるが、長男は重度の身体障害者なんだそうです。
長身で若くて甘いマスクの新党首が誕生して、果たして地盤沈下の保守党は蘇るでしょうか？
４１歳で首相になったときは若くて颯爽としていたブレア氏も５２歳の今では老眼鏡を必要とし髪も薄くなったしイラク戦争で批判されてお疲れ気味。同じオックスフォード大学卒で若くて弁の立つイケメン党首という点でこの二人は当然よく比較されますが、ブレア首相の後釜候補がキャメロンだったらいいのに、と思っている労働党議員も結構いるにちがいありません。ブレアの後釜と誰もが信じるブラウン蔵相はもっさりしたおじさんだもんね。
不思議なことに
ところで、伝統的には上流階級高学歴＝保守党、下流階級低学歴＝労働党という図式であり、概して当てはまるのでしょうが、不思議なことに、保守党の党首はこの４０年間、公立学校出身の普通階級の人ばかりが続いたのでした。サッチャーさんは雑貨屋の娘、ヒース首相は鍛冶屋の息子。この二人はそれでもまだオックスフォード大学卒なのですが、メジャー首相に至ってはなんとサーカス芸人の息子で中卒という、労働党ならわかるけど、保守党員には最も当てはまらない経歴でした。
皮肉なことに、ブレア首相はそこそこの階級出身でオックスフォード大学卒という典型的な保守党型。
そんなとき、久し振りに彗星の如く現われたキャメロン党首は、まるで絵に描いたようなバチバチの上流階級のお坊ちゃま。でも、一昔ならいざ知らず、保守党と言えども全階級の人に指示されないことには政権を握ることはできないわけで、イートン校出であることはむしろ最大の欠点とみなされてます。雲の上の特権階級の人に一般人の苦しみがわかるわけねえだろって思われるちゃうんですね。
だから必死で庶民派であることを強調するため、ロールスロイスとかではなく、自転車で通ってポーズつけてるわけです。
「ほら、見てみて！ 僕、君たちと同じだよ～」
上流階級と言えば、私はかつてロンドンでオーペア（家事手伝い英語研修）として上流階級の家に住み込んでいたという経験があり、このブログにもいくつかの記事 を書きました。でも、まだ肝心の私が働いていた家庭の生活振りを書いてなくて、いつか書こうと思ってはいたのですが、こんな人が檜舞台に登場したら、また書きたくなりました。折角トーチャンに写真をスキャンしてもらったことでもあるし。
最後に、２、３日前に皆がへえーっと思ったことなのですが、このキャメロン氏、実は王室と血が繋がっていることがわかり、本人もびっくり仰天したようです。ウィリアム４世（在位1830-1837年 ）の私生児が彼のご先祖様だったんだそうです。
この王様、浪費家伊達男のジョーシ４世と締り屋勤勉ヴィクトリア女王の間に挟まって、在位年数もごく短いし、何も特徴もなく忘れられた存在なのですが、子供がいなかったために姪のヴィクトリアが即位したのです。正式な跡継ぎはいなかったのに私生児は１０人もいたそうですから皮肉なことです。