１２月７日にバービカンで今をときめくメゾ・ソプラノ歌手、驚異的なコロラチューラが人間技とは思えないCecilia Bartoliのリサイタルがありました。
私の一番のご贔屓の女性歌手バルトリ
ここ数年間、彼女は忘れられたバロック曲を発掘して録音するのを使命としていて、新しい（？）ヴィヴァルディや他の人が歌ったら退屈なサリエリのＣＤを作ったりコンサートで披露してくれています。レパートリーが限られているクラシック音楽界で今まで接したことのない曲を聴けるのはありがたいことで、何を歌っても売れるのを利用してレコード会社を説得できるチェチリアに感謝。
最新ＣＤ「禁じられたオペラ」。
今回のリサイタルは最新プロジェクト禁じられたオペラ
のＣＤのヘンデル、スカラッティ、カルダーラを歌ってくれました。詳しくはリンクを読んでいただくとして、18世紀初頭ローマではオペラが禁止されていたときがあったそうです。
しかし、このＣＤカバーの彼女は、ウエストがくびれて別人のようにほっそりしてるので、修正の疑いも大い
にあり、と思っていたのですが、実際に舞台に現われたチェチリアを見て私はびっくり。ホントに痩せたんだ～！
以前はいつも太ったボディを無理やり締め付けてスカートはふっくらしたタフタの中世風ドレスでしたが、今回は全くちがうシルエットのスレンダーで体の線が全身くっきり出る黒いドレス。ウエストも一応ちゃんとくびれてました（とは言っても決して細くはなくて、デブが「普通の太め」になった程度ですけど）。
長いカーリーなブラウンの髪もてっぺんで結んで、贅肉が落ちてシャープになった顔や首を見せ、オーガンジーのスカートでしゃなりしゃなり歩く今日の彼女はおしとやかな大人の女に変身したみたい。今までは下町のきっぷの良い元気姐ちゃんだったけど、３９歳になってイメージチェンジを図ったのでしょうか？
しかし、姿は変わっても、歌い始めたらお馴染みのチェチリアで、大袈裟とも言える程たっぷり感情を込めて一曲一曲ドラマチックに表現。早いリズムの伴奏のときは激しくこぶしを握ってまるで武者震い。彼女の独壇場であるコロラチュールでコロコロ転がして、驚異的な声のアクロバットを嫌というほど（もちろん嫌ではないですよ）聞かせてくれました。どんな退屈な曲も彼女が歌うと変化に富んで素晴らしく聞こえます。
ずっと唸って転がしてたらゲンナリするかもしれないけど、そこは天性のエンターテイナー、知っているのは１曲だけでしたが、思い切り甘い声オでソフトに歌う部分とのコントラストが絶妙で始終感心したりうっとりさしたり。
クラシックのコンサートとは思えないようなやんやの喝采と指笛ヒューヒューはいつものことで、今回もチェチリア節に満足した観客は満場割れんばかり。気をよくしたチェチリアはアンコールを４曲歌ってくれました。アンコールと言えば、珍しい振る舞いもありました。一曲のアンコールが終わって元気に手を振りながら舞台を去りかけた彼女、舞台の袖近くまで来て急にくるっとＵターンし、２曲目を歌い始めたのです。
一つ残念だったのは、私の席の位置。発売初日にネットで買った最前列の切符ですが（３１．４５ポンド）、真ん中から６、７メートル離れているので、声がちがう方向に飛んでしまい、完璧に聞こえたとはいえません。今まではいつも真正面で５メートル以内の席だったので、それに比べると今回は、良い選択だったとは言えません。そんなに選択の余地のあったとも思えないのですが。次は絶対真正面を狙います。しかし次回っていつかしら？
キャンセル常習犯は今度こそ果たして日本に行くか？
ここ数年は毎年１２月にリサイタルをやっていて、というかやることになっていたけど、この５年間で２回キャンセル。去年１２月は一昨年キャンセルになったリサイタルのやり直しでした。
今までキャンセルになったときは、
①まずバービカンから 「なるべく早く代りのリサイタルを開きますから、切符はそのまま持っていて下さい」 という手紙が来て、
②そして暫くすると、「すみません、彼女のスケジュールの都合がなかなかつかないので払い戻します」 と続き、
③忘れた頃に 「やっと代りのコンサートが決まったので、ご希望であれば同じ席をお売りします」 というパターンでした。
それそれ一年掛かったので、だから彼女のコンサートは２年掛かり。
キャンセルの常習犯の彼女のこと、今年も期待したらがっかりするかも、と３月に切符を買って以来楽しみにしてたけど当日まで不安でした。
来年３月の日本公演 も果たして実現するでしょうかね？前にも日本には行くことになっていたけどやっぱりや～めたってことになったことがあった。飛行機嫌いだそうで、ＮＹメトの大事なガラ公演もドタキャンしてヒンシュクだったそうです。
日本に今度こそ来てくれるといいですね。３月２４日に名古屋、２７日に東京オペラシティです。是非お勧めしたいけど、でも切符代が・・・す、すごい値段なんです。
でも、誰かが賭けようぜと言ったら、キャンセルする方に賭けそうな私です。