忙しくて記事を書くのが遅れましたが、


1月21日(土)にバービカンのダニエル・バレンボイムのリサイタルを聴きに行きました。

バレンボイム先生(以下先生)に対する想いは2005年5月のコンサート に書いてあるので、今回は手短に。


その記事にはもう二度と行かないと書いてあるのに又行ったのは、去年5月のコンサートの前にすでに今回も切符が買ってあったからです。3月の発売日当日に買った前から2列のほぼ真ん中の鍵盤寄りという最高の席を人に譲るのは勿体ないですからね。これで枚数割引後23.8ポンド。

この席だと先生の顔も手もばっちりで、先生が又譜面を始終見ながら必死なのがよく見えました。


でも今回は暗譜してないからと言って呆れたりはしません。一昔前までは音符見ながら弾くのも珍しくなかったようですし、とても複雑な曲なんです。バッハの平均律クラヴィア、先回は比較的簡単なbook1でしたが、今回のBool2は2本しかない手で同時に旋律3つも4つも弾くという数学式を分解するような困難さだそうで、素人の私には勿論識別できませんが、これを暗譜でやるのは大変でしょう。


先生は最近Book1と2のCDを出したのですが、それ以来あまり弾き込んではいらっしゃらないようで、何度か間違えたし、ときによってはかなり真剣に音符を目で追って苦労していたのがわかりました。先回より体調はよかったようですが、曲の間に何度か1、2分の小休止を入れて息切れ状態だったこともあります。続けて弾くようには出来てない独立した」練習曲なので構わないのですが。


barenboim 3


でもさすが音楽センスに優れた天才の先生、間の取り方は抜群で、今回は音も美しく聞惚れました。

それに先生のピアノ演奏の専売特許とも言えるまるでオーケストラのような多彩な音は健在でした。

実は前半かなり居眠りしてしまったのですが。土曜日だけど一日中働いて疲れていたのと直前にビール飲んだのでついコックリ(お酒には決して弱くないですが)。ま、これはこれで極楽。

正味2時間半以上弾いて下さった先生には嵐のような拍手で、最後はほとんど総立ち状態のスタンディング・オベーション。正直言ってそこまで素晴らしかったかどうかは疑問ですが、これは私が先生はピアノに専念して心血注げばもっともっと素晴らしい演奏ができるにちがいないことを過去の演奏から知っているからつい辛い評価になってしまうのかもしれません。


嗚呼、先生が指揮をやめてピアニストだけになってくれたらどんなに素晴らしいか!


今はどうしても片手間仕事に聞こえるんですもの。あれこれ才能があり過ぎて、でも時間がない天才のジレンマで彼自身にとっても苦悩にちがいないです。更にユダヤ人の先生は最近ユダヤ人とアラブ人混合オケを作って平和に貢献しようという崇高な目的も持っていらっしゃるので体がいくつあっても足りない状態でしょう。それはそれで素晴らしいっことで尊敬しますが、でもやっぱりピアノに専念して欲しいです。指揮ができる人は他にもいるし、中東和平は政治家でもできると思うので、せめて軸足をちょっとだけピアノに移して下さらないかしら。



このコンサートは、ロンドンでの初めてコンサートからちょうど50年という記念でもありました。今63歳の先生の13歳のロンドン初コンサートはモーツァルトのコンチェルトだったそうですが、天才少年ピアニストであった先生はその前にもイギリスの他都市では演奏済みです。

そのときの会場は当時できて間もないロンドン随一のロイヤル・フェスティバル・ホールで、今そこはガタが来て修復中ですが、先生はまだ現役バリバリで世界の音楽界のトップに立つ巨人ですでに伝説。

barenboim 1    baremboim 2

13歳のバレンボイム                50年間トップってすごい


年取ったら孫に「おばあちゃんはね、バレンボイムの演奏を何度も生で聴いたことがあるんじゃよ」と自慢できますね、きっと。


そう言えば12月のヨーヨーマ もバッハ(無伴奏チェロ組曲)でしたが、やはりバッハって深くて素晴らしいわあ!一人の作曲家の音楽しか聞いちゃいけないって言われたら絶対バッハ。何度聞いても飽きないどころか、聞けば聞くほどよさがわかるから、幸いまだバッハ初心者の私は末永く楽しめます。