最近ロイヤルオペラハウスでやっていた筈のアルバン・ベルグのWozzeckの記事がなかなかここに出てこないがどうしたのだろう、批評は素晴らしかったと聞いているが、と思っていらっしゃる方、すみません、これはパスしちゃいました。


生活費のために生体実験のモルモット代わりになって幻覚症状が出る惨めな一兵卒ウォツェックが、恋人の浮気を知って怒って彼女を殺し、自分も謝って溺死するという、思い切り暗い話なんですよ~。


オペラにはもっと悲惨な話はたくさんありますが、それはただ美しい音楽のための題材に過ぎないことが多く、例えば殺されて死ぬ場面で、まあこれが一番の見せ場なのですから、延々とアリアをポーズ付けながら歌うわけですよ。


だけどこのベルグのウォツェック、前衛的で緊張感に満ちた研ぎ澄まされた音楽で、救いようのない哀しみ苦しみがリアルでまっすぐどころか加速倍増して迫ってくるんですよ~。

怖いったらありゃしない。私はホラーは嫌いだから映画も見ないし漫画だってまっぴらという程の怖がりなんです、実は。


とは言っても、DVDで観たこともあるし怖いのを知りながら、2002年10月のこのプロダクションのプレミには観にいきました。ROHの出し物は一応全て見ることにしてますから。しかも一番高い席を奮発して普段は座れないオーケルトラストールの前の方でしっかり観ました。こういう一癖あるオペラは最高値段が僅か50ポンドだからなのですが。


そのときの新プロダクションは全ての面で絶賛され、確かにこれが20世紀を代表するオペラの一つであるのも理解できたし、パフォーマンスもこれ以上上手にはできまいと思う程の出来でした。2002年の主役はマチアス・ゲルネとカタリーナ・ダライマン、今回のリバイバルよりも有名な歌手二人で、脇役も芸達者で固めてました。今回のヨハン・ロイター&スーザン・ブーロックのコンビも高い評価を得ましたが、この手のオペラを下手くそがやったひにゃとても聞いてなんかいられない代物にちがいないですね。


しかし、聴いていて本当に頭痛がしちゃいましたよ。そんなこと初めて。たしか休憩なしの100分間ぶっ続けだったのですが、そんな目立つ席にいて途中で去るわけにもいかないし(勿体ないから去りませんが)、長い苦しい時間、「素晴らしい作品であるのはわかった!でも早く終わってくれ~!」という気持ちでした。


そんな経験したので、今回パスしたことわかって頂けますよね?



wozzeck 2 今回のJohan ReuterとSusan Bullock。マジに可哀相な二人。

wozzeck 1  ぞっとするような冷たいセット。ヴォツェックは最後この水槽の中で10分間も溺死状態なんですよ(目を開いたまま)。グロテスクでしょ~!

これに比べたらうんと明るくて楽しい「オネーギン」を明日また観にいきます。