5月11日、バービカンのMaxim Vengerovのヴァイオリン・リサイタルに行ってきました。
僕、UNICEF大使もやったよ。クラシック音楽家では初めてさ。
もう、素晴らしいのなんのって!
絶対に彼が世界一上手なヴァイオリン弾きだと断言します。
曲目は;-
モーツァルト Adagio in E major, K.26 (Max Rostal編曲)
ベートーベン Sonata in C minor, Op.30 No.2
プロコフィエフ Sonata No.1 in F minor, Op.80
ショスタコービッチ Ten Preludes from Op.34 (dmitri Tziganov編曲)
お馴染みの曲は無いですが、そんなことはどうでもいいのです。私がコンサートを選ぶのはほぼ全面的にアーチスト次第であり、曲目は二の次。第一、去年の3月(14ケ月前!)に切符買ったときは多分決まってなかったと思います。
たまたまブログ初めてからヴァイオリンのコンサートは初めてなのですが、以前はよく行って有名どころを片っ端から聴きました。その結果、もう彼以外は聴く気がしなくなった程です。
一流演奏家のコンサートに行きまくって、気が付いたことがあります。
「ピアノは、上手な人は演奏中ずっと上手だし音もきれい。下手なずっと下手で音色も汚い。何章節かだけ突然上手く弾けることはまずない」
「対照的に、ヴァイオリンは、短いフレーズだけ上手にできる人はたくさんいるが、高いレベルでずっと弾き続けられる人は少ない。上手かどうかは継続度で判断されるべき」
いかがでしょうか? そう外れてないと思うのですが。
この定義付けでいくとヴェンゲーロフは、私が聴いた中では、文句なく現役の中では抜きん出てトップ。正確なテクニックと音色の美しさが一瞬の油断もなくずっとずっと完璧に続くのは驚嘆もの。他の一流ヴァイオリニストは、途中で少し力を抜いたり、抜くつもりではなくても指がもつれたりすることもあるのですけどね。
ほんと、どんなに褒め千切っても千切りきれないほど素晴らしいんです。これ以上上手に弾くのは不可能と思うくらい。
昨夜、のモーツァルトはひたすら甘く美しく叙情的に、ベートーベンはまっとうな王道的アプローチ、かなり前衛的なプロコフィエフはモーツァルトやベートーベンでは出てこない変則的な弾き方も含めあらゆる技巧をこらしたとても興味深い難曲、ショスタコービッチは遊び心たっぷりの短い曲の組み合わせ。変化に富んだ玄人好みのプログラムでした。
発売初日に買っただけあって、私の席は前から2列目のほぼ真ん中。ベンゲロフからの距離は約5メートルなので、どんなピアニッシモもはっきり聴き取れて最高の席。これが枚数割引15%で23.80ポンド。ロンドンに住む幸せを感じるときです。
英語も達者な彼はシベリア生まれの31歳。小柄で西洋人としては短足だしハンサムではないけれど、テレビで見たマスタークラスなどから気遣いのできる暖かい人柄が伺えます。まだ若いけれど、もちろん新進ではなく15年以上も世界のトップに立つ天才で、同じロシア人の神童キーシンと一緒に出てくるまだ子供のときの映像があり、二人揃ってもうメチャ可愛いの。
そう、ピアノはキーシン、ヴァイオリンはヴェンゲーロフで決まりです。
さて、ヴァイオリンは楽器の良し悪しで音色がちがってくるわけで、彼くらいになれば当然高価なストラディバリウスなのですが(Kreutzerというヤツだそうです)、これを買うときに多額のお金を寄付したのがMrs. Yoko Nagae Ceschinaという日本人女性です。
3、4年前でしょうか、友人と二人でバービカンのヴェンゲーロフのリサイタルですぐ後に座った初老の日本人女性に話し掛けられ、「あら、貴女方も日本人よね? 彼はお好き?」「勿論大好きですとも、彼がベストです」と少しお喋りした方がそのお助けおばさんだったのです。
なぜわかったかというと、ヴェンゲーロフが舞台で「今日は僕の恩人であるヨーコさんがそこにいらしてます」と発表したからです。ヨーコさんは服装の趣味がナンでしたが、身につけている宝石類がものすごかったので、「一体どこのお金持ちなんだろう」と思ってたところだったのです。
私もさ~、お金一杯持ってたら、才能ある音楽家に注ぎ込んじゃうわね~。
というわけで、アンコールは一曲しかやってくれなくてケチだったし、友人の隣に座った中国人(日本人かも)の中年女が演奏中に体を揺らすは居眠りするはゲップはするは挙句の果てにおナラまでするわで不快な思いもしたけど、久し振りに天才の演奏を聴けて幸せな夜でした。着物 も着られたし。
今年11月と来年5月の切符もすでに手に入れてあります。よしっ!