5月15日、Queen Elizabeth HallのYundi Liのピアノリサイタルに行きました。


yundi li   yundi li 7


彼は中国・重慶生まれの23歳。18歳でワルシャワのショパンコンクールで15年振りの優勝者になって一躍有名になった彼の経歴、ここでは漢字変換できない彼の中国名等はHPの
プロフィー ご参照下さい。



「中国のキムタク」と日本で言われているそのルックスは果たして評判通りか?、ショパンコンクール優勝に相応しい実力はあるのか?と、彼を初めて見聞きする私、ワクワクして出掛けました。

去年の9月に切符を買ったときはすでに鍵盤の見える前方の席はすでに売れてしまっていたので、今回は前から3列目やや右よりで18ポンド、彼からの距離は7、8メートル。

曲目は;-

Mozart Ssonata in C, K.330

Schumann Carnaval Op.9

Liszt Sonata in B minor G.178

Chopin Andante spinato et Grande Polonaise brillante, Op.22
        (当初、最初2曲はショパンのスケルツォでしたが、数週間前に変更)


yundi li 6   yunndi li 3   yunndi li 2


かお 顔は? ニコニコ

まず、肝心(?)のルックスですが、写真で見るより顔はややふっくらして、髪型はまるで70年代のヒデキやゴローのような(実は私自身もそうだった)ノスタルジアを感じてしまう長髪ウェーブ。

で、顔は、キムタクと同じ種類の顔ではあるけれど、残念ながらハンサム度はかなり劣ります。ルックスの貧しい人の多いクラシック音楽界であればこそハンサムと言ってもらえるのですが、顔で売る映画俳優にはなれないでしょう。しかし過ぎたる美貌は芸術家にとって邪魔なことも多いでしょうから、ユンディ君、これくらいでよかったと思わないと。


貴公子というキャッチフレーズも使われますが、舞台での仕草からは素朴な青年という雰囲気。童顔に燕尾服もあまり似合いません。


でも、演奏中の表情がすごく豊かだったので、それを見ているだけでも彼の心理状態が伝わってくるようで、斜めですが顔がよく見えるこの席でよかったと思いました。曲ごとに顔つきが一変したのが面白かったです。


最初は緊張するかと思ったのに、そんなことはなく、モーツァルトはリラックスして実に嬉しそうに始終微笑んでエクボができてました。シューマンの謝肉祭になるとそんな余裕はなく、急に真剣な顔になり、口もへの字で、ときには眉間に皺寄せて汗かいてました。しかし、それはまだ序の口で、休憩後のリストはもう必死の形相。誰が弾いても必死にならざるを得ない曲ですから当然ですが、髪振り乱して目を血走らせ・・・。かつてリストの演奏会では失神する女性が出たそうですが、見ている方の顔も引きつって呼吸困難になったのかもしれません。最後のショパンは、難曲を無事終わった安堵感そのもので、また笑みが戻りました。


ひとつ珍しかったのは、ユンディ君、弾いてる最中、没頭していても何分間かに一度顔を聴衆に向けるんです。ちょうど私が座っている斜め前あたりに視線が来るので(私はそう感じた)、その度に私はなんだかドキドキドキドキ。目はキムタク並に素敵なんですもの。とくに双眼鏡で見てるときに目が合うとハッとしちゃいました(至近距離でも双眼鏡使う変態です私)。


yundi li 4   yunndi li 3   yunndi li 1

音譜 演奏は? 音譜

演奏も顔にぴったり沿ったもので、モーツァルトは躍動的で若さに溢れ、滑り出しから良い音だったので、ああよかった、これは良いコンサートになりそうだと感じました。この夜の選択は彼のサービス精神の現れというか統一感はないけれど変化に富んだプログラムで、その中でもこのモーツァルトは他の3曲と全くスタイルも異なり、ショパン弾きだと思われている彼のちがう一面を見せてくれました。シューマンの謝肉祭を生で聴いたのは初めてでしたが、コンサートで映える華のある曲で、なかなかのショーマンとお見受けしたユンディの演奏は変化に富んで立派なものでした。

今夜のクライマックスはなんと言ってもリスト。若い男性が全身の力を込めてエネルギッシュに叩きつける様はものすごい迫力。この手の曲を聴くと、私はどうしてもキーシンを思い出してしまい、ああキーシンで聴きたいわあと思ってしまいましたが、そりゃ精密機械のキーシンに比べればユンディは左手は弱いし何度もまちがえたしムラもありましたが、なかなかカラフルで惹きつける演奏でした。何年か後、もう少し大人になったユンディでこの曲を是非聴いてみたいです。

普通はリストのこんなのはコンサートの最後か少なくとも休憩直前にやると思うのですが、彼はこれを終わって興奮冷めやらずですぐショパンを初めたので、まだ弾くほうも聴くほうもムードはリスト。しょっぱなはショパンらしからぬショパンになってしまいました。ショパンで有名になった人のショパンがリストみたいだったというのは皮肉ですが、しばらくするとちゃんとショパンになったのはさすがです。


アンコールは中国の曲を弾いてくれて、聴き終わったときは誰もが微笑んで「ほーっ、ウフフッ」と暖かい気持ちになりました。この中国リズムはキーシンには出せないでしょう。CDサイン会があるのでアンコールは一曲だけで、早々に終わりましたが、演奏もキャラクターも魅力的な青年でした。多分これがロンドンでの初めての大きなリサイタルでしょうが、ユンディ君、また来てね~!絶対行くから。


メガネ 東洋人がわんさか お茶

日本でも人気があるらしい彼ですから日本人もたくさんいましたが、中国人の多かったこと。それも普段はクラシックコンサートになど来ないような若い女性が結構いました。ヨーヨーマのときも中国人いますが、年齢層がちがいます。


しかし、お隣のもっと大きなRoyal Festival Hall(RFH)が修復中のため、こんな小さなQueen Elizabeth Hallになってしまったのは残念でした。あれだけの日本人と中国人の熱心な応援があれば3千人以上収容のRFHでも満員にできたかもしれないのに。


修復で閉まるRFHでの最後のコンサート でブレンデルのピアノを聴いてからもうすぐ一年。ちゃんと工事してたから、予定通りに再オープンしてくれるでしょうか? 待ち遠しいです。