キラキラ  キラキラ    proms 3  キラキラキラキラ  キラキラ


8月28日のバンクホリディの午後、私の嫌いなBBC Proms に行ってきました。

「プロムスは一流の演奏家を低料金で見られる素晴らしいイベントである」、と世間では言われていて、それは本当です。

但し、「安いのはアリーナという舞台前のスペースに立てば」、ということであり、そのためには以下の条件を満たすことができる人のみの特権なのです。


① 主婦(主夫でも)、失業者、自由業等で夕方早くから自由になれる (並んで待たなきゃならない)

② 背が高い (前に大柄の人が立つと何も見えなくなる)

③ 膀胱が大きい (良い席を確保するためにはトイレも行けない)
④ 長時間立っていられる体力がある


私は④は何とかなりそうだけど、それ以外は大きく外れているので、どう考えてもプロムス向きではありません。おまけにサウス・ケンジントンにあるロイヤル・アルバート・ホールは地下鉄駅から距離あるし、シティからも遠いので不便なのですわ。それにちょっと前まで冷房もなくて、暑い日は大変だったんです。


3年前まではちゃんと席に座る切符を買って何回が行ってましたが、ホールは大き過ぎてクラシック音楽には不向き(音は散るし、歌手はマイクが必要)だし、舞台から遠くても切符代は高い等々不満ばかりなので、去年一昨年は一度も行かず終い。


でも一度正統的なプロムスの楽しみ方であるアリーナ立見席を経験したいと思っていたところ、ちょうど良いきっかけが出来ました。


日本で折角手に入れた夏着物をどうしても8月中に着たいからどっかに行かなくちゃ!


と思って、プロムスの出し物を見てみたら、バンクホリディの午後に珍しくあるではないですか。そしてこれが大事なのですが、そのコンサートは演奏者も演目も人気なさそうなのがお誂え向け。そんな早くから並ばなくてもいいし、アリーナもきっとガラガラにちがいない、という理想的なシチュエーション。

幸い、プロムスってものに一度行ってみたいわあという知人が二人いたので、急遽誘って出掛けました。着物は私だけですが。


28 Aug 3  着物のお出掛け、どこでもよかったけど、とりあえずここに



地下鉄だと駅から徒歩10分なのですが、バスだと便利でアルバートホールの目の前のバス停に2時前に到着。

3時半開始なので1時間半あるのですが、当日アリーナ券の行列にはすでに約60名が並んでいました。この数日後のベルリン・フィルだったら5百人の定員はとっくに満員なのでしょうが、今日は予想通り余裕あり。間もなく係が整理券を配りに来て、一人一枚だけもらいます。「家族の分もちょうだい」と言ったおばさんは「駄目だよ~ん」と言われて、慌てて家族に「すぐ来なあかん!」とケータイ電話してました。


その後すぐ切符売り係が来て、5ポンドの切符を売ってくれました。最初から切符売ってくれればいっぺんで済むのね~。でもきっと混んでるときは整理券配布と切符販売の間に時間があるのでしょう。切符を入手してもあと開始まで1時間あるので、すぐ隣のケンジントン・ガーデンをしばrく散歩してギリギリに入ればいいのだと思ったら、もうすぐ入場するのでそこにいなくちゃ駄目なんだと。


えーっ、アリーナで一時間も待つの嫌だなあ。それだけで疲れちゃうじゃん。


行列の最初にほうに並んでいる熱心なプロマーは張り切って舞台近い場所を取りに走ってスタンバるのでしょうが、どんなものか見学に来ただけの私たちは、始まるまでカフェで座ってダベリング。なんと15分も開始が遅れて(テレビで生放送しないから気がゆるんでるのか?)、ギリギリになってアリーナへ行ったらスペースはスカスカで、後の方の人たちは床に腰下ろしてました。大の字になって寝っ転がる人も(この人演奏中もずっとその格好で動かなかったから死んでたのかも)。


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今日は大した列じゃないけど、人気コンサートの時はズラーっとすごいにちがいない



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            ビクトリア時代にできた武道館みたいな造りの建物で、テニスやったりもします


アリーナは、回りの席から見下ろしてたのより一回り小さい感じ。舞台と大して高さが変わらないので、前に人が立ってなくても舞台はあんまり見えなくて、指揮者の上半身だけ。やっぱりなあ。どうせ大して見えないんだからと、そのまま床に座っている人もたくさんいました。

私たちは休憩時間にまたカフェで座れるように、出入口に一番近いところに遠慮がちに立ってました。


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         「始まるまでは腰下ろとろみゃー。疲れるで。」 でも私は着物だで座れんがね!


アリーナだけではなく、あちこちの椅子席も入りは6割くらいでしょうか、ちょっと淋しい雰囲気の中でコンサートが始まりました。

着物が着たいというだけという不純な動機だったし、帰りの混雑を考えて最後の曲はパスするというあるまじき行為もしてしまったので、テーマ別「クラシック・コンサート」に入れるのは気が引けるのではありますが、ま、一応ってことで、うんと手短に感想書いておきます。



音譜 まず、人気のないProm 58 の演目と演奏者こちらです ↓


  BBC Concert Orchestra (BBC Symphony Orchestraのジュニア版?)

  指揮者 Charles Hazlewood (BBCの音楽番組によく登場する人お喋りではお馴染みの人で、ルックスもなかなかグー)



  Ibert : Divertissement

  Kurt Weill :Songs (有名な「マック・ザ・ナイフ」他) (ヴォーカル Pauline Malefane)

  George Gershwin  : Rhapsody in Blue  (ピアノソロ Kevin Cole )

  藤倉 大 : Crushing Twister

  Leonard Bernstein : Fancy Free


hazlewood Charles Hazlewoodはテレビでお喋りばかりしてるけど、本当に指揮者だったんだ・・



クラシックというよりは、まるでジャズ・コンサートで、お喋りが得意なHazlewoodはまあよく喋ること。オケを待たせてこんなに喋り捲る指揮者も初めてです。プログラム代をケチって買わなかった私は非常に助かりましたが。このコンサートは後日のテレビ放映のため録画されたので彼も一段と張り切ったのでしょう。2、3日後の放映を私は見逃してしまいましたが、私たちは映ってなかったようです。そのためには前の方に陣取らないとね。


クルト・ワイルの歌はまあミュージカルで、私は結構好きだけど、百貫デブの黒人女性歌手、見かけはそれらしく絵になってたけど、一本調子で下手くそ。Promsではクラシックの本格的歌手と比較されるんだから、ポッポスならもっとうんと上等の人を出せ!


ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」、今回はお馴染み版より随分前に作られた簡易版の演奏で、人数の少ないBBC Concert Orshestra向け。聞き飽きたので、この曲がラジオで流れるとスイッチ切ってしまうほどだったけど、あらためて聴くとこの曲はなかなか本格的なピアノ協奏曲なんですね。中年米白人ピアニストKevin Cole はガーシュウィンのスペシャリストらしく、クラシックのリズムとはまたちがうスイングで上手にこなしたけど、身のこなしと顔の表情までまるでラスベガスのショーマンだ。クラシックコンサートでピアノに向かってあんな身振りと漫画のような大袈裟な笑みを浮かべる人はいないでしょう。( ユンディ・リン はちょっとその気があったけど)。


さて、Promsでは毎年何人かの作曲家にコミッションをして新曲を世界プレミアするのですが、今年はその中にイギリス在住の藤倉 大 さんもいました。このCrushing Twisterという曲は、DJがレコードのターンテーブルを手で回すのをヒントにしたそうで、オーケストラを分けて二つのターンテーブルを表現するので、ずれてるように聞こえるかもしれないけど、演奏がまずいのではなくそういう作品なんだから誤解しないでねという説明がありました。そんなこと言われたら、ウヘーッ、どんな難解な曲なんだろ、とぞっとしますよね。特に藤倉さんの曲は、6月のCity of London Festivalの小川典子リサイタル で、頭の痛くなるような前衛的なのを聴いたばかり。

でも、そんなに前衛的ても不快でもありませんでした。ふたつのターンテーブルには聞こえなかったけど、7分間という短さの中にたくさん中身がギュっと詰まった感じで、もう一度聞きたいかと言われたら「はい、是非聞きたいです!」とは言わないけど、「まっぴらごめんだよ~」でもありません。・・・しかし、こんな曲の譜面ってどうなってるんだろ?

お喋り男のHazlewoodの生指揮を初めて見聞きしましたが、こんなの振れるなんて凄い、と感心しちゃいました。


チューリップオレンジ最後までいるとバスに乗れなくなるので、バーンスタインは飽きらめて、ここでトンズラすることにしました。入るまでに立ってて結構疲れちゃったしね。

切符買うのに 並ぶの嫌なら、シーズンチケット買うしかないですね。シーズン通しで160ポンド、半分の期間で90ポンド。いつか、退職したらこれ買って毎日床に座りたいものです。



ベルLast Night of the Proms  (今年は9月9日)

最後のプロムスはお祭り騒ぎ。ユニオンジャックが溢れ、普段は慎み深いイギリス人の中クラスがエルガーの「威風堂々」なんか聞きながら、「英国がベストなんじゃ~!」とちょっと照れながら愛国心を表わしてガス抜きをします。プロムスは毎晩こうだと思ってる方もいらっしゃるようですが、あんなことはたまにやるので盛り上がるわけです。切符入手は難しいので、テレビで観ます。

毎年、有名オペラ歌集が出演しますが、今年はあのロシアの銀髪男ディミトリ・ホロストフキー。私には3月のROHのオネーギン 以来です。

proms 4 またアンタなの? せめて何かあっと驚くような衣装で出てね!