(遅くなりましたが、2週間前に行ったリサイタルの記事です)  (クリックで写真は拡大します)



12月9日、バービカンのJoan Diego Florezのリサイタルに行きました。


今をときめく花形テノール、今年のGreat Performersシリーズの中でもハイライトの一つで、ラッキーにも前から3列目の真ん中の席が取れたのでずっと楽しみにして、張り切って当日は着物 で出掛けました。


私はこれまで彼のリサイタルに4、5回、オペラでも何度も聴いているので、彼の素晴らしさはわかっているつもり。期待は高まります。



3月に切符買ってから、ずっと待ってたのよーん!



しかし、


一曲目のモーツァルトが始まって、


「・・・ウーン。今日は声に張りがないし、彼の特徴である高い声の輪郭がはっきりしないなあ」、と私は思ったことろ、


曲が終わり、彼が言いました。


「皆さん、お聞きになった方もいらっしゃるでしょうが、僕、風邪引いてしまって最近カーネギーホールのリサイタルをキャンセルしました。かなりよくなったけとは言え、まだ完全に治ってはいません。

でも、ロンドンの皆さんを失望させたくなかったので、ちょっと無理して今日はここに来ました」 (ペルー人だけど、米国で勉強したので、英語は流暢)


「おぉ、そうかそうか!カーネギーホールは潰したけど、ロンドンには出てくれたんだ、愛い奴め」、という意味の拍手がしばし起こりました。



やっぱり具合悪いのね・・・・


それから彼はコップの水をしゅっちゅう飲み、ちょっと咳もして、途中で奥に引っ込んでいつもより長く休み、曲目をいくつか変更し、それでも声がかすれ掛けたり、5メートルしか離れていない私には明らかに具合悪そうで、目もトロ~ン・・・



体調が万全でなくてベストの歌唱を聴かせるころができないのに敢て歌うことについては全面的に肯定できかねるのですが、この日会社のクリスマスパーティを諦めてまでこちらを選んだ私には、

無理してでも出てくれて、ありがとう!」、という気持ち。(別に会社のパーティがすごく素晴らしてすごく行きたいわけではないですが)。


耳後で知ったのですが、カーネギーホールはなんと開演45分前にキャンセルされたんだそうです。最後まで迷っていた彼の気持ちを考えると胸が痛みますが、いくらなんでもそれはひどいですよね~


もちろん調子悪いと言っても、並みのテノールよりはずっと素晴らしくて、彼を初めて聴く人は、「病気でこれだけ歌えるんだから、絶好調だったらどれほど素晴らしいことであろうか」と思ったにちがいないです。


そうです、ちょっと鼻に掛かった甘いけどスコーンと思い切り突き抜ける彼の声は絶品なんです。(と言ってもアルバレスやアラーニャほどドキドキにはなりませんが)。


今日の曲目は、モーツァルト、ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティ、ペルーの唄等だったのですが、ハラハラしましたよ~。高音に差し掛かると、思わず自分の手をぎゅっと何度も握り締めてしまったわ。



      

長年コンビの伴奏者Vincenzo Scalera、ピアノは下手くそだけど楽しそうに弾く人です


なんとかプログラムの歌はこなしましたが、


これではアンコールは無しかも ガーン

例えやってくれても、「いつものあれ」は無理だろうなあ カゼ

リサイタルの最後には必ず歌うドニゼッティのオペララ「連隊の娘」の中の超高音アリア、健康なときだって勇気が要りそうだもの


と諦めていましたが、

さすがサービス精神に富んだプロ、アンコールはやってくれました。


まずはドニゼッティの「愛の妙薬」の「人知れぬ涙」。

うん、これは難しくなくて誰が歌ってもぐっとくる甘く美しい名アリアで、多少頭痛がしてても歌えそう。


   (でも、そんなに無理しなくてもいいのよ、私は早く終わったら会社のパーティに行くんだから)


と帰り掛けたら、2曲目はヴェルディのリゴレットから「女心の唄」。

誰でも知ってる華やかなこれが出てきたらもう終わりかな~?



しかし、「例のあれ」を普通なら当然期待する人は多いわけで、誰かが「連隊の娘」を歌ってくれよ~! と叫ぶと、そうだそうだというどよめき。


「それは来月ロイヤルオペラハウスで聴けますから」とフロレス。

「そんなこと知ってるけどさ~」とまた誰かが言い、困って迷ったフロレスが「じゃあちょっとだけ」と言って、ピアノでちょこっと弾いて、「はい、これだけ」。


なんだよお、期待させて残酷じゃねえかよ、と私も思ったのですが、その後すぐに「途中からだけ歌います!」と言って、いきなりサビの一番良いところから歌い出したんです。


んもう、もったいぶって~! 

やってくれるんなら最初から楽しみにしていればよかったわ パンチ!


それを歌っている間、言うまでもなく私のハラハラ度はうんと高まり、いつもよりはやっぱり鋭さに欠けましたが(ちょっとだけ)、それでも凄くて、やんやの喝采。グッド!


体調悪いのに頑張ってくれたという感謝の気持ちも加わって、熱気のある感動コンサートになりました。ありがとう!あせる


(それでも早く終わったので、会社のパーティにも顔を出せたしね)



            

       ロンドンのファンの皆さんのためにもうどうなってもいいと思って頑張りました

どうなってもいいなんて言わないで

あとは、

1月のロイヤルオペラハウスは元気でやってね~

ナタリー・デッセーとの共演、すごく楽しみにしてるんだからさ~

どっちかが休んだときの予備として(充分あり得る。特に彼女が)、切符3回分買ってあるもんね~

もちろん3回とも歌ってくれたら嬉しいよ~


と彼に手紙でも送りたいくらいの私です。


   

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