6月9日、バービカンにアメリカ人ソプラノ、Deborah Voightのリサイタルを聴きに行きました。

2006/2007年のGreat Perfotmersシリーズのひとつで、切符を買ったのはなんと去年の1月。最前列のど真ん中という私好みの気合の入った席で、彼女からの距離は約3メートル。21ポンドのところを枚数割引で17.85ポンド。こんなお値段で超一流アーチストをまじかに見られるのがバービカンの良いところ。


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Mozart Die ihr des unermesslichen Weltalls Schöpfer ehrt
Verdi Non t’accostare all’urna; Deh pietoso; Brindisi; In solitaria stanza; Stornello
R. Strauss Schlechtes Wetter; Ach, Lieb, ich muss nun scheiden;
Lied der Frauen
Respighi Contrasto; Nebbie; Notte; Povero Cor
Beach Three Songs by Robert Browning: The year’s at the spring; Ah, Love, but a day!; I send my heart up to thee
Bernstein When my soul touches yours; So pretty; Another love; Piccola
Serenata; Greeting; It’s gotta be bad to be good; Somewhere


Deborah Voigt soprano
Brian Zeger piano



最近のネトレプコゲオルギュー のオーケストラとの共演でオペラのアリアを歌うのとは趣の全くちがう歌曲ばかりのリサイタルで、お馴染みの曲はほとんどありませんでしたが、一曲づつそれぞれのドラマがあり、それを彼女は情緒たっぷりにしかも細部にまで気を配って歌い語り、華やかというよりは知性を感じる立派なコンサートでした。


ゲオルギューらなどと比べてそんなに知名度が劣るわけではないのに空席が目立ったのは、地味な演目も理由のひとつかもしれないのですが、そうだとしたら惜しいことです。彼女がお得意な毅然としたリヒャルト・シュトラウスから軽妙なバーンスタインまで、とても変化に富んでプログラムだったのですから。


46歳、ドラマチック・ソプラノとして今が円熟機のデボラの声の凛とした素晴らしさにずっと聞き惚れっぱなしでした。濁りのない美声は高音から低音まで軽々とムラなく響き、メリハリのある気品ある声は余裕たっぷり。


最近はヴェルディなども歌っているようですが、張りがあってしゃきっと明るい彼女の声質にはロマンチックなイタリアものよりもやはりドイツもののシャープで力強く威厳のある歌の雰囲気の方が似合うと私は思いました。


そういう本格的クラシック歌唱は前にも聴いたことがあるし、まさにデボラの真髄なのですが、今回初めて接してその上手さに舌を巻いたのは、コミカルで軽いアメリカンソング。ミュージカル風、ジャズ風の歌い方が実に見事で、マイクなしであんな風に歌えてしまえるなんて凄い。私はオペラ歌手がポピュラーソングを歌うのは全然好きではないのですが、彼女の歌うミュージカルナンバーやジャズなら是非聴いてみたいです。


歌の合間に少しお喋りもしてくれて、気さくなアネゴという話し方も実にチャーミング。話題としては、もちろん皆の関心は彼女の体重に決まってういるわけですが、それについては


「ロンドンは久し振りだわ。あの出来事(that little incident)があってから初めてだからさ、実はとてもナーバスだったのよ。でもこんなに暖かく迎えてくれてありがとう」


と言って、「ほら、すっごく細くなったでしょ?」という身振りで笑いを誘いました。


写真でおわかりのように、今でもお世辞にもほっそりとは言えない体型ですが、前の百巻デブ時代とはまるで別人で、首回りはすっきりしたし、腰にもくびれができました。なにかで40キロ減量したと読んだのが本当だとすれば、私の推定は110キロ→70キロ。肥満が多いオペラ界ではこれは普通の部類に入るでしょう。よかったね~。


デブが理由でROHに出入り禁止にされて怒ったのがしばらくロンドンに来なかった原因でしょうか(そりゃ当然ですよね)、でもそれも解禁のようで、来シーズンは「ナクソス島のアリアドネ」に出てくれるし、今年のプロムスではちょっとだけサロメも歌ってくれます(コンサート形式なのでストリップは無しでしょうが)。



  
「ま、背中の肉のだぶつきは大目に見てよね。ほら、二重アゴはすっきりしたでしょ?」


アンコールは重いのと軽いのと3曲やってくれて、「私はピアノが好き」というコミカルな歌では伴奏者とピアノの連弾もサービスしてくれました。




たくさん歌ってくれたのですが、終わったらまだ9時20分で、ほら、まだこの通りの薄明るさ。

素晴らしいコンサートの余韻で足取りも軽く、爽やかな北国の夏の夕べでした。


日中22、3度と気持ちの良い日だったので、着物で行きましたが、そのときのことは別の日の分と一緒にアップしますね。今月は機会が多いんですよ。


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