実は、去年の秋から、ロンドンでお琴を弾いてるんです、私。
さる三曲合奏グループに入れてもらって、毎週お稽古に通ってます。レッスン料払って教えてもらうわけではなく、合奏するだけですが、私は日本で小さい時から習っていたので、才能はないし長年やった割には下手ですが(師範の免状も一応持ってるんですけどね)、長年のギャップがあっても体が覚えているもんですね。かなり昔のレベルに戻りつつあります。
(注① 三曲(さんきょく)=琴と三味線と尺八 注② 師範免許はお金で買うもので、ちょっと弾ければ誰でももらえます)
人の演奏をああだこうだ言うだけでなく自分でも何かやりたいなと思ったとき、新しいことをやるのも楽しいだろうけど、どうせやるならいつか人前でご披露できるものをと考えたら、私にはお琴しかありませんでした。最近の着物趣味も、ただオペラハウスに着ていくだけでは物足りなくなっていたところ、これなら着物が必然的だ、というのも大きな理由でしょうか?
日本でずっと習ってたとは言っても、自分の意志で始めたわけではなく、西洋音楽の方が好きなのになあとブツブツ言いながら熱意もなく、家で練習などせずただ毎週先生のところに行っていただけという超消極的お稽古事だったのですが、外国にいるのであれば話は別だ。
大袈裟に言えば日本文化紹介のお役に立てるかもしれないし、なにより日本の筝曲教室の師弟関係の煩わしさから開放されて今度こそ音楽として楽しめるかもしれない。
ということはこちらに来てすぐ感じたので、実は 20年以上前にちょっとやってたんです。何度か人前で弾いたこともあります。でも子供が産まれてそれどころではなくなり、それっきりになっていたのですが、余裕もできたし、仲間がいればまたちょっとやってみようかという気になってた時にこのグループに巡り合ったのでした。
さて、お琴のことをブログに書くのは人前で演奏する機会があったときにでも、と思っていたところ、この前の日曜日にあったんですよ。
ちゃんとしたコンサートではなくて、年に一度たくさんのプライベート・ガーデンを一般公開するオープン・ガーデン・デイの一環としてある日本庭園で風景の一部として弾いてて下さいってことで、お客さんは主にお庭を見に来た人でした。
この和風石庭はなんとビルの屋上にひっそりあるので、観客は少なかったし、こちらも初心者も一緒に自分たちが楽しもうという趣旨だったので、演奏自体は簡単な曲ばかり気楽に適当に・・・。
日本庭園なのですが、一日中どこかの国の民族音楽グループが演奏していて、私たちの出番は1時間。私が弾いたのは「六段の調べ」「千鳥の曲」「八千代獅子」というそんなに難しくない定番ものばかり。
それよりも、日本庭園が主役のイベントだし、雰囲気を盛り上げるためにはやっぱり着物だよね~、女性6人全員着物姿になりましょう、と。でも、リーダー以外は誰も着物を持っていないので、それなら私がなんとかしましょう、と引き受けて、当日は5人分の着物と帯を持って出掛けました。
小さなスーツケース一つに収まったので自分でゴロゴロ持っていけたのですが、ヒマなトーチャンが会場まで運んでくれました。
日本じゃないからチグハグでもいいことにして、浴衣と夏の薄物と袷のチャンポンで用意。しかし、一時間で5人分の着付けができるのかしらと前の日から心配で心配で・・・
結局、旅館の浴衣程度に半幅帯で超簡単にしたので、すぐできました。ホっ・・
若い学生さん達で、左の二人は尺八を吹くガイジンさんです。
どの着物も見覚えあるものばかりでしょう?
しまった、帯の蝶々がさかさまだ リーダーの方は素敵な椿の付け下げで、帯も椿
しびれ切れたよ~
あっ、音譜が風で飛んじゃった~、でも足ピリピリで動けないわ~
などとバタバタしたものの、演奏面ではこの日は全くのお気軽ムードでただのお楽しみ。
だけど、だけど、実は来週末に私にとってはすごく緊張する演奏イベントがあるのです。
ロンドンではなくて地方遠征なので、「皆様お誘い合わせの上お越しください」と言えないのが残念というより「よかった知ってる人は誰も来られなくて」という気持ち。
グループのもっと上手な人の代役で私が出ることになったのですが、引き受けた後にひとつ追加されて、それが結構難しい曲なんですよ。だから、この2、3週間、私は珍しく練習してるんですが、この年になるとなかなか上達できません・・・
なんとか大恥じかかない程度に弾けるといいのですが・・・
ま、日本で私には絶対に起こり得ないことなので、良い機会と感謝して頑張るつもりなのではありますが、どうなることやら・・・