ROHには珍しいスター3人の共演(ゲオルギュー、アルバレス、ターフェル)で去年大騒ぎして3度も行ったトスカですが、今回はあっさり一度で済ませます。


で、早速7月3日の初日に行ってきました。この日はイギリス中あちこちで野外大型スクリーンで生中継するので皆張り切るでしょうしね(もっともこの日は雨模様だったので盛り上がる筈がなく、一同がっかりしたでしょうが)

登場人物やプロダクションについては去年書いたので(キャラ分析パフォーマンス )、今回はパフォーマンスについてのみさらっと書いときます。

11ポンドのupperslipからのチープな眺め。ピンぼけなのはカメラがチープというより私の腕の問題か?


   Composer Giacomo Puccini
   Director Jonathan Kent
   Designs Paul Brown

   Conductor Mikko Franck
   Floria Tosca Violeta Urmana
   Mario Cavaradossi Salvatore Licitra
   Baron Scarpia Mark Delavan


去年この役で生舞台デビューしたゲオルギューはトスカには声が細すぎると批判されましたが、私はいつもの猛女とは一味ちがう可憐で弱々しいトスカは新鮮味があって好きでした。今回のリトアニア人ヴィオレッタ・ウルマーナのトスカは中低音に迫力ある従来型なので、ウルマーナの方がゲオルギューより良いと思う人もいるでしょう。


私はウルマーナは何度も聴いているので何を期待すべきかわかってました。だけど、しょっぱなの「マリオ、マリオ、マリオ~」は豚がキーキー言うような不快な声だったので、大事な初日に不調だなんて可哀相に、とがっかり。

元メゾ・ソプラノの彼女は高い声に魅力がないのが欠点だと思うのですが、いつもはこんなにひどくはないですよ(私はメゾ時代の彼女の方がずっと好きでしたけど)。

ソプラノに転向してからはなんかイマイチで、高い声が美しく軽々出る超一流のディヴァたちと勝負するには不足要素があるような。


でも段々よくなって、2幕目からはしっかり彼女らしさを発揮。予想通りのなかなか立派なトスカになりました。


しかし、ゲオルギューとの歌の優劣は好みの問題ですが、ルックスは当然ゲオルギューが絶対優勢なのは歴然。美人のアンジェラに勝てる人はざらにはいませんが、でも何もこんなに差がつくまで放っておかなくても、と思うくらいの肥満。私は常々オペラ歌手にルックスは求めないと言ってますが、国中で大画面にドアップで映し出されて「今までオペラに縁のなかった人をオペラに誘い入れる」というのが主旨のこんなイベントに彼女が出たひにゃアンタ・・(ここにアップした写真よりも実物はもっと太いです)


「美しい歌姫トスカって、ゲエ~ッ、これかよ~? ドーン・フレンチかと思ったぜ」とびっくりして、オペラも「美人役は美人が演じるもの」という(大間違いではあるけれど)夢を抱いているいる人を一気に失望混乱させてオペラハウスに来る人も来なくなっちゃうよ~。(ドーン・フレンチは「連隊の娘 」に出てたデブちゃんです)


それとも何でしょうか、一応形だけ敷居を低くして庶民にも楽しんでもらえるよう努力する振りをするけど、本当はこれ以上観客を増やしたくないってことでしょうか? 去年の大画面イベントの「トゥーランドット」なんて、私だって耳をふさぎたくなるくらい不快な声のお姫様だったし、案外それが本音かも(私はそれで結構。ライバル増やしたくないもんね)。

デボラ・ヴォイトを体重が理由でクビにしたROHだ、基準があるとしたら、ウルマーナはギリギリでしょう。ドレスもゲオルギューと同じデザインとは思えない。


ゲオルギューはデブ男二人に挟まれてますますほっそり見えたけど、ウルマーナは主役3人の中で一番のおデブさん。華やかな花形ソプラノになりたかったらダイエットした方が得よ~。


 ヴィッシ~ダルテ~~、ヴィッシーダモーレ~~
音譜 oink oink






さて、ウルマーナはかなり聞き飽きてるので、今回一番楽しみにしてたのはカラヴァドッシのサルバトーレ・リチートラでした。2004年に「運命の力」に出たときは(相手はウルマーナ)、有名な割にはどうってことないじゃんと思ったのですが、一度だけで切り捨ててはいけませんもんね。


で、どうだったかと言うと、始まってすぐのアリアはまだ声が温まってなかったのか、甘さがなく、「嗚呼、一年前の丸ちゃんは素晴らしかったのにぃ・・」と不満でしたが、彼もすぐに落ち着いてきて、「ヴィットリア~、ヴィットリア~!」は立派だったし、最後の「星は光りぬ」も聴かせてくれて、声量はあるし、知名度に値する実力があることはよくわかりました。

でも、彼の弱みは声自体に個性がないことではないのかなあ? そう言っちゃお終いだけど、でもやっぱり大スターの声は聞いただけですぐ誰だかわかって「あ、フロレスだ。鼻に掛かった声が甘くて素敵」とか「凛々しいお声の丸ちゃんだ!」とか「アラーニャ節は明るくていいわ」とか思うんだけど、リチートラは上手くても「誰?」ってことになりそう。



スカルピアのマーク・デラヴァンは、ターフェルのような漫画キャラにならず、本当にいそうな足が地に付いた悪役ぶりが好感を持てました。これは2年前のホセ・ク-ラの西部の娘 の敵役でもそうでした。

ちゃんとカーテンコールで「ブー!」って誉めてもらえたし、地味だけどなかなかの役者。今までのROHのスカルピアの中でも総合点で上位に来ます。


グッド!というわけで、初日、結局はなかなか立派なトスカになりました。


ワンピースなぜかトスカのよそいきドレスは白からグレーになって、キラキラ・ティアラもなくなった。相変わらず化繊ずれの音がガサガサしてたけど・・・



  
アンジェラの白いドレスの方がよかった・・・   マリア・カラスの前の舞台の方がよかった・・・


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