7月9日と13日の2回、ロイヤルオペラハウスにRigolettoを観にいきました。


2001年スタートのこのプロダクションは6回も観てもう飽きている上、今回はリゴレットも公爵も知らない歌手。ま、ジルダのパトリチア・チョーフィだけ聴きに一応行くか、と言う程度の期待でした。


が、なんと、これがとてもよかったんですよ~。チョキ



初日のカーテンコールは勢ぞろい (私の席は11ポンドのupperslip)


7月13日は主要キャストだけ  (私の席はまた11ポンドのupperslip。気合入ってないね)


クリップまず、リゴレットってどんな話なの?というところからご存知ない方はこちらをどうぞ。前の記事の繰り返しで、いつもの私的偏見解釈でよければ、ですが。


ヴィクトル・ユーゴーの原作で、せむし男のリゴレットは公爵家の道化役。自分が仕える好色の公爵に娘ジルダをてごめにされ、復讐に殺し屋を雇って公爵暗殺を諮りますが、公爵を愛するジルダはその陰謀を立ち聞きし、自ら身代りになって殺されるという悲劇。

娘のジルダはオペラ・ヒロインの不幸ランキングで上位入賞まちがいなし。幼い頃母親に死なれて修道院で育ち、3ケ月前に父親と一緒に住むようになったけど、このせむしのおとっつぁん、お前が一番大事だよとは言うけど、職業も隠してるし、自分の名前すら教えてくれない。その上監視付きで家から出してももらえない。

だから、唯一許される教会行きで素敵な青年に出会ったことはもちろんお父さんには内緒。その青年が彼女の家を探し当てて訪ねてくれて愛を告白してくれたときは幸せだったけど、すぐにリゴレットに恨みを持つ人たちに拉致されてしまう。

連れて行かれた先は公爵家で、僕は貧しい学生なんです、なんて嘘付いてたけど(ジルダが、そうだったらいいのにというのをもれ聞いたからだけど)、なんと彼が公爵。だから手篭めといっても、嫌だったばかりじゃなく、そのままそこで妾として暮らすこともできただろうに(こっちの方が絶対楽しいよね)、オヤジが怒って殺し屋まで雇っちゃうんだもの。そのままだと愛する人は殺されて、あとはこの親父と逃亡者として放浪するしかない・・・。そりゃ死にたくなるよね。

そう、すべてこのオヤジが悪い。リゴレットは道化師といっても他愛無いジョークで笑わせるのではなく、人の不幸をあざ笑って主人のご機嫌取りしてお気に入りの座を確保してるので、皆からやっかみと嫌悪感を持たれていて、リゴレットの家に女が住みだしたのを誰もが彼の妾だと思い込み、だから日ごろの恨みを晴らすためにその妾をさらって公爵に差し出そうと計画したわけで、誘拐はリゴレットの日ごろの行いから生じた災い。かわいそうなはジルダでござい。
一番許せないのは、皆の前で辱められて辛い思いをしてるジルダが「私、でもまだ彼を愛しているの。許してあげて、お父さん」と懇願してるのに聞き入れないこと。ほんとに自分勝手な偏屈親父だ!それにサラリーマンは誰だって嫌な思いをしてるけど、だからって雇い主を殺してちまって、老後の蓄えや再就職の目処はあるのか、お前は?

娘が身代りになって死んだとき、「呪いだ~!」と叫んだけど、そうじゃなくて、全部お前の責任だ!


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  Composer Giuseppe Verdi 

  Director David McVicar
  Set Designs Michael Vale
  Costume Designs Tanya McCallin


  Conductor Renato Palumbo
  Duke of Mantua(女たらしの公爵) Wookyung Kim
  Rigoletto(公爵家の太鼓持ち) Franz Grundheber
  Gilda (リゴレットの娘) Patrizia Ciofi
  Sparafuccile (殺し屋) Raymond Aceto
  Maddalena (殺し屋の妹で酒場のネーチャン)Jana Sýkorová


ラブラブベル期待してなかった嬉しい驚きはテノールのWookyung Kimの正統派美声。

若々しくてフレッシュで軽くて明るくて流れるようなリズム感も良くて、もううっとり聞惚れちゃいましたよ。

まだ30歳の韓国人で、私は聞いたことがない名前ですが、NYメトでラ・ボエームの主役もしたことがあるそうだし、すでに世界の桧舞台に立ってる人なんですね。


但し、どの批評にもあったように芝居はどうしようもなく下手クソ。この容貌でハンサムな西洋人役はどうやっても違和感あるのは仕方ないでしょうが、そういうレベルではなく、もう小学生の学芸会程度。


だけど、そんなことは大してどうでもいいんです。私は常々オペラには観る側に想像力が必要と言っているのですが、こんなときこそ日頃の訓練の成果を生かすべしでしょう。でもここまで外れていると簡単ではないので、2回目は彼のことはなるべく見ないようにしてましたわwww。


   
顔のこと言っちゃお終いだけど、この声でハンサムなら(そして、できれば西洋人で)一躍トップスターになれるのに~。 

実に惜しい! (これではモンゴル出身のお相撲さんだもんねダウン




今回の3人で知名度ナンバ-ワンのチョーフィは、生では初めて聴いたのですが、こちらは期待通りの素晴らしさ。

ほんとうはジルダ役はもう少し細い声が好みなのですが、チョーフィのまろやかに優しくて低音から高音まで同じトーンで平均的に美しい声は素晴らしかったです。


アラーニャと共演した「ルチア」のDVDでわかるように、彼女は演技がとても上手。小柄でほっそりして整った顔立ちの彼女は、ルチアほど演技力を見せ付ける役ではないものの、細やかな表現で可憐なジルダの悲しみを立派に演じて、役者としても一流です。ラブシーンの相手役がKim君では勿体無かったこと。


サーチと、ここまで書いてから調べたら、なんと2002年のジルダは彼女だったことが判明。記憶にないんだけど、でも当時はまだ有名ではなかったでしょうから、それだけ上手になったってことなのでしょう。

でも、忘れててよかった~。覚えてたら今回のリゴレットはパスしたかもしれないですからね。


リゴレットのFranz Grundheberは4年前にROHのシモン・ボッカネグラでタイトル・ロールだったベテランのドイツ人バリトン。その時のボッカネグラを何も覚えてない理由ははっきり覚えてます。日本から帰ってきた翌日だったので時差ぼけで眠り込んでしまったからですが、ゲオルギューとニール・シコフが出てて、そのために帰って来たのに口惜しい思い出です。


ま、そんなことはいいのですが、彼のリゴレットは、一回目は声量もナンだったし、スケールの小ささが目立ってしまったけれど(2回目はずっとよかった)、メリハリの利いて輪郭のはっきりした高めの声は私好み。


でも演技面では不満あり。このプロダクション、今までのリゴレットは皆杖を2本使ってリゴレットは大袈裟に始終前かがみなのに、このGrundheberは片方が松葉杖で、それは別に構わないけど、すっくとまっすぐ立って姿勢が良すぎるし、歩き方も普通でつまらない。これじゃあ回りの宮廷人との差も付かないし、せむし男の悲哀が出せませんよ。風貌がなんか刑事コロンボみたいだったしね。

前屈みで歌うのは技術的に困難だから、代りに変化に富んだ歌い方で演じましたってことかもしれないけど、盛りが過ぎたのは明らかな初老リゴレットでした。若い人が無理矢理この老け役をやるのに比べたら、枯れたところが自然でこの役には向いてますけどね。



            

さて、あなたならKim君の顔を誰に挿げ替えます?    コロンボ刑事、ジルダ殺人犯は誰でしょうね?


家舞台と衣装とヌードワンピース

McVicarらしいセットと衣装とエロ好みのプロダクションです。

グレーのぼろいトタン小屋を回転舞台で回して、これ一つで公爵邸、リゴレットの家、殺し屋酒場にしてしまいます。その代り衣装は洗練されてて品の良い洒落た色調です。




公爵邸での乱交パーティ場面はかなり卑猥で、おっぱい丸出しの女性もたくさん登場。全裸の若い男女カップルも出るのですが(今回のすらっとした綺麗な青年は今まででベスト。イヒヒ)、その程度は他のオペラでも出てくるのですが、問題は今回のこのポスター。演目プログラムにこれがでかでかと載っているのはショッキングです。


このポスターがこともあろうに地下鉄のプラットフォームに現れたときはドキっとしたのですが(巨大サイズだし。いえ、ポスターがね)、よく見たら隣に立ってる人の衣装で被っているように修正されてました。ホっ!




メモ私が読んだ批評は軒並み★★★☆☆の平均点というところですが(チョーフィは素晴らしい、Kim君は声はいいけど演技が駄目、リゴレットはパワー不足)、初日のパフォーマンスだとまあ妥当な評価かなという気はします。

でも、2回目は皆さんぐっと調子を上げて(Kim君の演技以外は)、なかなか素晴らしかったんですよ。チャンスがあればもう一度行きたいと思うくらい。今までのリゴレットの中ではチームとしてはベストの一つ。


オマケとして、今までの比較を簡潔に明日まとめてみる予定です。公爵1位は愛する丸ちゃんに決まりだけど、他は誰でしょうね?


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