ヴェルディの人気オペラ「リゴレット」の今までのROHでの歌手比べ、女たらしの公爵 編は私の大のご贔屓丸ちゃんだけでなく、アンパンマンのキムチ君という素晴らしいテノールの登場で私自身が盛り上がりましたが、さて他の二人は? 

                Rigoletto Gilda Duke

2001年9月 Paolo Gavanelli  Christine Schafer Marcelo Alvarez

2002年9月&10月 Carlos Alvarez  Patrizia Ciofi    Ramon Vargas

2005年6月     Paolo Gavanelli  Anna Netrebko   Piotr Beczala

2005年7月     Dimitri Hvorostovsky Ekaterina Siurina Rolando Villazon

2007年7月     Franz Grundheber  Patrizia Ciofi   Wookyung Kim



女の子まず、リゴレットの可哀相なジルダは、シェーファー、チョーフィ、ネトレプコと有名ソプラノが居並ぶ中



1下膨れオカメ顔の若いロシア人シウリーナが断然トップ。

ピュアな細い声で高音が全てばっちり決まり、可憐で従順な娘を上手に演じて、もうジルダそのもの。2回聴きましたが、2回とも一瞬もゆるがず安定して聞き惚れ、いまだに耳に残る美声です。


でも、「皇帝ティート」をテレビで観た時は特に印象的でもなかったし、その後有名になってるわけでもないので、この中では一番知名度が低い彼女は総合的には劣るのでしょうが、あの時のジルダは本当に素晴らしかった。



シウリーナが私のイメージ通りのジルダだったのですが(声がです)、他の3人がは歌の上手下手は別として、ちょっとちがうなあ、という印象でした。イメージで優劣を付けるのは難しいのですが、強いて順位を付けると、


22位は今回のチョーフィかな?2002年の彼女はほとんど覚えてないけど。シウリーナよりもまろやかな声で、これはこれで聞惚れたました。相手役のキムチ君の素晴らしさのお陰でデュエットも素敵だったし。

                    「ねえ、僕と一緒に韓国に来てくれる?」

     「・・・正直言ってちょっとキムチ悪いけどなあ、私・・・」



3ドイツ人のシェーファーは、だいぶ前にバービカンで聴いた「ナクソス島のアリアドネ」のツェルビネッタ役での超技巧テクニックの素晴らしさが忘れられません。


彼女の強味であるテクニックよりも声自体の美しさが大切であるジルダでは彼女の良さを発揮する場面がないですからね、勿体無いことです。


シェーファーはその舌を巻くほどの声転がしを見せ付けるような役をやらなくちゃ。

「コロコロコロ~~って声を転がせばいいのね」



4えっ?今をときめくネトレプコが最下位なの?と驚くでしょうけど、私が聴いたジルダはなんか不貞腐れてましたよ。

「ああ、もう嫌!親父も浮気者公爵も、うんざりよ。」とプッツンして煙草に火を付けそうなジルダでしたもん。

大スターになって重い役や難しい役を演じるようになった今はもうジルダなんか歌わないでしょうけど、きっとあの時は私は合う合わないではなく私はなんでも歌えるのよ、ということを証明したかった時期だったんでしょうね。どう上手く歌ってもあの暗い声はジルダじゃない。

役選びをまちがうと折角の素質も台無し、という例でした。


         「馬鹿にしないでよ~、プレイバックプレイバック♪」



パンチ!さて、公爵もジルダには有名な歌手を揃えて、文句はないのですが、これがリゴレット役となると大違いで、私は大いに不満です。


私は生でレオ・ヌッチを聴きたくてずっと待ってるのに彼は日本にはよく行くくせにロンドンには全然来てくれないんですよ。ヌッチはもう盛りが過ぎただろうし諦めたけど、このぱっとしない顔ぶれでROHを判断されたら恥ずかしいですよ。(ドン・ジョバンニのように裸にならなきゃいけないとかじゃないのに何故でしょうね?)


ガーンドングリの背比べで順位を付けるのも空しいけど、一応やってみましょう



1せむしなのに妙にまっすぐ立ったりして芝居はペケだし明らかに全盛期を過ぎて時々パワー不足が気になるGrundhebeですが、この中ではレオ・ヌッチに一番声が似てるというだけの理由で1位になってしまいます。


私はこういう輪郭のはっきりしたバリトンが好きだし、彼もメリハリがあったのは丸。全ての面でスケールちっちゃくてカリスマ性はゼロだけど。


「ドングリ組で一番は、ちっちゃいちっちゃいGrundhebe君」




2カルロス・アルバレスは、あんまり覚えてないけど、すらっと若くて姿も声もすっきりダンディ過ぎてリゴレットはどうしても見えないと記憶はある。


まだ主役テノールの恋敵役が向いてる人が先を急いでリゴレットをやりたがるのかは理解できるけど、ROHとあろう程のオペラハウスはもうちょっと厳選して欲しいわあ。


「カルロスちゃんはカッコ良すぎる!15年早いんだよ。こんなとこで他の爺さん達と一緒にドングリ組になんか入ってないで、もっと等身大の役をやんなさい」


3その点では巨顔ガヴァネッリおじさんは年齢もナチュラルな醜さもぴったりなんだけど(おまけに立ち居振る舞いも上手)、残念乍ら彼は声が不向き。まろやかな、と云えば聞こえはいいけど、輪郭のないぼやけた声では、復讐に燃える初老男の執念は出せません。


おまけに役に拘わらず、私はこの手の声が嫌いなのです。だから「椿姫」のお父さん役も駄目だった。あれも駄目、これも駄目、全部駄目。もう出なくてもいいから。


 さようなら~あし



さて、そうなると残るのはロシアの銀髪男ホロストフスキー。じゃあ彼が最下位なのかと言うと、ある意味そうなんだけど、努力賞は差し上げたいので、彼は番外にします。


クラッカー<番外及び努力賞>

他の人は皆そのままでOKなのに、容貌にハンデのある彼がリゴレットになるために涙ぐましい努力をしたことについては、そのときに書いた記事「美男子改醜作戦 」から一部繰り返します。              


クリップ顔中に黒い線で影を作ったり皺を描いたり目元に傷を付けるくらいでは不足と思ったようで、ハゲのカツラ被ってました。時代劇のチョンマゲさらし首のような白髪のザンバラ髪。まあ特殊メークはそれで充分でしょう。


歌わないときは常に口元をへの字にゆがめて出歯気味にして、ずっと腰を曲げっ放し。その姿勢でリゴレットにしては若々し過ぎるほどキビキビよく動いて大熱演。大根役者だなんて言ってごめんなさ~い。今までとは人が変わったような変身ぶりの大サービスで、おみそれしました!演技賞は差し上げます。

だけどね~・・・・


やっぱり合わないんですよ。

あの声がね。なめらかで叙情的過ぎる。彼なりに一生懸命やって、今までのような棒歌いからは想像もつかないほど頑張ったんだけど、尖がった荒々しさが足りないの。


というわけで、本来の彼を知っている観客にとっては、おそろしく人工的なものを見たという稀な経験はそれなりに「あ~面白かった」というところでしょうが、彼が別の路線で有名な歌手だからこその興味深さなのであって、誰だか知らずに出てきたら、違和感のあるリゴレットだと思う。


けなしているわけではないですよ。バリトンなら誰でもやりたいリゴレットを歌って彼として新境地を開いたのは確かだし、すごい努力して充分な効果もあったから、ホントに見直した。


それに皮肉なことに、この変装でも笑うと歯並びの良い口元がすごく素敵で、あらためて彼の美貌を認識。ときには今までの中で今回が一番ハンサムに見えたくらい。結構な回数見たことあるんですけどね。これって改醜作戦は失敗だってことかしら?


プレゼント最後に、チーム賞は直近のFranz Grundheber、Patrizia Ciofi、Wookyung Kimに差し上げます




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