(オペラ記事ふたつ溜まっているのですが、まず昨日見たコンサートの方を簡単に済ませておきます)
10月6日、ロイヤル・フェスティバル・ホールのChicago Symphony Orchestraのコンサートを聴きに行きました。
オケだけのコンサートは久し振りですが、これを選んだのは理由は、まだ一度も見たことがない指揮者のリカルド・ムーティ。私の指定席であるコーラス席からは指揮者の顔がよく見えるのがポイント。一番良い席は75ポンドもするけど、ここは11ポンドだったし、一石二鳥。おそらく管楽器の音はちゃんと聞こえてないでしょうけど、打楽器の人の休符ばかりの楽譜とか見えたりするのも興味深いです。
シカゴ・シンフォニーを生で見るのは初めてですが、コンサートマスターも含めてかなりの人が東洋系なのも驚きました。ほとんどは中国人に見えましたが、日本人もいるのでしょう。音も統一が取れて美しく、立派なオケでした。
私の席からの眺め コーラス席の黒いパイプオルガン奏者椅子の前が私の席
Sergey Prokofiev Symphony No.3 in C minor
INTERVAL
Manuel de Falla The Three-cornered Hat, Suite No.2
Maurice Ravel Rapsodie espagnole
Maurice Ravel Bolero
いきなり交響曲からというのも珍しいですが、曲目も普通のコンサートの「軽く初めて最後に重く」とは逆で、プロコフィエフの3番は聞く側にもチャレンジでした。彼のオペラ「炎の天使」の一部が使われていたそうですが、そのオペラをテレビで一度しかみたことのない私にはどの部分かわからないし、前衛的でメロディのない聞きづらい大作でした。ムーティもしょっちゅう音符見てたし。
一糸乱れぬ演奏は素晴らしかったのですが、開始前にワイン飲んだりしたこともあり、観客から見られてしまうコーラス席に着物で座っていたにも拘らず、ちょっとだけ(多分)うとうとしちゃいました。かっこ悪~い
近すぎていっぺんには写真が撮れないので、左右半分づつ2枚にしましょ(クリックで拡大)
さて、休憩の後はわかり易い曲ばかりなのでリラックス。これからがお楽しみタイム。
ラヴェルのボレロは、コンサートで見るのは初めてで、聞き飽きた曲だし寝てしまうのではないかと心配だったのですが、普段とちがう弦楽器のピチカートなどが珍しいし、様々なソロの管楽器も皆とても上手で、あの同じメロディの繰り返しも退屈しませんでした。
このボレロ、ドラムがずっと同じをリズムをキープし続けるので指揮者要らずなのですが(全く動かなかったときも結構あった)、他の曲でもムーティは体をあまり動かさず顔の表情にも乏しいクールな指揮ぶり。
こういうスタイルだったっけ? テレビで見たオペラの指揮はちがってたような・・・
と思ってたら、アンコールではまるで別人になったんです
ヴェルディの「運命の力」の序曲だったのですが、ムーティは打って変わって体を前後左右に大きく動かし、若い頃のダニエル・ハーディングもかくやと思うほど膝を折り曲げたりまでするオーバー・アクション。
体だけではなく、顔も凄かったです。思い入れたっぷりなんて生易しいものではなくて、陶酔したり怒ったり笑ったり百面面相の鬼気迫るものがありました。
この夜初めてのイタリアものでイタリア人の血が騒いたのか?
それともこの頃あまりオペラの指揮をしていないので(してないですよね?スカラ座はクビになったし、コベントガーデンには出入り禁止ですから)オペラに対する飢餓感か?
はたまた、3年前にゴタついて結局ROHで「運命の力」を振れなかった復讐か?
そんなムーティの思い入れが入った演奏は悪いはずがなく、これが絶対この夜のハイライト。前の晩も彼らのちがう演目でのコンサートがあり、それはシューベルトのアンコール曲で静かに幕を閉じたと聞きましたが、この日は最後に華やかにオペラチックに盛り上がり、皆を「彼の指揮でこのオペラを聴いてみたいぞ」と思わせたにちがいありません。
というわけで、同じコンサートですらこれほどスタイルのちがう指揮者は初めてで、一体どれが彼らしいのかわからないのですが、でもただ者じゃないことはわかりました。
彼の顔が見えるコーラス席にいてよかった~!、面白かったも~ん。
正面を向くときは、演奏中に掛けてるメガネ(老眼鏡でしょうね)をこまめに外す伊達男