NYのメトロポリタン・オペラの生中継、去年あたりからロンドンでもやってましたが、12月20日に初めて観に行きました。


チケットがなんと25ポンドもするのが痛いですが(この値段でROHに軽く2回行けます)、バービカンのメンバーだと17.5ポンドに割引になるし、それでもまだ高いけど、長い間生で聴きたかったオペラですから、時間をお金を掛けて週末にわざわざロンドンまで出掛けました。


指輪

Thais, a courtesan ...... Renee Fleming (soprano)
Athanael, a coenobite monk ...... Thomas Hampson (baritone)
Nicias, a young sybarite philosopher ...... Michael Schade (tenor)
Palemon, an old coenobite monk ...... Alain Vernhes (bass)
Crobyle, a slave ...... Alyson Cambridge (soprano)
Myrtale, a slave ...... Ginger Costa-Jackson (mezzo-soprano)
Albine, Abbess ...... Leah Partridge (soprano)
Servant of Nicias ...... David Won (baritone)

Metropolitan Opera Chorus and Orchestra
Jesus Lopez-Cobos (conductor)


オペラ三昧イン・ロンドン



マスネのThaisは、数年前にフレミングとハンプソンのCDを聴いて、そのエキゾチックな華やかさと妖艶さがとてもも気に入ったオペラです。


それをやっと2007年7月 にROHで、コンサート形式でしたが、この二人で生で聴けると喜んで2回やってくれたのを両方行ったのに、フレミングは素晴らしかったものの、あの頃しばらく具合が悪かったらしいハンプソンがキャンセルし、代役がすごく下手だったので大失望したことがありました。

それを今回はやっとフル舞台で観られるわけですから、しかもメトならきっとまともで豪華にちがいないと、すごく前から切符を買って楽しみにしてました。バービカンの映画館は小さいので、切符はすぐ売り切れたみたいです。


数ケ月待てばテレビで無料で観られるわけですが、更にそんなに待てないし、切符が買えてラッキー。


オペラ三昧イン・ロンドン    オペラ三昧イン・ロンドン


ニューヨークの正午開始のパフォーマンスをロンドンで5時から観るのですが、


バービカンの映画館は雰囲気からしてまるでオペラハウスのようでした。なんてったって同時生中継ですから、何が起こるかわからないワクワクさはたとえ現地にいなくても感じられ、まさにこれが今ニューヨークで起こっているのだと思うだけで感激もひとしお。


もちろんカーテンコールなどでは拍手します。一番拍手が大きかったのは、有名なタイスの瞑想曲の時ですが、これは幕が閉まったままで音だけ聴いてるネトの観客よりも、演奏姿が大アップで観られる我々の方が恵まれてます。ヴァイオリンははメトオケのコンマスDavid Chan氏ですが、普段ソロで弾く機会の少ない人にしてはとても上手で、バービカンの映画館でも皆うっとりと聞惚れました。後で彼のインタビューもありましたが、若い中国人の好青年でした。


幕間インタビューはラジオではよく生で聴いているのですが、画面があるとこれもさらに感動ですね。インタビューと言えば、幕間の歌手への突撃は大物歌手がすることが多いのですが、この日はなんとプラシド・ドミンゴ。 ・・ったくどこにでも出たがる爺さんだこと・・おまけに「マスネット、マスネット」って何度も言うので、ドミンゴ大先生が仰るんならマスネじゃなくてマスネットなのかって思っちゃいましたよ。


しかし、アメリカ人のフレミングもハンプソンもお喋りなので、訛ってるドミンゴ先生があーだこーだ言うのは不要でしたね。二人でお喋りさせた方がずっと面白いのに。


オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン


オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン


舞台と衣装は、


これはあまり舞台でやらないオペラだし、素直だけど豪華絢爛というメトらしいプロダクションを期待していたのですが、セットは4世紀のエジプト風で衣装は現代というミスマッチ。でもすっきりしてなかなか洒落てます。


そして、セットのシンプルさは、ルネ・フレミングの衣装を引き立たせるためかもと思えるくらい、主役はタイスの衣装クリスチャン・ラクロワのデザインですが、高級娼婦らしく金々ピカピカだったり鮮やかなピンクだったり、艶っぽくて美しいこと。大画面だと細かい装飾まで見られるのがいいですね。アップに耐えない女性が着てたら折角のドレスも台無しですが、ルネ・フレミングの綺麗なことったら!


ルネが美人なのは今更言う必要もないですが、それにしても顔に皺もなくてお腹も出てないし、ハリウッド女優にも負けませんね、これなら。一時はふっくらしてたフレミングですが、ダイエットでほっそりさを保っているのでしょう、コンサートでもいつも素敵なデザイナー・ドレスを着こなしてるし、おデブで同じドレスを何度も使うどこかの誰かさんに爪の垢でもクリスマスプレゼントしてあげて下さいな。


ハンプソンの衣装は、砂漠の修道士なのでボロいに決まってますが、モップのようなカツラは頂けません。ルネも幕間のインタビューで、「トム、貴方とっても魅力的だけど、そのヘアがね・・」と言ってました。でも、モップ頭以外は、長身のハンプソンは水も滴るハンサムぶりだし、40代と50代にしては若々しくて美しく、大画面アップにも充分耐えるお似合いカップルでした。


タイスのお客さんのお金持ちのニシアス役のミヒャエル・シャーデも体格はいいし堂々として、これまた金ピカのジャケットがかっこ良かったです。


オペラ三昧イン・ロンドン      オペラ三昧イン・ロンドン


で、肝心のパフォーマンスはどうだったの?


はい、主役3人ともチャーミングで役柄ぴったりのスター歌手が揃っても、歌が下手だったら全て台無しで、中継してる全世界で笑いものになっちゃいますが、


文句無しに素晴らしい歌と演技でしたクラッカー


最初は画像と音声が一致しなくて気が散ったけど、すぐに引き込まれてそんなことどうでもよくなったのか、それとも途中で直ったのかわからないくらい。


退廃した生活に嫌気が差して神に救いを求める娼婦のタイスはいわば本心で行動しているのでルネは美貌と綺麗なドレスとふくよかな美声だけで普通に演じれば充分なのに対し、


オペラ三昧イン・ロンドン ハンプソン扮するアタナエル修道士は、汚らわしいタイスを神に導くのが使命と自分にも言いきかせながら、でも実際はタイスに恋をしてわけで、このジレンマを演じるには演技力も必要なのを、ハンプソンは俳優並みの演技で、しかも堂々たる歌唱でやってのけ、


最初は美しいドレス姿のタイスの迷いがテーマだったのが、最後はボロ着の修道士の苦悩が見事に取って代わり、運命のすれ違った二人を描きます。


というわけで、生舞台とはもちろん全くちがう鑑賞ができる画像オペラを楽しみました。


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この日のタイスはもうすぐ日本でも観られるんですよ


1月10日(土)~16日(金)。 詳しくは→こちら


日本全国あちこちで上演されるみたいで、3,500円だそうです。この値段では日本ではオペラは観られないでしょうから、おヒマな方は是非どうぞ。生ライブではないけど、素晴らしいことが最初からわかってるわけですから、それはそれで安心して観られるってことですよ。



私はその頃、またメト生中継を観に行きます。1月10の日アラーニャとゲオルギューの「つばめ」(プッチーニ)。

そして、その後、あと2回分切符が買ってあります。フロレスとデセイの「夢遊病の女」と、ネトレプコの「ルチア」。


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