オペラ三昧イン・ロンドン

サン紙の優待公演のおかげで10月3日のカルメンはオーケストラ・ストールの11列目で観るという幸運に恵まれました。本公演だったら210ポンドのところ、今日は叩き売りで30ポンド。


いやあ、やっぱり正面の舞台近くから観るのはいいですね。このプロダクションは結構何度も観てますが、全く見切れないので全体の構成や群衆の動きがいかによく考えられてるかが初めてわかりました。バックのつまんない茶色の壁以外は、なかなか良いじゃないですか。
オペラ三昧イン・ロンドン
張りぼてセットを見るためにオペラハウスに行くわけではないので、それは私にとってはまあどうでもいいのですが、肝心の歌手を見るためにも正面はいかに良いかということも身にしみてわかり、これからの席選びについてあれこれ心をよぎるものがありました。


私が今までROHで観て一番感動したアラーニャとゲオルギューのロメオとジュリエット(グノー)もこういう席で観たせいもあるのかしらと随分前のことなのに思い返したり、最近では切符代がうんと安かったので最前列に座った7月にROH若手アーチストのコンサートの時もそりゃ感激しました。そして実はその後すぐ今回のカルメンの最前列をネットで見つけたので真剣に買おうか迷ったりもしたんです。180ポンド・・・・結局諦めましたが、今後は横から何度か観る分を一度だけにして一点豪華主義路線に変更しようかとも、昨夜カルメンを観ながら考えちゃいました。

しかし、お目当てが必ず出てしかも好調であることが保証されてるのならいいけど、オペラでそれを望むことはできないし、前の席がでかい人だと腹立つし・・。


ま、それは追々考えるとして、正面から観られた凄く嬉しかった昨夜のパフォーマンスですが、

オペラ三昧イン・ロンドン
ドン・ホセのアラーニャはまた絶好調で熱演してくれました。ガランチャのカツラ事件を反省してかカルメンの髪の毛には触りもしませんでしたが(笑)。舞台袖席からだと歌手が向こう向くと声も聞こえなくなっちゃうのですが、前からだとそういうことはまずないし、顔も正面からだと演技もさらによくわかり、ドン・ホセのやるせなさがぐっと迫ります。私はそんなに近いのにさらに双眼鏡で凝視して、アラーニャの歌にも演技にも大感激。これ以上のドン・ホセはありますまい。


アラーニャはROHの公開インタビューで、「おいらはベルリオーズのトロイ人とかやりたいのによ、依頼が来るのはカルメンとかラ・ボームとかばかりなんだぜ」、とブツブツ言ってたし、私もドン・ホセなんて駆け出しテノールにやらせときゃいいんじゃないと思ってました。今回は生でアラーニャのドン・ホセを観るのは初めての私はそれはそれで嬉しかったものの、アラーニャにはもっと難しい役をやって欲しいと思ったりもしてましたが、いや~、ドン・ホセってこれだけ上手くやれば見応えのある役なんだと見直しました。


彼のドン・ホセのどこが良いかって言うことができないのがもどかしいですが、要するに全て良くて完璧だったんです。もう彼以外のドン・ホセはあり得ないわ恋の矢


今回のカルメン、一応全日程の切符は苦労の末に確保してあるものの(キャンセルするかもしれないから予備は必要)、何度行くかは未定だったのですが、素晴らしいアラーニャを2回観たらもっと観たくなったので、どうしてもという用事以外は蹴ってカルメン優先のスケジュールにしようと決心しました。フッフッフ・・・

オペラ三昧イン・ロンドン    オペラ三昧イン・ロンドン

                       ラブラブ! ラブラブ! ラブラブ! ラブラブ!


オペラ三昧イン・ロンドン
カルメンのガランチャ
はリハーサルの日は最初は努力してセクシーに振舞っても、カルメンという役自体が後半はおとなしくなってしまうこともあり、最後はロミオの風情でしたが、2回目はくねくね動作も控え目で最初からロメオだったような。


けなしているのではありません。等身大で凛々しい歌唱にもマッチした彼女らしいカルメンのほうが素晴らしかったし、硬さが取れてリラックスしているように見えました。


アラーニャの年季の入ったドン・ホセはここで何回かやってるうちに変るとは思えないけど、ガランチャはやるたびに違う面を見せてくれるような気もして、楽しみです。


正面からみるとガランチャの美しさがさらに際立ち、見惚れました。オペラ歌手にしては美人という程度じゃなくて女優さんと比べても彼女の美貌はひけを取りません。但し、脚は見せないほうがいいですけどね。
オペラ三昧イン・ロンドン
闘牛士エスカミーリョ
は?

有名な曲がたくさんあるカルメンの中でも一番「おーっ、これこれ!待ってました!」、と誰もが沸き立つのが闘牛士のアリアで、派手な前奏で盛り上がったら、鳴り響くオーケストラに一人で勝ってしまうような大声のバリトンに登場してもらって迫力で勝負してもらいところですが、このプロダクションではまずエスカミーリョが馬に乗って舞台の奥の隅っこでおっかなそうに歌うので声が前に出てきにくいという問題があり、ダークでハンサムなダルカンジェロも出だしが弱かったですかね。


馬から降りた後は、ジプシーの溜まり場で派手なアクションで女性たちの羨望の眼差しを浴びる人気闘牛士に颯爽とした風貌のダルカンジェロはぴったりで格好よかったですが。


ミカエラは中国人ソプラノのLiping Zhang。2日目はかなりよくなったし、本当に涙を流していた彼女は清純なミカエラを好演してぐっと来ましたが、私は彼女の輪郭のはっきりしない声が好きではないので、これから何度も聴くのは苦痛かも。数年前にROHで聴いた彼女のルチアは辛かった・・・。すでにこの役で以前聴いたし、彼女が風邪ひいて休むことになっても残念とは思わないでしょう。



オペラ三昧イン・ロンドン
フラスキータ役の中村恵理さんは、オケとコーラスと一緒に歌っても立派に声が突き抜ける立派な歌唱で、コンビのメルセデス役のメゾソプラノ美女には容姿では到底敵いませんが、歌はぶっちぎりで恵理さんの勝ち。こんなちょい役では勿体ないと誰もが思ったことでしょう。

着物姿の私に「あなた恵理さんの応援に来たの?」と話し掛けてきたイギリス人のおばさんにも「彼女すごく良いわ」と言ってもらえて嬉しかったです。きついアイシャドーと茶色の付け毛でルックス的にもジプシー仲間に溶け込んでいて、「あ、あそこに東洋人がいる」とはすぐにはわからなかったでしょう。


カメラ写真はクリックで拡大しますので、お好きなのを大きくして下さい。

オペラ三昧イン・ロンドン   オペラ三昧イン・ロンドン

オペラ三昧イン・ロンドン    オペラ三昧イン・ロンドン  


オペラ三昧イン・ロンドン

   オペラ三昧イン・ロンドン  


   オペラ三昧イン・ロンドン

がま口財布

ところで、うんと切符代が下がったこの日の観客層はというと、一見普段とそう変らない人たちに見えたので、ほらやっぱりサン読者は少なくて私たちのようなオペラ好きが安くて嬉し~い!というだけで来てるのかと思ったら、層じゃない人もいて、私の斜め前の女ども二人はお喋りしてたし、隣のジーンズの中年男は凄く退屈してたみたいで終わったら逃げるように去りました。カーテンコールですぐに立ち上がる人もいて(初めてのオペラが気に入ったということでめでたいわけですが)、オーケストラストールにいつも座ってるいかにも上流階級とは違う種類の人たちでした。はしゃいでる私もそうですが。


やっぱりオペラハウスにはちゃんとした格好で行かなくちゃと思ってるらしくて、サッカーのユニフォームのにいちゃん一人以外はワーキングクラスの人もきちんとお洒落してたのに、なんと音楽監督パッパーノが極端なカジュアル姿で徘徊してたそうです。今日はそういう人が多いと思って、ドレスダウンしてきたのかしら?私は着物だったので、場違いということではパッパーノと同じですが。


砂時計

さて、次のカルメンはいつ?

はい、10月6日(火)の初日に行きます。その日が正式の初日ですから、そりゃ行かなくっちゃ。


しかし、来週は月曜にトリスタンとイゾルデ、火曜はカルメン、水曜はこれもサン紙の優待のバレエに行くのでROH3連チャンとなり、仕事も忙しいのに乗り切れるかしら?運動不足解消のために歩く努力しようと決心したけど、全然できてなくて、これじゃあ来週も無理。


                               人気ブログランキング  走る人