<5月8日(土)>

更に寒さが増して、まるで真冬のようなロンドンですが、トラヴィアータのリハーサルと指揮者や歌手のトークを観てからショッピング(何も買わなかったけど)とジムで水泳、という盛りだくさんで充実した土曜日でした。

そんなことしてるうちに又溜まってしまい、どうしたものかと思いながらも書き出すとつい長くなってしまい・・

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オペラ三昧イン・ロンドン


5月5日、バービカン・シアターのMusashiの初日に行ってきました。


巌流島の決闘の後日談なのですが、再会した武蔵と小次郎が再び果し合いすることになり、周囲があの手この手で止めようとする深刻コメディで、先月亡くなった井上ひさしさんの書き下ろし、演出はイギリス演劇界でも有名な蜷川幸雄さん。


演劇には興味のない私はお芝居なんてほとんど観ないし、ニナガワ物は去年のシェークスピア歌舞伎「十二夜」(→こちら )に続いてこれが2度目という超初心者なので、どうこう言う資格などないですが、門外漢なりの意見をちょっと書いてしまおうと。

オペラ三昧イン・ロンドン
  宮本武蔵・・・・・藤原竜也  
  佐々木小次郎・・・勝地涼
  筆屋乙女・・・・・鈴木杏
  沢庵宗彭・・・・・六平直政
  柳生宗矩・・・・・吉田鋼太郎
  木屋まい・・・・・白石加代子



そりゃ超一流の二人が組んだのですから良く出来た作品で、台詞に無駄はないしテンポも良く、ドンデン返しも見事。滑稽ダンスや能のさわりなどビジュアル的にも面白く、登場人物描写もきっちりだし、役者さんたちも皆さん芸達者で、とても楽しめましたチョキ 


「憎み合ってはいけない、殺し合ってはいけない」というテーマがあまりにも直接的でしつこいのはメッセージを伝える手段としてはベストなのか疑問だし少々しらけたのですが、「武力による報復の連鎖をいかにして断ち切るか、911以降の世界に問いかけた舞台劇」(→こちら によると)だそうですから、敢えて真っ向から叫んだのでしょう。しかし、生と死が隣合わせるのがサムライの美意識でもあるわけで、それが否定されてしまったことにはちょっと引っ掛かった気もして・・・。



オペラ三昧イン・ロンドン


ロンドンで時々やってるニナガワ芝居は無視してる私がムサシに行く気になったのは、時代劇だから着物イベントにちょうといいじゃ~ん、それに日本の俳優には疎い私も映画「デスノート」で観た藤原竜也君は知ってるし~、という軽薄さそのもので、かわゆい藤原君をかぶりつきで見ようと発売早々最前列を確保。近過ぎるので最低値段のこの席はバービカン会員2割引で僅か8ポンドなのも理由の一つ。

オペラ三昧イン・ロンドン
これで時折2メートル足らずのところに藤原君が立ったりするわけですから、もうそれだけで胸キュンラブラブ 彼が舞台の後ろに引っ込んだら双眼鏡で追いかけたので、「あの、派手な着物着たおばさん、変態じゃない?」、とほとんど日本人だった周囲の客に思われたかも(全体では日本人とそれ以外の比率は半々くらいかな?)。


イギリスでチャーミングな若い日本人男性を見る機会は少ないし、しかも日本男児の魅力が倍増する和服姿には見惚れます。くしゃくしゃ髪でむさくるしいいでたちでも、藤原君がワラジ履いたり手際よくたすき掛けなんぞする動作は凛々しいったらないわラブラブ! 想像してたより背も高いし。


剣術もなかなかの腕前で、最近ROHのアイーダでは西洋人ダンサーがサムライ風に刀を振り回すんだけど背筋が伸びなくてサマになってないのと比べると、剣を構える藤原ムサシのかっこいいこと。できれば海外バージョンでは伝統的な日本男児の美しい立ち居振る舞いや動作を見せるために行水場面あせるなんかあればよかったのにと思った私でした。汗だくの藤原君も途中でさっぱりできただろうしね、なんつって。


しかし、体の線は全く出ない和服だけど、袴の下からのぞくワラジだけの裸足の足(私の視線はこの高さ)がセクシーだったこと。刀を振り上げるとむき出しになる腕にもドキッ。なるほど、和服の色気はこういうところか。


キスマークなどという不埒な楽しみがあったので、正味2時間半もあってちょっと長過ぎと思われた舞台も藤原君のお陰で短く感じました。


あ、藤原君にばかり目が行ったのはたしかですが、小次郎役の勝地君も悪くなかったですよ。


演技についてはよくわかりませんが、舞台役者として活躍してるらしい藤原君、台詞回しは上手で色気もあるけど、あまりよく通らない声だったのが意外で、私はかぶりつきなので問題なく聞こえましたが、後ろの席の人まで充分届いたかどうか。

細かいところまでよく見えたし、皆さんお上手でしたが、将来違う役者で再演する時に一番ぴったりする人を見つけるのが難しいのは白石加代子さんの役でしょう。あれだけの芸達者がそうそういるとも思えないですが、例えば歌舞伎の亀治朗さんなんかどうかしら?


因みに、ロンドン・バージョンって日本のオリジナル版とどう違うのかしらという点ですが、日本でもこれを観た友人によると特に大きな差はないらしいです。少し英語のジョークでも混ぜるのかと思ったのですが。でも、暗転する時のタンゴ風の明るい西洋音楽は,海外では日本の伝統音楽に変えて欲しかったですねえ。風に揺れる木々のBGMは尺八でしょう、やっぱり。


切符の売れ行きは宣伝不足のせいかスローだったとは云え最後はほとんど売り切れたし、日本人は誰でも楽しめた舞台に決まってますが、現地の舞台評は上々だったものの、字幕では表現できないことも多いので、本当の良さがわかってもらえたかどうか。って、そんな事言ったら、誰にとっても外国モノは充分理解できないわけで、私のオペラ鑑賞だって言葉のニュアンスなんか味わえてないですが、言葉の問題はお芝居ではことさら大きいですからね。


トーチャンとムスメも誘ったのですが行きたくないと言われたのは言葉の問題に違いないですが、外国人にとってその障害を乗り越えて有り余る魅力があったかどうかは疑問で、「トーチャンとムスメも観るべきだったわ~!来ればよかったのに」、とは思いませんでした。藤原君云々は別にしても、自分自身は観られてよかったと思ってますけど。


              カメラ以下のカーテンコール写真はクリックで拡大します。


オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン

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