<10月17日(日)>

ゆったり週末でしっかり静養&充電。来週からまた頑張りましょう。毎日ジムに行くのが目標走る人

オペラ記事、これでやっと、9月分が終わりました。

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オペラ三昧イン・ロンドン


オペラ三昧イン・ロンドン


350年間も忘れ去られたバロック・オペラNiobe, Regina di TebeをROHがやってくれるというので楽しみにして、9月23日と27日の2回、舞台袖から左右一回づつ観ました。


埋もれたのは作品だけではなく、Agostino Steffani (1654–1728)という作曲家も、誰も名前さえ聞いたことはないでしょうが、ヴィヴァルディと同時代にそれなりに活躍したそうなので、このオペラも典雅で美しく、特にイタリア語の響きが魅力的でした。(なんでも英語にしてしまうENOではやって欲しくない!)


どんなお話かというと、古代の王侯貴族の権力争いと愛のもつれに神様がちょっかい出して・・・というのが定番となっているバロック・オペラですから、これも例外ではなく、文章一つでまとめると、


クリップ古代ギリシャのテーベの王妃は、夫をおだてて奮起させて妻の役目を果たしながらも、適当に男たちをつまみ食いしたり、気に入らない民を蹴っ飛ばたり、奔放かつ傲慢に暮らしていたが、度を越してしまって神を冒涜したもんだから、神の怒りを買って息子たちは落雷で死に、絶望した王様は自殺、王妃自身は悲しみで石になってしまう。 という、よくあるギリシャ神話からみの非現実な展開ですが、これだけで長いオペラは持たないし、数人で歌を競い合うのが目的ですから、魔法使いやら他国の王子やら巫女父親等、話の進行には直接関係のない人たちがたくさん出てきて話に重なりを持たせつつ、長い喉自慢大会となりますクリップ

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家舞台セットと衣装椅子サンダル


ROHでは新プロダクションですが、2008年のシュヴェッチンガー音楽祭を観て感激した人借りてきたもので、ミラーボールで客席全体がサタデーナイトフィーバーになってしまいチープ感が出すぎではないかと思う場面もあるものの、巨大風船を割ったり、洗練されてないモダンさがなかなか面白かったです。大袈裟で遊び心に満ちた衣装は印象的。


オペラ三昧イン・ロンドン
Composer Agostino Steffani
Director Lukas Hemleb
Set and lighting designs Raimund Bauer
Costume designs Andrea Schmidt-Futterer


Conductor Thomas Hengelbrock
Niobe(テーベ王妃) Véronique Gens
Anfione(テーベ王) Jacek Laszczkowski
Manto(巫女) Amanda Forsythe
Creonte(魔法使いに操られる若者) Iestyn Davies
Tiberino(他国の王子) Lothar Odinius
Clearte(家来) Tim Mead
Nerea(乳母) Delphine Galou
Tiresia(巫女の父) Bruno Taddia
Poliferno(魔法使い) Alastair Miles


音譜パフォーマンス


いつもの専属ROHオケではなく、古楽スペシャリストのBalthasar Neumann Ensembleを、前夜コジ・ファン・トゥッテを振ってたドイツ人の大男Thomas Hengelbrockが指揮。
オペラ三昧イン・ロンドン
サンダル女性陣


タイトルロールのヴェロニク・ジャンス、役柄によっては長身が邪魔になることもあるでしょうが、今回は威厳ある王妃役がぴったりで、人を蹴っ飛ばすところなんか凄い迫力。キンキラドレスにも負けない立派な体格と身振りと歌唱力で堂々と主役を務めました。2年前のカリスト(→こちら )に続く2度目のROH出演ですが、どんな役でもいいからどんどん出て欲しいです。バロック以外はやらないのかしら?


巫女さんのアマンダ・フォーサイスは、見覚えのある顔とデカパイだなあ、と思っていたら、思い出しました、こないだのフィガロの結婚のとても上手なバルバリーナ(→こちらじゃありませんか。絶対伸びると思った人ですが、期待通り、癖のない美声としっかりしたテクニックで素晴らしかったです。


ニオベの子供たちの乳母役のデルフィーヌ・ガロウも、名前を聞くのは初めてですが、脇役ながら立派な低い声で光ってました。



と、女性たちは皆立派クラッカーで文句なかったですが・・・



オペラ三昧イン・ロンドン
ジーンズ男性陣


これが問題で、当時はカストラートというタマ抜き男性が歌っていたんでしょうが、そんな残酷はできない現代では、まがいモノであるカウンターテナーや女性で代替するしかありません。


幸い、男声アルトであるカウンターテナーは良い歌手がたくさんいて、それが昨今のバロック・オペラ復興の理由にもなっているのでしょうが、それより高い音域の男声ソプラノはやはり無理があるのか人材不足に違いないです。今回はそれを無理に男声でやろうとしたのか、水準以下のポーランド人ヤツェク・レシュチュコフスキーを採用して、聴くに耐えない惨事ダウンとなりました。


最初の第一声から、女の腐ったような不快な声にのぞけり、ニオベの夫の王様役だから出番も多く、「ギェーッ、勘弁してくれ~!ガーン」と耳をふさぎたくなる拷問。不自然な高音だけでなく、高低のつなぎ目もごつごつで、しかも低音の汚いことったら・・。


嗚呼、彼が歌ってる時だけ失神できる特技があれば・・・。彼が男声ソプラノの第一人者だとしたら、不可能と諦めて、女性のズボン役にすべきでしたね、ここは。


オペラ三昧イン・ロンドン       オペラ三昧イン・ロンドン

2回分の切符を持ってましたが、もう一回あの苦しみを味わうのは嫌だなあ、と行くのはよそうかと思いましたが、上手な女性陣と一緒にそれを思い留めてくれたのが、イギリス人カウンターテナーのイェスティン・デイヴィス。彼がお目当てだったのですが、期待通りの魅力的な声で、初めて裏声男性を聴く人も「ああ、よかった、気持ち悪いばかりでなく、美しくもなり得るんだ」、と安堵したのではないでしょうか。

CTにしてはふくよかな声のディヴィス君ドキドキ、大いに気に入ったので、来年1月のウィグモア・ホールのリサイタルの切符も張り切ってゲットしました。


オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン


もう一人のCTティム・ミードは可もなく不可もなしで、名前を覚える価値もなし。巫女と恋に落ちる他国の王子役のLothar Odiniusは、華やかさはないけれど手堅いテノール。魔法使いのバリトン、アリステア・マイルズは引退まじかだと思いたいです。


といわけで、ぶち壊した男が一人いましたが、他の歌手が充分カバーしてくれたし、珍しいオペラを聴くことができて貴重な経験でした。本来の形ではなく一部まがいモノで賄うしかないバロック・オペラですが、これからも埋もれている作品を掘り起こし続けて頂きたいものです。


 

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