ベンジャミン・ブリテンのオペラを立て続けに2つ観て、これが色んな意味で対照的だったので、比較しながら一緒にアップします。


6月23日のENOで真夏の夜の夢と、27日のROHのピーター・グライムスですが、オペラの連ちゃんハシゴは慣れてる私もさすがに1週間で前衛的なブリテンを2つというのはしんどいなあ、とビビったのですが、これが意外な結果となりました。

オペラ三昧イン・ロンドン

まず、ENOの新プロダクションA Midsummer Night Dreamは、コロシアム劇場に行く時の常套手段となっているレスター・スクエアの割引切符小屋tktsに当日の夕方行き、額面80ポンドの隅っこから6番目前から6列目のストール席を、手数料込みで25ポンドでほくほくゲットニコニコ 

 


Orchestra of the English National Opera

Conductor: Leo Hussain

Director: Christopher Alden

Set designer: Charles Edwards

Costume designer: Sue Wilmington

Lighting designer: Adam Silverman

Oberon: Iestyn Davies/Tytania: Anna Christy/Theseus: Paul Whelan/Puck: Jamie Manton/Hippolyta: Catherine Young/Lysander: Allan Clayton/Demetrius: Benedict Nelson/Hermia: Tamara Gura/Helena: Kate Valentine/Bottom: Willard White/Quince: Jonathan Veira/ Flute: Michael Colvin/Snug: Graham Danby/Snout: Peter van Hulle/Starveling: Simon Butteriss


オペラ三昧イン・ロンドン   オペラ三昧イン・ロンドン



この席でこの値段ですから、どんなにひどいパフォーマンスでも腹は立たないんですが、いやー、凄く退屈で長かったことガーン だらだらした音楽が一番の理由ですが、妖精の国という設定をちょっと前のイギリスの学校に読み替えたのも大失敗。


夏の夜に妖精たちがふわっとした温かい空気の中で人間と関わっていたずらごっこみたいな恋愛騒ぎを繰り広げるというファンタジーなのに全く逆の暗く冷たい灰色の学校で仏頂面の人ばかり。生きてる喜びなんて微塵も感じられません。



ブリテンの音楽自体の雰囲気に合わせると実はこうなるのかもしれなくて、それが演出の狙いであればこうなるのも理解できるのですが、そのミスマッチがブリテンの意図だったんだろうとも思うので、なんだかややこしいですが、要するに、初めて観るオペラは妙にひねくり回さず素直に設定通りにやってもらえるとありがたいと思ったブリテン初心者の私。シェークスピアの戯曲に造詣の深い人は歌詞の裏の意味まで理解できてそれなりに楽しめる筈ですが、その知識ゼロの私はそもそもこのオペラを鑑賞する資格がないってことでしょうか。でも、もう2度と観ることはないかもしれないので、案の定途中で帰った人も結構いた中で、頑張って最後までいました。


元々、なぜこれを観に行く気になったかと言うと、オベロン役(妖精国の王様)がお気に入りカウンターテナーのイェスティン・デイヴィスだったからで(今年1月にWigmore Hallで彼自身に来てね、って言われたし→こちら )、変態気味の校長先生が童顔の彼に意外と合ってなんだかセクシー。絶好調の彼が歌うところだけは退屈は全くせずうっとりと聞惚れましたラブラブ!


他の歌手たちも皆凄く上手で、こんなメロディらしいメロディもない退屈なオペラでなく他ので聴きたいと思った人ばかり。校長夫人の日米ハーフのアナ・クリスティの鈴のような可愛い声も良かったし、何度聴いても良いと思ったことのなかったウィラード・ホワイトがさすがの存在感で今までで一番良かったし。




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さて、お次は少年虐待がテーマという暗さではオペラ随一かもしれないピーター・グライムス。ROHのオペラには一応全部行くことにしてるけど、決して楽しみにはしてませんでした。


オペラ三昧イン・ロンドン

オペラ三昧イン・ロンドン


オペラ三昧イン・ロンドン
Compose Benjamin Britten
Original Director Willy Decker
Revival Director François de Carpentries
Designs John Macfarlane
Conductor Andrew Davis
Peter Grimes Ben Heppner
Ellen Orford Amanda Roocroft
Captain Balstrode Jonathan Summers
Swallow Matthew Best
Mrs Sedley Jane Henschel
Auntie Catherine Wyn-Rogers
Ned Keene Roderick Williams
Hobson Stephen Richardson
Rector Martyn Hill
Bob Boles Alan Oke
First Niece Katy Batho (Rebecca Bottoneの代役)
Second Niece Anna Devin
オペラ三昧イン・ロンドン   オペラ三昧イン・ロンドン


7年に観たことのあるプロダクションですが、やたらに暗かったのを覚えてて、しかも今回も前回と同じベン・ヘップナー。あの時も良いと思わなかったのに、7年立ってもっと衰えてるに違いない中年デブを又聴くのか・・・と暗澹たる気持ちでしたが、よれよれの中年漁師にはヘップナーの衰えた声が向いてて、高音がうまく出ないのもグライムスの苦悩を表す助けになってました。要するに、若いハンサムという設定のトリスタンはもうさすがに止めて欲しいけど(ちょっと前にROHでやったときは歌も演技も全く外れてて予想通りひどかった)、この役は当り役かも。


村八部にされるグライムスに同情する未亡人役はアマンダ・ルークロフトで、これまた嫌いなソプラノなんですが、彼女のきめ細やかな演技は素晴らしく、高らかに歌い上げるアリアがあるわけでないのでくぐもった声も気にならず、ヘップナーと二人、演技面で上出来。お馴染みの人がほとんどの脇役たちも皆上手だったし、久し振りに見たら年食ったアンドリュー・デイヴィスの指揮ぶりを真横からまじかに見られてよかった。


シンプルだけど設定そのままのセットと、ヴィクトリア時代そのままの衣装で、こちらは真夏の夜の夢とは対照的なリアリズムで、作品の持つイメージを真っ向から捕らえて、漁村のやるせない閉塞感もひしひしと感じられる良いプロダクションです。


そして、なによりも素晴らしかったのはヴェルティを斬新にしたようなブリテンのオーケストラ音楽で、不快な前衛さはなく、美しく変化に富み、テーマの異常さに拘わらずブリテンのオペラの中で一番人気があるというのも納得。今回は仕事も忙しいので一度しか行けないけど、また是非聴いてみたいオペラです。



というわけで、今の私にとっては期待外れの真夏の夜の夢と、なかなか良いじゃんと見直したピーター・グライムスでしたが、全く違う作風でさすがブリテン。全て英語にしてしまうEnglish National Operaで,もっとやって欲しい英語オペラの宝庫です。客集めには苦労しそうだけど。


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