昨日(12月3日)、バービカンでメトロポリタン・オペラ・ハウスからの同時生中継のロデリンダを観ました。


世界中で観た人がたくさんいるのだから、私が意見など言う必要もないのでしょうが、ご贔屓カウンターテナーのイエスティン君のメト・デビューだしクラッカー、ROHで生オペラを観るときの倍のお金を払ったんだから、一言残しておきたいわさ。


私はヘンデルのオペラが大好きですが、バービカンでコンサート形式で聴くことに慣れてるので、こういう大プロダクションには最初とまどいました。でも、はじめて聴くオペラは衣装や演技付きだとドラマとして理解しやすくて助かります。


王冠1ミラノが舞台のロンドバルト王国の王位争いと国王夫妻の夫婦愛がテーマで、このプロダクションでは18世紀初頭に読み替えてあるんですが、こんなに実にリアルなセットや衣装だとコンサート・オペラのように想像する必要はないわけで、それはある意味観る側の知性を否定していることにもなるんですが、つい最近ENOで過度にすっ飛んだラモーのオペラを観たばかりなので、却ってこの時代錯誤さが新鮮だし、こうして大掛かりでわかりやすい形で上演してもらえるとヘンデルも更に一般的人気が上がるというもの。イギリスに帰化したヘンデルの1725年にロンドンで初演されたオペラだし、それは喜ばしいことです。


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
Production...Stephen Wadsworth

Set design...Thomas Lynch


conductor....Harry Bicket

Rodelinda.....Renee Fleming (Soprano)
Eduige..... Stephanie Blythe (Mezzo-soprano)
Bertarido..... Andreas Scholl (Counter-tenor)
Unulfo..... Iestyn Davies (Counter-tenor)
Grimoaldo..... Joseph Kaiser (Tenor)
Garibaldo..... Shenyang (Bass-baritone)



Iestyn Davies

イエスティン君は期待通り素晴らしくて、彼を見るだけでもわざわざ出掛けた甲斐がありましたキスマーク。とくに宮廷召使役の彼は歌わなくても舞台にいる場面が多かったので、凛々しいお姿をたっぷり拝めたのがオマケの喜び。コンサートでよく見るナチュラルでカジュアルなジャケット姿も良いけど、こんなクラシックな衣装だハンサム度がさらにアップラブラブ!。他にもショルとカイザーという長身美男子も二人出てたけど脇目はふらず、イエスティン君が画面に出てる時は私の視線は彼に固まりっぱなしラブラブ。身のこなしも細かい目線もずっと完璧で、演技に知性が溢れてました。


脇役なので歌う場面は少ないけど、若々しくフレッシュでCTにしてはナヨナヨではなくしゃんとした歯切れの良い声はどでかいメトでも充分良さがわかってもらえたのではないかしら。バービカンの映画館は音響が良くないので生で聴く感動は望めない上にいつものふくよかさがちょっと不足してるように聴こえたけど、ビジュアル面も含めてイエスティン君の立派なメト・デビューをリアルタイムで目撃することができたのは大きな収穫で、私の回りの人たちも(オペラハウスとは違ってアリアが終わるとお喋りするので)、「素晴らしいじゃないか、彼は」と何度も誉めて、イギリス人が(指揮者も)ニューヨークで頑張る姿に誇りを感じたようです。


Andreas Scholl

ドキドキ長年のファンですからショルのコンサートはかなりの回数行ってますが、オペラで観るのはこれが初めて。背広に四角い眼鏡というクラーク・ケント姿に慣れているので違和感ありましたが、長身で見栄えするのは当然として、演技も立派で主役としての存在感は充分あり。


でも、歌はどうだったかというと、うーん、これが複雑で、絶好調ではないにしろショルの良さである甘さはまあ出てたと思うのですが、この弱々しさはやっぱりメトの大きさには無理があるのではないかと・・。生で聴いてるわけじゃないのでわからないけど、毎度彼の歌う番になると急に声のボリュームが落ちたような気がして、「これで後ろの席まで届くんだろうか?」と心配していると、音量係がボリュームをあげる操作でもするのか、OKになるんですが、一生懸命声を張り上げる姿を見ると痛ましくて・・・しょぼん。私はこの世のものとも思えないショルの甘美な声を何度か生で聴いてるので、彼の良さが伝わらないこういう形で聴くのは申し訳ない気持ちになってしまいました。来年2月(→こちら )にバービカンで生ショルをかぶりつきで聴けるのを楽しみに待つことにします。


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)      London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)


Joseph Kaiser

ROHの魔笛でとても素敵なタミーノ王子だったカイザー君は、ヘンデルを歌うにはちょっと重たいので歌唱的にすごく良かったといは言えないけど、体格が良くて堂々とした体躯と馬面だけど整った顔立ちですごく格好良い上に大変な熱演が大画面向けラブラブ!


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)



アップと、以上3人の美男子たちは総合的には丸印なんですが、他の人たちはちょっと・・・ダウン



Renee Fleming (亡命中の国王の妃)
このオペラは観たいけど最初にこの中継の切符を買わなかった理由は実はルネ・フレミング。彼女の声は決して嫌いではなく、コンサートなどは全て観に行くのですが、あの甘ったらしい声を引きずりながらヘンデルは歌ってほしくないなあ、と思ってたからです。

で、実際に聴いてみたら、怖れていたよりもっとぐにゃぐにゃで、聴いているのが辛くて・・・ガーン。コロラチューラも重くてネバネバむっ。ラジオだったら彼女の歌う場面はスイッチを切るところですが、美人で演技はちゃんとやってくれるし、ショルとは美男美女で気品ある素敵な国王夫妻だったので、ビジュアル面を重視して、まあ良いことにしましょうか。第一、メトの女王様である彼女が歌ってくれるというのでこのプロダクションが数年前に実現したのですから、感謝しないとね。


12月14日にロンドンでのコンサートに行くのんですが、まさかヘンデルじゃないだろうな・・・と確かめたら、ほっ、よかった、リヒャルト・シュトラウスのFour Last Songsでした(→こちら )。


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)


Stephanie Blythe(国王の妹)

ヴェルディは素晴らしい上にワグナーまで歌う人が、「私、ヘンデルも歌えるのよ」と言いたかったんでしょうか。立派な声量はこの大劇場には向きですが、やっぱりブライスの声は重過ぎ。重過ぎと言えば、こんな百貫デブを大画面に出すのはオペラ界のイメージにとって大きなマイナスブタ。役柄に相応しい容貌をオペラに求めるのはやめましょうと私もいつも言ってるけど、ここまで凄いと腹が立ちます。この日も司会者だったデボラ・ヴォイトさん、彼女に貴女が痩せた時のお医者さんを紹介してあげて下さい。


Shenyang (策略家のトリノ公)

おや、カーディフの歌コンテストでちょっと前に優勝した中国人のシェンヤン君は、恩のあるイギリスにはお目見えしないのに、ニューヨークで活躍してるのね。長身の彼はショル、カイザーと並んでも貧弱に見えないところはいいし、スムーズすぎる声が悪役には迫力不足だけど充分歌は合格。でも、こう言っちゃお終いだけど、こういうリアルなプロダクションだと東洋人であることが大きなハンデよね。怠慢デブのブライス嬢とはちがって、これは貴方の責任じゃないけど。


カラオケ

バロック・リズムに上手く乗ったオケの演奏もよくて、幕間の歌手へのインタビューも(特に二人のCTが)面白くて、長いけど退屈せずに楽しめた夜でした。DVDでオペラを観る時間もないのが悲しいけど、生舞台とは全く違う楽しみ方のできる映像鑑賞をもっとできるような身分に早くなりたいものです。



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映画「なにやっとんじゃ、あいつは!?」と笑われたでしょうけど、カーテンコールのスクリーンの動画を撮りました。