5月30日、バ-ビカン・ホール バービカンのバッハ・コレギウム・ジャパンのコンサートに行きました。


barbican 1  7時過ぎのバービカンの庭。


鈴木雅明氏率いるBach Collegium Japan (以下BCJ)は、古楽器の小編成オーケストラと合唱団で1990年設立。


鈴木雅明  鈴木氏はオルガンとチェンバロ奏者で東京芸大教授



超一流のお墨付き

日本人でありながらバッハ演奏では世界的に有名なBCJ、私はCDも何枚か持っていて、一度生で聴いてみたいと思っていたけれど、そして今まで何回かロンドンでコンサートもあったのに、実際には今回が初めて。私の記憶によれば今まではロンドンのもうちょっとマイナーなコンサートホールでのコンサートだったのですが、今回はバービカン、しかも有名アーチストばかり集めたGreat Performers シリーズの一環です。これは超一流のお墨付きをもらったも同然。


とは言うものの、このシリーズを去年3月に一年分まとめて買ったとき、このコンサートは買いませんでした。キーシンやバルトリじゃあるまいし、売れ切れる筈がないから、行くのなら当日でもいいやと思ったからです。そして予想通り、当日でも切符残ってました。でもさすがバービカンの目玉シリーズ、切符もよく売れたようで、バルコニー席は3割方空席でしたが、それ以外はほぼぎっしり。特に日本人が多かったわけでもなかったし、立派なものです。


最後列の良し悪し

私が開始1時間前に買ったのはバルコニーの最後列の最低料金の席で7ポンドこのシリーズはありがたいことにプログラムも無料なので、随分安く済みました)。

バービカンではほぼいつも舞台から5メートル以内の席に座る私(近過ぎて見難いのでさほど高くないのも私好み)、こんな後ろの席なんて初めてですが、一体どんな風に聞こえるのだろうという興味もありました。

だけど、後ろがすぐ壁だし音響はそう悪くないだろうと思ったのですが、なんかやけに音がちっちゃくて失望しました。以前ニューヨークのカーネギー・ホールのほぼ最後列で、「舞台があんなに遠いのにまるでうんと近くにいるように聞こえる!」と感心したことがあるのですが、当然バービカンはカーネギーホールには敵わなってことか。チェッ!(ロンドンは一流演奏家はたくさん来るのに、音の良いホールがないのが残念)。

やっぱり演奏者との一体感が得られるいつものかぶりつきの席がいいわあ、と再確認。切符は一年前に買っとけってことね。


barbican 2  私には珍しいアングルの写真が撮れました。

いつもはあのかぶりつき連中の一人ですけど。



ご贔屓のカウンターテナー(或いはカウンターテノール

しかし、当日まで切符を買わないのは利点もあり、それはお目当ての歌手がキャンセルしたときの失望感を味わわずに済むこと。

今回も、大好きなRobin Blazeがちゃんと出ることを確かめてから切符を買ったわけです。彼はおそらく今イギリスではトップのカウンターテナー 。男性の裏声が気持ち悪いと感じる人もいるでしょうが、あの不気味なところがゾクゾクする程魅力的。Robin君が半年前にENOに出たときは忙しくて行きそびれたので、今回は彼が出ることが私にとっては大きなポイント。BCJとはCDやコンサートを一緒にする仲のようです。

しかし、相変わらずの可愛い童顔だったけど、ハゲ始めてたのでびっくり。 Royal Academy of Musicの声楽教授になったそうだし、いつのまにかおじさんになってしまってたのね。


彼はとてもよかったけど、なんせ遠いからよく聞こえないし、第一出番がすごく少なかった。って、そういう曲なんだから仕方ないけど、前半は50分待って4分ソロってくれただけ。後半も似たようなものだから、なーんだこれっぽっち?で思ったわ。


robin 鈴木さんに比べると貫禄不足の音大教授ロビン君



あ、別に顔が可愛くなくてもいいんですよ、ご贔屓にするのには。私はあの米良美一さんだって大好きなんですから。実を言うと、CDを買ったのも米良さん目当てだし、BCJがロンドンに米良さん連れてくるのをずっと待ってたから今まで行かなかったのです。もう諦めましたけどね・・。


米良  米良君はロンドンには来てくれないのかしら?




バッハのミサ曲ロ短調  Mass in B Minor

宗教に興味がない私は、キリスト教の国にいながら一切関わらないし知識もないので、ミサ曲なんてウヘーっと思ったのですが、そこはバッハ大先生、荘厳で美しく、合唱も凝った構成で、コンサート用の娯楽性もあり。

この曲の詳しい説明はこちらをご参照 → ミサ曲ロ短調BWV232  (しまった、行く前にこれを読んでいけばもっと楽しめたのに)。


演奏は?

いつもと勝手のちがう後ろの席なので、他と比べることがちょっと難しいのですが、最初歌も器楽もCDを聴いて想像してたよりメリハリが少なくてテンポも遅くダラダラとしてちょっと失望。暫くして私の耳の音量調整もできたし彼らのペースにも慣れたけど、管楽器がたまに乱れたりしたのは残念だったし、同じ類のオケと比べるとお行儀がいいというか。

それにソロ歌手も合唱団も直立不動で無表情。ミサってお葬式とはちがうんでないの?その中でただ一人、ロビン君が自分が歌わない間ずっとニコニコキョロキョロして、そこだけ生き生きとしてたけど、とても浮いてた。


ロビン教授の歌は、今まで何度も聴いた通りだけど、短さばかりが印象に残った感じ。テノールのGerd Turkは、BCJのCDでお馴染の人。華やかさからは程遠いお葬式的歌唱だけど律儀に手堅く歌い、まあ古楽はこんなものでしょう。ソプラノの女性二人JoanneLunn Christina Landshamerは、もうちょっと声に張りがある方が私の趣味だけど、それだと伴奏とのバランスが崩れるかもしれないのでまあこれでギリギリよしとするか、と。

しかし、一人皆の足引っ張ってる人がいました。バスのPeter Kooij、BJCとは長い付き合いらしいけど、声は出ないはリズムは乱れるは。年齢による衰えかもしれないけど、鈴木さん、こんな人出しちゃあ駄目ですよ~!



私の好きなカウンターテナー

おまけとして、ついでに私が生で聴いたことのあるカウンターテナーの話をちょっとだけ。


イギリスで一番人気のあるのは、コンサート中心に活躍するドイツ人のアンドレアス・ショルAndreas Schollその外観からあだ名がクラーク・ケント)で、私も大好き。


andreas  長身でがっしり、地声はバリトン(生で聴いたことあり)のショル



それよりも好きなのは、カナダ人のダニエル・テイラーDaniel Taylor。明らかに男性が裏声で歌っているとわかるカウンターテナーが多い中で、彼の優しい声はとても女性的。割りに抵抗なく聴けると思いますので、癒されたいときに是非どうぞ。


daniel  小柄でほっそり、地声が太いとは思えないテイラー