9月23日と27日、ピアニストのキーシンの演奏を聴きにバービカンに行った。London Symphony Orchestraのシーズン幕開けで、同じ曲目で2回づつ計4回のコンサート。


キーシンに対する私の熱い想い今年3月のリサイタル の素晴らしさを覚えてる人は、「そうか、彼のことだからきっと又素晴らしかったんだろうな。というか盲目的に愛してるアナタにはなんでもよく聴こえるだろうさ」、と思うでしょう。 私もそうだと信じて行ったわよ。


だけどさ~、違ったのよね、これが。  大違い!


今まで私が生で聴いたのキーシンの演奏の中では最低の出来だったんだわさ むかっ



体調悪かったのかしら? いつも客席にいるお母さんと年配の先生がいなかったようなので、かなりお年を召した先生の具合でも悪いのかしら? 先生と言っても家族同然にずっと同居して、彼の心のよりどころだから、彼女に何かあったらキーシンは精神的に崩れるのではないかとずっと思っているんだけど、ついにその時が? それとも、童貞キーシン、ついに恋に堕ちたか? (後者はワイルドな憶測だから聞き流すように)



演目はこちら、(指揮はSir Colin Davis)


23日  シューマンのピアノ協奏曲     

リスト編曲によるシューマンの歌曲 "Widmung" (アンコール)      
シベリウスの交響曲第1番


27日 ベルリオーズの Les-Francis-Juges序曲

     モーツァルトのピアノ協奏曲 No.24 K491

モーツァルトのトルコ行進曲 (アンコール) 
     シベリウスの交響曲第2番

       

リサイタルではないのでキーシンが弾くのはオフィシャルには一曲だけなのだけど、そこはサービス精神旺盛な彼のこと、アンコールもやってくれた。オケを無視してそんなことをするのは(私が知る限り)、彼だけ。今回は調子悪いせいか一曲づつだったけど、数曲アンコールしてくれたこともあった。終了時間が伸びて困る人がいるかとか気にしないみたい。

どうせ僕がお目当てなんだから、僕を聴いたら帰ればいいんじゃない?と思ってんでしょ。私たちも、もしアンコールで前半が長引いたら、休憩時間で帰ろうと思ってた(しなかったけど)。実際にそうしたこともあるし、他にもそういう人は多い。


しかし、キーシン、ほんとにどうしちゃったのかしら? 


今までは決して間違えず、パワフルな左手と繊細な右の指で、目の眩むような華麗で力強い演奏を安定して聴かせてくれたのに、今回は、パワーはないし音は汚いし、数回間違えたし、これではただのまあまあ上手なピアニストだ。(彼としてはボロボロでも、まだもちろん一流のランクには入るわよ)



まず、しょっぱなから音が濁ってた。でも彼はいつも最初の数分間は本調子ではなくて、初めて聴く人は多分、「あれッ、これがあの天才と言われるキーシン? 大したことないじゃん」と思うでしょうから、びっくりはしなかったけど、でもそれにしてもいつもより数段下のレベルからのスタート。

そして回復せずにずっとそのままのレベルで終わりまでいってしまった。なんちゅうこと!


特に最初の日のシューマンがひどかった。流れるように弾いてくれたらロマンチックでうっとりする曲なのに、あんなゴツゴツじゃあ台無しだわ。一部はさすがと思わせる部分もあって、初めて聴いた人は満足するかもしれないけど、彼をあの演奏で評価しないでね! 普段の彼は超人的な正確さとテクニックと叙情的な洞察で本当に凄いんだから。


2回目の日のモーツァルトは、悲惨なシューマンから4日しか経ってないからまだ不調かもと覚悟していったせいか、少しましだったけど、音がとても乾いてて響かない。やっぱりどっかおかしい、というのが2回とも一緒に行った友人(音大ピアノ科卒)と共通の意見。


アンコールは、いつもなら超技巧的なやつをド派手のやってくれるのだけど、今回は無難にと思ったか、難易度のそう高くないものでお茶を濁された。しかし、トルコ行進曲なんて、誰でも知っているのを弾くのはある意味とても勇気が要るもので、残念ながら不調のキーシンが弾いても特別素晴らしいトルコ行進曲にはなれなかった。こんなときは何やっても駄目なんだね。


パンチ! ひきつりながらも、私たち、「ま、キーシンだって人間だから調子悪いときもあるわよね~」、と無理に慰めあったけど、帰り道も足どりは重かった。キーシンは人間じゃなくて超人ロボットだと思ってたんだけどさ。


もちろん一度だけヘロへロだったくらいじゃあ、見捨てないけどね、私たち。気を取り直して、来年3月のリサイタルを楽しみにしてるからね~、復活祈願~!



カメラ 私たちの席は2回とも同じで、キーシンを真横から見る前から4列目(21・6ポンド)。手は見えないけど顔はよく見えて、どんな小さな唸り声も聞こえた。いつもは恍惚とした陶酔の表情がセクシーともいえるけど、今回は苦しそうな顔ばかりで、見ている方も胸が痛んだわ。


写真は全て私が撮ったもので、クリックすると拡大します。二日とも同じ眺めだけど、上4枚が23日、下5枚が27日です。


kissin 1-1  kissin 1-2  


kissin 1-3 kissin 1-4

      自分でも出来が悪かったとわかっているようで、笑顔も少なく硬かった




kissin 2-2   kissin 2-1

            今日のモーツァルトはちょっとはましだったかなあ  


kissin 2-5 お辞儀する前にこうして頭をぐっと上げるので写真撮りにくいったらないわ




で、London Symphony Orchestraはどうよ? と言うと、


キーシンのアンコールが一曲だけだったので、途中で帰らずに全部聞いていくことにした。シベリウスは好きだしね。

だけど、オケの皆さんしばらく夏休みで休みほうけたせいか、全くしまりのない演奏で、これも今まで聴いたLSOの中では最悪の出来。コリン・デービスはいつもテンポがのろいけど、今回はそれだけじゃなくてもうガタガタ。ベルリオーズは一度たしかに大きくずれてしまったぞ。 

シベリウスの交響曲ってこんなまとまりのない曲だったっけ? 嫌いになりそうになっちゃうじゃないのよ。音大卒の友人は、「コリン・デービスが悪い」という意見だったけど、たしかにそうかも。シンフォニーでもオペラでも上手だと思ったことないわ。


kissin 2-3   kissin 2-4

いつも前の方の席で下から見上げので、バイオリンとチェロの人の顔しか知らないなあ



!? まさか、と思ったことはまだあって、


そういえば、このキーシン&LSOのコンサートに関して、驚いたことがあった。

地下鉄の通路のあちこちにキーシンの大きな顔写真のポスターが貼ってあったのだ。

クラシックコンサートのポスターやチラシなんて、切符の売れ行きの悪いものしか作らないと私は信じてる。


ポスターで判断すると、ロンドンて大したアーチストは来ないのね、と思うだろうけど、そうじゃないのよ、有名人の切符はすぐ売れちゃうからポスターなんか作る必要ないでしょ。だから今までキーシンのコンサートのポスターなんか見たことなかった。でも今回は彼がちょっとしか出ないのに4回もあって、それもラフマニノフの3番とかだったらいいけど、モーツァルトじゃねえ、ってとこでしょう。

でも、競争の激しいピアノの世界で何度か下手くそに弾くと、一回だけのリサイタルでもチラシが舞うことになるかもよ。


それにしても、いつも思うけど、ミュージカルとかに比べたら、クラシック音楽やオペラを鑑賞する人ってほんとに少ないよね。



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