10月31日、バービカンでロシア人ソプラノAnna Netrebkoとメキシコ人テノールRolando Villazonのジョイント・リサイタルがありました。伴奏はEmmanuel Villaume指揮のRoyal Philharmonic Orchestra


一人づつでも軽く満席にできるこの二人が一緒に出てくれるなんて、今年のバービカンのGreat Performersシリーズの中でも一番のホットイベントで、当日も切符を求める人がたくさんいました。


どちらかの熱狂的ファンにとっては他の一人が余分というか邪魔にすら感じるでしょうが、二人共何度も生で聴いたことはあるけどどちらも特にご贔屓というわけではない私には二人一緒はありがたいし安上がり。まあどちらが一人しか聴けないとしたら、私はネトレプコを選びますが、冷静に鑑賞できた私から見ても、サービス精神に富んだ素晴らしいコンサートでした。


最近よく共演する二人はとても仲が良さそうで、しょっちゅうつつき合ったり何か囁いてクスクス笑ったり。デキテルという噂もあるらしいですが、そうだとしたら彼女もう「あのオジサン」の保護がいらない程成長したってことでしょう。


まず、ルックスは?、というと・・・


女の子美しいと評判のネトレプコですが、先日ここに登場した金髪で白い肌の神々しい程の「アイス・ビューティ」のコジェナ とは対照的な「ダークなカワイコちゃん」。元体操選手だったという引き締まった西洋人にしては浅黒い肌と、真っ黒な髪をおかっぱ風にしてぐっと親しみ易く、表情もくるくると愛くるしかったこと。

最初は黒地のビーズ刺繍がちょっと光るドレスで現れましたが、華やかな歌姫にしてはちょっとシンプル過ぎるんじゃない?とがっかりしていたら、なんと後半は着替えてくれました。クラシック音楽のコンサートではこれはとても珍しいことで、皆「おぉ!」と感嘆。白地に黒いビーズと刺繍のスレンダーなドレスは彼女にとてもお似合いで、さっきの黒いドレスはこれを引き立たせるためだったのかと納得。


31 Oct 6 まずはシックなロングドレスで (写真はクリックで拡大)


驚いたのは、顔の吹き出物。前から3列目の私には肉眼でまるでアバタ顔に見えたので、双眼鏡でよく見たら、幸い一時的なブツブツでしたが。ごく少数の人しか気付かないでしょうから、遠くから見たら評判通りの美人歌姫。なんだか所帯やつれ気味のコジェナとちがって、ちゃんとマニキュアもペディキュアもしてました。



31 Oct 4   31 Oct 3

                      バンザーイ! バンザーイ!


男の子ヴィラゾンはチリチリ頭とゲジゲジ眉毛でミスター・ビーン似のコミカルなルックスなので、美男美女カップルにはなりませんが、それでも今日は髪もさっぱり短めにして、真新しいタキシードでしょうか、悪くないです。彼も表情豊かで、オペラで見ると芝居がとても上手でチャーミングとすら言えるほど。好みじゃないですが・・・




次に、パフォーマンスは、どうだったかと言うと・・・


私は前から3列目のやや斜めで彼らからは4、5メートルという、ほぼ理想的な席で31.45ポンド(37ポンドの枚数15%割引)でしたが、たとえ一番後ろの席の人でも充分に楽しめたにちがいありません。


音譜曲目はこちら


・オーケストラのみ - グノー 「ロミオとジュリエット」序曲

              チャイコフスキー 「ユージン・オネーギン」ポロネーズ

              ビゼー 「カルメン」4幕前奏曲

Mascagni Intermezzo (Cavalleria rusticana)

 

・Netrebko - グノー 「ロミオとジュリエット」 'Je veux vivre'   

ラフマニノフ Six Songs Op 4, No.4

Delibes shanson espagnole or 'les filles de Cadix'
Catalani 'Ebben?.. Ne andro lontana' (La Wally)


・Villazon - マスネ 'Ah! parais, parais, astre de mon ciel!' (Le Mage)
チャイコフスキー 'Kuda, kuda vi udalilis' (Eugene Onegin)

Sorozabal 'iNo puede serl! (La tabernera del puerto)

マスネ 'Mamma, quel vino' (Cavelleria rusticana)


・二人で - マスネ "Toi! Vous! (Manon)

チャイコフスキー 'Tvayo malachanye nepanyatna' (Yolanta)

Torroba 'iCallate, corazon!' (Luisa Fernanda)

プッチーニ 'O soave fancuilla' (La boheme)


女の子まずネトレプコが、グノーの「ロミオとジュリエット」の華やかなアリアでスタート。(パリスとの結婚を薦められて「嫌よ、私はまだ若いんだから、遊びたいの!」と明るく歌う有名な曲。その後すぐロミオに出会って「私、結婚したい」とコロッと正反対になってしまうガッツのない歌ですが),


これで、いきなりありったけの力を注いで、観客のハートをわしづかみ!

おぉ、今日は絶好調だ、と数秒でわかりました。


6、7年前、まだ売り出し中だった彼女を最初に聴いたときは声も体もほっそりして可憐そのものだったのに、その後は声が段々太くなり(体もちょっと)、それはいいのですが、歌い方も大胆というより雑な感じがして、ここ2、3年のロイヤルオペラハウスでのドン・ジョバンニやリゴレットでは(私には)期待外れのパフォーマンスが続いた彼女でしたが、オペラのアリアだけでなく、ラフマニノフの歌曲をしっとりと歌ってくれて変化にも富み、今日の出来は素晴らしくて、今が旬の歌姫として後光が射すくらい輝いていました。

いまだに「えーい、勢いでいっちゃえ~!」タイプで、ちょっと乱れた部分もありましたが、まだ若いし、リサイタルだし、いいことにしましょう。



男の子そうなれば、ヴィリャゾンも負けじと大熱唱。漫画のような顔で目一杯一人芝居をし(涙まだ出しちゃうのよ)、細い体でi精魂込めて歌い、ヴィリャゾンの方が大きな拍手をもらったアリアが多かったです。本当にこいつはいつも大熱演の熱血漢。バリトンのような太い声はとくに魅力はないし、歌だけCDで聞きたいとはあまり思わないけど、生舞台で映える人です。


だけど、残念なのはいつもフル回転で一本調子なので、何歌っても同じ。オペラでも同じ。私は何度か生オペラで観て、いつも感心するけど、でももうすでに飽きたような気もしたりして。テノール不足なんだから、ぜいたく言っちゃいけませんが。



女の子男の子二人のデュエットで一番よかったと思ったのは、マスネの「マノン」。マノンから逃れて修道院で平和に暮らすデグリューを訪マノンが誘惑するセクシーな場面で、芝居っ気たっぷりにオペラの一シーンを再現してくれました。二人で最近でロサンジェルスでこれをやったそうですが、評判になった「椿姫」よりも私はこっちが見たかったわ~!

と思ったら、ネトレプコはもうすぐマノンをウィーンでアラーニャとやるんだと。くっそ~!(ま、お下品な。ごめんあそばせ)

 


31 Oct 7   31 Oct 5

しょっちゅう手をつないだり見つめ合ったり、仲良しの二人。一体どういう関係なんだろう?



で、アンコールははどうだったの? 終演後にサイン会が控えていたので短かったのですが、


これがまずかった。


デュエットで3曲やってくれて、最初は聴いたこともない退屈で乗りの悪い何か。これはまだいい。

2曲目は予想通り「椿姫」の乾杯の歌。ハロウィーンの日だったので、彼は海賊帽子ち手のフック、彼女は魔女風のとんがり帽子で仮面舞踏会風。これは彼ららしいサービス精神の表れでグッド・アイデア。盛り上がりました。


31 Oct 1 海賊と魔女が「乾杯!」


で、ここでやめときゃいいのに、


次はLバーンスタインのミュージカル「ウエスト・サイド物語」の「トゥナイト」をやったんです。


バーンスタインはクラシック音楽の作曲家で、キリ・テ・カナワとホセ・カレラスが全部録音したことがあると言ってもこれはれっきとしたミュージカル。サービスのつもりだろうけど、ここに来てる私たちはそんなのよりちゃんとしたアリアを聞きたいぞ!たくさんあるでしょうが。

ミュージカルを馬鹿にしてるわけではないのです。発声法がちがうからオペラ歌手がポップスを歌うのは不向きだと言ってるわけで、現にこの日も歌いにくそうでいいとこ無しでした。


それに、どうしてもミュージカルナンバーが歌いたいなら、アメリカ人のニューヨークを舞台にしたやつじゃなくて、Andrew Lloyd Webberとかにしないと失礼じゃないの? アンジェラ・ゲオルギューはコベントガーデンでのリサイタルのアンコールでロンドンが舞台の「マイ・フェア・レディ」を歌ってくれたぞ。全然よくなかったけど、英語苦手だから間違えちゃ失礼だからって楽譜見ながら丁寧に歌ってくれて、ロンドンっ子を感激させてくれたもんだ。



と、最後が気に入らなかったけど、熱気溢れる素晴らしいコンサートでした。


着物姿が4人 が揃って嬉しかったですしね。


 

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