10月15日、ロイヤル・フェスティバル・ホールのRoyal Philharmonic Orchestraのコンサートに行きました。

音譜

Jean Sibelius Pohjola's daughter
Sergey Rachmaninov Piano Concerto No.3
      INTERVAL
Jean Sibelius Symphony No.5

Jukka-Pekka Sarasteconductor
Alexander Toradzepiano




ロンドンで数あるコンサートの中でこれを選んだのは、実は私の早合点と無知のせい。

知り合いが「アレクサンダー・タローっていう上手なピアニスがいるのよ。すっごくいいから」、と言っていたので、彼がロンドンに来るのを待っていた私。タローってどういうスペルか確かめなかったので、このAlexander Toradzeという名前を見つけた時に、あ、きっとこれだな、と思って買ってしまったわけです。

間違えたのはすぐわかったんだけど、ま、例のラフマニノフの3番と私の好きなシベリウスの交響曲だし、まちがいは納得済みでご一緒して下さる方も見つかったので、僅か9ポンドだし、行ってみることにしましょうかね。


ラフマニノフの3番は、映画「シャイン」でも出てきたように、難しいピアノコンチェルトの代名詞のように云われてる曲。これをロンドンの一流演奏家が出るロイヤル・フェスティバル・ホールで弾かせてもらえるくらいだから、そう下手でもあるまい。もし我慢できないくらい下手ならそれはそれで面白いし、何を期待していいかわからない分、気も楽だしワクワクします。

なかなか立派な経歴を持つ56歳のグルジア人Toradzeの演奏は、そのルックスを反映して、良い意味でも悪い意味でも「おじさん」。
少し聴いただけで慣れてることがわかり、シャインの若いピアニストのように途中で壊れてしまわないで、余裕で弾き通すことができるにちがいないと感じました。

しかし、力まずさらっと、というのは一つのスタイルだし、充分上手なのですが、なんか物足りなさを感じてしまった私。この曲に必要なスリルがないの。

第一線に進出したての若いピアニストの「ロンドンの檜舞台で初めてラフ3番を弾くんだ、緊張するな~」という気持ちが伝わってくるような演奏が好きなんですが、この巨大なたこ坊主のような風采おじさんは、余裕と言ってもそりゃこの曲ですから、途中でやれやれとてハンカチで顔とハゲ頭を拭い、「あと何回これを弾じゃろ」とか思ってるんじゃないかな、なんて感じてしまうわけ。

時折指揮者を差し置いてオケを従えようと腕がふりあげるというベテランの図々しさで、「わしは自分のペースでしか弾けんのじゃよ」、と訴えてました。でも、おじさんは音もそう外さずにオーバーアクションに陥ることもなく、堅実にまとめてくれたので、はい、文句はございません。お疲れ様でした。

    

尚、正しいタロー君(Alexandre Tharaud)は若くて可愛いフランス人ですが、来年2月にQueen Elizabeth Hallでリサイタルがあるのですが、とっくにかぶり付き席を確保済みです。
それに、ラフマニノフ3番は、来年3月にバービカンで、アンズネスが弾いてくれるので、こちらは期待大。


初めて生で見る指揮者のサラステはフィンランド人で52歳。白髪のすっきりした感じのハンサムで、同じフィンランド人のシベリウスを彷彿とさせる爽やかな中年ぶりが素敵です。コーラス席の楽しいのは指揮者の顔がよく見えることで、指揮者が良い男の場合はさらにグー。安いしね(9ポンド)。

シベリウスの交響曲第5番は、北欧的哀愁漂う曲が多いシベリウスとしては明るくて軽やかだなと思ったら、彼自身の生誕50年祝いのために作曲したもので、当時シベリウスはガンの恐怖から開放されてほっとしたところだったそうです。

そして春の訪れをふと感じた時にインスピレーションが沸いたとのこと。美しいハープの音色や弦楽器のピチカートなどの優しさを身近に聴けてなんだか幸せな気分。
超有名人が出てるわけではないこの程度のコンサートには私はほとんど行かないのですが、7割くらいの入りだったでしょうか。私が座った安いコーラス席は満席でしたが、値段の高い席は空きが目立ち、これでやっていけるのか心配になります。


  
コンサート自体もまあまあだった上に、着物で行けたし、帰りに見た国会議事堂とロンドンアイの夜景もきれいだったので、人まちがいも悪くない結果になりました。

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