雪の結晶1月10日、外に出るのさえ嫌なくらい厳寒のロンドンですが、バービカンの映画館に行ってきました。

プッチーニのLa Rondine(ラ・ロンディネー)。


映画と言っても、ニューヨークからの同時生中継だから一度だけだし、そうじゃなくても17.5ポンドもする切符が買ってあったら、そりゃ槍が降っても行くでしょう? (注:バービカン会員でない人はなんと25ポンドもする)



Production Nicolas Joel
Set & Costume Designer Ezio Frigerio
and Franca Squarciapino

オペラ三昧イン・ロンドン
Magda ...... Angela Gheorghiu (soprano)
Ruggero ...... Roberto Alagna (tenor)
Lisette ...... Lisette Oropesa (soprano)
Prunier ...... Marius Brenciu (tenor)
Rambaldo ...... Samuel Ramey (baritone)
Perichaud ...... David Won (baritone)
Gobin ...... Tony Stevenson (tenor)
Crebillon ...... David Crawford (bass-baritone)
Yvette ...... Monica Yunus (soprano)
Bianca ...... Alyson Cambridge (soprano)
Suzy ...... Elizabeth De Shong (mezzo-soprano)
Metropolitan Opera Orchestra and Chorus
Marco Armiliato (conductor).



さて、いきなりパフォーマンスに行っちゃいますが、


これはもう生中継の醍醐味をたっぷり味わわせて頂きました。


だって、最初にメトのゲルブ支配人が出てきたので、「わっ、誰が病欠なんだ!」と思ったら、


「ご心配なく、皆出ますから。但し、ゲオルギュー譲の具合が悪いので、ご理解を」、なんて言うんですもの。


ショック!えーっ! このオペラはアンジェラの独り舞台みたいなものなのに、一体どうなるんだろう、と一気に募る不安。


そして始まると、大画面だとアンジェラの歌いだす前の不安そうな顔や必死で喉をクリアにしようとしてる様子がはっきり映されて、もう固唾を呑んで祈るような気持ちで第一声を待ちました汗


そしたら、嗚呼やっぱり、・・・凄いかすれ声・・・・・・うわ~~っ、こりゃひどいわガーン


こんな大イベントでなければ絶対キャンセルしてたでしょう。アンジェラ可哀相~。オペラ歌手はナマモノだから、根性で克服できるわけじゃないしね。(幕間のインタビューでは、「もう全力使い果たしたわよ」と言ってましたが)


でも、ソプラノは、私が最近実際に聞いただけでもトラヴィアータのネトレプコNatalie Dessay の例もあるように、喉やられてる時は低い音域はかすれても高音はちゃんと出るみたいで、アンジェラも高音部になったら一応出ました。


ほっ!、これならなんとかなるかもと、とりあえず胸を撫で下ろし・・・。


でもこのオペラ、始まってすぐに、好調なときですら上手く出るかどうかギャンブルみたいな超高音のあるアリアがあって、それがこのオペラの一番の聞かせどころなのに、どうなるのかしらねえ・・・


それをアンジェラは中低音はかすれて出ないまま、高音は苦しそうだったけど、なんとか歌いこなし、緊張で息もできなかった聴衆からは「あ~っ、よかった~。これさえ終われば大丈夫かも」、という安堵の溜息。メトではもちろん大拍手(なぜかバービカンでは今日は誰も拍手しなかったけど)。


時々、大して具合悪くなくても「悪いですからご容赦願います」というアナウンスをする歌手もいるけど、今日のアンジェラくらい悪いと、最初のアナウンスは絶対必要でしたね。


そして、このアリアが終わって拍手に応えている時のアンジェラの嬉しそうな顔ったら!

 

普通の公演だったら絶対休んだでしょうから、貴重なものを大アップで見られました。但し、生だから興味深い目撃なのであって、不調な歌でDVDとかにしたらあまり観たくないし、アンジェラにとっても不本意の出来でお気の毒。


そして、高音はまあ一応出るようだし、彼女も頑張ってるんだからこれで我慢しようとは思っても、その後ずっと、今度の山場は越えられるかしら・・・ハラハラ、どきどき・・・しましたが、


後半は中音のかすれもかなり無くなって、段々安心感の方が勝ってきたのは幸いでしたが、でも観てるだけで疲れちゃいましたよ~(それ故に面白かったけど)。


ワンピースサンダル

というわけで、歌唱面では惨めでしたが、それをかなり補ってくれたのがビジュアル面で、1920年代のドレス3着を素敵に着こなすアンジェラの綺麗なこと!肉付きもちょうど良くて、ウエストはくびれてるし、胸の谷間もセクシー。

今日はアップで映えるように細やかな演技で、立ち居振る舞いも病気には見えないほど元気溌剌で上出来。


オペラ三昧イン・ロンドン     オペラ三昧イン・ロンドン



メモどんなお話なの?と言うと、


彼女が演じるマグダは、贅沢な生活はしているけれど本当の愛に飢えている囲われ者のお妾さんで、田舎の純真なボンボンと出会って恋に落ちるけれどここまでは椿姫と同じね、彼の親に結婚の承諾までしてもらったのに、汚れた過去に罪悪感を感じて自ら身を引くという潔い女性。(まるで新派のお芝居?)


椿姫は彼氏の父親に頼まれて身を引くけれど、このマグダは黙っていればずっと騙し通せたかもしれないのに、引け目だけで幸せを放棄してしまうわけで、その心の葛藤がテーマなのですが、椿姫には選択の余地がなかったから後で後悔はしないけど(死んでしまうからできないし)、健康なマグダはおそらく長い間後悔するんでしょう。


だからある意味でマグダの方が可哀相なんですが、でも生きていればなんとかなるわけで、ここから先はルジェロ(マグダの恋人)次第。これまでは親のスネかじりだけど、マグダの過去を知った今取れる道は三つあり、


1普通のお嬢さんだと思ったからマグダが好きだったのに、援助交際してたなんて不潔で我慢できない。僕は騙されたんだ。他の清らかな女性を見つけて結婚しよう


2それでもマグダのことを愛してる。僕の親には黙っていればばれやしないから、結婚して秘密を二人で守ろう


3そんな女なら結婚はできないけど、妾にすればいいんじゃないだろうか。よーし、彼女のパトロンよりお金持ちになって、マグダを奪ってやろう。


私は3が良いのではないかと思うのですが、いかがでしょう? 彼も頑張らざると得ないし、四方丸く収まるでしょ?


もちろん、このオペラ(オペレッタとして書き始めたから誰も死なないんだけど)には、彼氏の葛藤は一切出てこず、「え~っ、そうなの~っ、知らなかった~、わーんわーんあせる」と泣いてるところで終わってしまうので、ルジェロは極めて単純な役です。


演じたのは勿論アンジェラの夫ロベルト・アラーニャ


アラーニャは私の大ご贔屓テノールなので、色々言いたいことはあるのですがラブラブ!、すみません、今日は時間切れです。お琴の練習で忙しかったしね。プロダクション自体や他の歌手たちのことも書きたいし、<その2>に続きます。


                                      人気ブログランキング  ジーンズ