10月4日、スローンスクエアにあるカドガン・ホールにJuan Diego Florezのリサイタルを聴きに行ってきました。


昨年12月のバービカンでのリサイタル では風邪気味でしんどいのに無理して歌ってくれのは感動したけど、もちろん不調だったので聴いててハラハラしましたダウン


でも今日はちがう意味でまた感動し、ハラハラじゃなくてドキドキしちゃいましたドキドキ


テノールには惚れっぽい私ですが、フロレスの声が特に好きというわけでもなく、アラーニャや丸ちゃんやトビー君のように声を聞くだけでうっとりとはなりません。


そんな冷静な私が興奮してして胸がドキドキしたくらいですから、今回のフロレス王子は素晴らしかったのですクラッカー


まず、プログラムはこちら。


Gioacchino Rossini Sinfonia from ‘Cenerentola’
Gioacchino Rossini Deh troncate from ‘Elisabetta, Regina d’Inghilterra’
Gioacchino Rossini Oh muto asil del pianto from ‘Guglielmo Tell’
Gioacchino Rossini Sinfonia from ‘Barbiere di Siviglia’
Gioacchino Rossini Cessa di più resistere from ‘Barbiere di Siviglia’

INTERVAL

Vincenzo Bellini All’udir del padre afflitto from ‘Bianca e Fernando’
Vincenzo Bellini Sinfonia from ‘Norma’
Giuseppe Verdi Questa o quella from ‘Rigoletto’
Giuseppe Verdi Parmi veder le lagrime from ‘Rigoletto’
Gaetano Donizetti Sinfonia from ‘La Favorita’
Gaetano Donizetti Linda si ritirò from ‘Linda di Chamounix’


フロレス王子は出だしからパワー全開で、すぐに「おぉ、絶好調だ」とわかり、いつもは細い声で声量がいまいちかなと思うことが多い彼ですが、今日のこの力強さはどうだ。


いつもより深くて逞しくて、でもちゃんと彼らしい軽さところころコロラチューラは健在で、聞き飽きたリゴレットのアリア2曲もじっくりと聞惚れてしまいました。今が旬の超一流歌手が好調だとほんとに凄いラブラブ



むっでも、アンコールはちょっとがっかり。

だってさ、のっけから「これからは連隊の娘とジャンニ・スキッキはもう歌わないことにしました」なんて言われちゃったもんね。今までの私が行ったリサイタルはいつも最後は連隊の娘のハイC多用派手派手アリアを必ずやってくれた(サビは2回)ってのにさあ、今はもうフルオペラでやってるからそっち観てくれってことかしら? まあ私は今年初めに連隊の娘を3回も見たからいいんですけどね、でもこの至近距離で聞きたかった。


で、結局歌ってくれたのは、「愛の妙薬」の人知れぬ涙(いつもこれだ)、「女心の歌」の繰り返し(これもお馴染過ぎ)、セヴィリアの理髪師の繰り返し、グラナダ(出た、又。いつも通り)というわけで、新鮮味のない超マンネリアンコールでした。2001年に初めて私がいった彼のリサイタルからまるっきり変わってないってあんまりじゃないない?

私の席は前から三列目のやや右より、彼からは5メートルくらいというパーフェクトな位置で直接迫ってくる声の迫力はビンビン。大した人は出ないので私の守備範囲外であるこのカドガン・ホールでこんな席が買えたのはラッキー。28ポンドとリーズナブルだし。


カドガン・ホールはほどほどの大きさで雰囲気も良いし、洒落た地域にあるので、もっと来たいコンサート・ホールなのですが、フロレスも出て格が上がったことだし(もうすぐベンゲロフも)、これから頑張ってたくさんの一流の人が出てくれるといいけど。


(着物記事はまたあらためて)

  

メモさて、良い機会なので、私の今までのロンドンでのフロレス遭遇をリストアップしときましょう。

  2001年1月 チェネレントラ (ロッシーニのオペラ) @ROH 
  2001年1月 リサイタル with ピアノ伴奏 @St. John's Smith Square
  2002年3月 夢遊病の女 (ベッリーニのオペラ) @ROH
  2002年5月 リサイタル with オーケストラ @ロイヤル・フェスティバル・ホール
  2002年11月 リサイタル with ピアノ伴奏 @Wigmore Hall
  2003年1月 チェネレントラ (ロッシーニのオペラ) @ROH

  2004年11月 ウィンター・ガラ @ROH (ちょっとだけ。他にはゲオルギュー等)
  2004年12月 ドン・パスクァーレ (ドニゼッティのオペラ) @ROH  
  2006年12月 リサイタル with ピアノ @バービカン
  2007年1月 連隊の娘 (ドニゼッティのオペラ) @ROH (3回行きました)
  2007年10月 リサイタル with オーケストラ @カドガン・ホール


以上の他に、番外編として、2007年1月のROHでの公開インタビュー と、その帰りに運良く楽屋口でばったり会った時に握手 してもらったこともありますラブラブ!


とても後悔しているのは、2000年の彼のROH初出演であるロッシーニのオテロを逃したこと。その頃はすでにROHフレンズだったのに今のようにROHのオペラ全部を網羅してたわけではないのでしょぼん


大晦日や野外プロムスのように大きな場所でマイクで歌うのは除外すれば、それ以外の生舞台は全部見ているつもりです。


思い起こせば、最初にチェネレントラで見たときに数日後のリサイタルのことを知ってすぐ切符を買いに走ったら最前列が買え、当日も空席が目立つ二流ホールで、素朴で爽やかな好青年が、「しまった、歌詞忘れちゃった。もう一回歌うね」というハプニングも起こしながら和気藹々と、でも最後の「連隊の娘」の例のアリアでやんやの喝采となり、「有名じゃないけど、チェネレントラがよかったから聞きにきた」という多くの人に、「すごいテノールが出てきたものだ」と知らしめたのでした。


それからあれよあれよという間に大スターになったフロレス王子、僅か1年ちょっと後のリサイタルではロンドン一ともいえるロイヤル・フェスティバル・ホールを満員にしたばかりでなく、登場しただけで「わ~、本物のフロレスだ」と会場がどよめいたのでした。そしてこの時はアラーニャもライバル偵察に来ていて、私のちょっと後ろに座っていたのですが、多少タイプは異なるとはいえ自分より年下でハンサムなテノールが熱狂的に受け入れられているのをまのあたりにして胸中いかばかりであったことか。自分の持ち歌である「人知れぬ涙」まで目の前で歌われちゃあね。



今日の伴奏はロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラで、

指揮者はアメリカ人でまだ若いCristopher Franklin

俳優のKevin Baconを端正で長身にしたような良い男で、すっごく私好み。特に上手だとは思いませんでしたが。

(フロレスはハンサムだけど、あんまり惹かれるタイプではないの、実は)

満月 皆が「よかったね~」という満足した表情で幸せにしてもらった夜でした。

仕事で疲れてる時こそこういう楽しみが必要なんだと私もあらためて思った次第です。


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