6月16日(初日)と22日の2回、ロイヤルオペラハウスのリヒャルト・シュトラウスのAriadne aux Naxosを観に行きました。一回目は舞台すぐ横のストール・サークル(48ポンド)、2回目はアンフィシアターの立見席(6ポンド)



Composer Richard Strauss
Director Christof Loy
Revival Director Andrew Sinclair
Designs Herbert Murauer

Conductor Mark Elder
Primadonna (Ariadne) Deborah Voigt
Composer Kristine Jepson
Music Master Thomas Allen
Dancing Master Alan Oke
Wigmaker Jacques Imbrailo
Lackey Dean Robinson
Tenor (Bacchus) Robert Dean Smith/Richard Margison
Zerbinetta Gillian Keith
Harlequin Markus Werba
Scaramuccio Ji-Min Park
Truffaldino Jeremy White
Brighella Haoyin Xue
Naiad Anita Watson

Dryad Sarah Castle
Echo Anna Leese

The Major Domo Alexander Pereira


メモこのオペラ、


サロメ、エレクトラという血なまぐさい題材の後は一転して優雅な薔薇の騎士を作曲したRシュトラウスの次のオペラがこれですが、、「劇中劇」とがテーマになっていて、当然登場人物も劇の中のキャラクターとそれを演じる人たちの二役をやるわけで、大したことは起こらないのに内容が深まります。さすがリヒャルト・シュトラウス。


会場である18世紀の貴族の屋敷で時間がないからという理由で劇中劇としてシリアスなオペラと茶番劇を同時上演する羽目になるのですが、シュールと言うか、これだけで何かを皮肉ってるのでしょう。


皆ぶーたれながらも仕方がないのでおちゃらけ劇組がアドリブでまじめオペラに茶々を入れることになり、支離滅裂。実際には、おちゃらけ組は地のままなので、混じり合って滅茶苦茶と言うよりはバラバラで、融通の利かないまじめオペラ組は勝手に反応するわけにはいかずそのまま悲劇を続行するのですが、おちゃらけ組の言う事にどう影響されてるように見せるかどうかは演出次第。さすがシュトラウス。



ナクソス島のアリアドネ」というのは劇中劇のシリアス・オペラのことですが、ギリシャ神話のアリアドネミノス島の王女様で、つい最近ROHの新作オペラミノタウロス にも出てきた有名人。半人半獣(牛)ミノタウロスを迷路の中で倒したテセウスと一緒に念願叶ってクレタ島を離れたアリアドネですが、哀れなことにテセウスに捨てられてナクソス島に置き去りにされて、傷心のアリアドネは「もう死にたい・・」とばかり呟くのですが、男にちやほやされまくってるコメディ女優のツェルビネットは「なに言ってんのよ~。男なんか他にもたっくさんいるんだから、次のを見つけたらそれで済む問題でしょ」、と親切にアドバイス。


横でキャンキャン言う軽薄女の忠告なんぞ丸っきり無視する場合もあるのでしょうが、この演出ではアリアドネの身振りが「そう言われればそうよね」という風に見え、ちょっとその気になっているところ現われたお酒の神様バッカスをと恋に落ちて結局はツェルビネッタのお勧め通りの展開になってめでたしめでたし。


二役をすることによる深い見方もできるし、音楽的にも洗練された大人のオペラなのですが、薔薇の騎士同様、みどころは3人の女声の競演でしょう。


しっとり重く歌う傷心アリアドネと、超技巧コロラチューラの浮気者ツェルビネッタの二人の対照的なソプラノと、コメディと一緒くたにされて怒る作曲家はメゾ・ソプラノのズボン役。今回は作曲家役もスターが出る筈だったのに、エリーナ・ガランチャが早々に降りてしまい、一気に期待は下がりましたが。




ダウンご難続きのプロダクション


2002年の新プロダクションはパッパ-ノ音楽監督就任後最初のオペラで、シーズン幕開けをナタリー・デセーのツェルビネッタでぱっと華やかにやる筈だったのに、ナタリーが降りてしまったので、目玉なしの目玉焼きに。

代わりに黄身になってくれたMarlis Petersenが若くて美人で目のやり場に困るような超ミニスカートの脚線美で、歌も明るく上手だったので不満ななかったですが。


2004年の最初のリバイバルは、、アリアドネ役のデボラ・ヴォイトデブ過ぎるのが理由で降ろされたことが当時オペラ界だけでなく結構騒ぎになりました。ほっそりした代役のAnne Schwanewilmsの優しい声がなかなか素敵だったので私は文句なかったですが。


今回はそのデボラ・ヴォイトのリベンジが話題になってます。

あれから彼女は胃を小さくする手術までして痩身に努め、見るも無残な百貫デブから、まあこれくらいなら許そうかという小デブになるのに成功し、その意地と努力が賞賛されてます。


その話題で朝のTVワイドショーにまで出演できたのですから、宣伝効果で知名度が一気に上がり、結局得をしたんでしょう。


しかし、1年前のバービカンのリサイタル の時と比べたら、どうでしょうか、ほんのちょっと太り戻ったようにも見えましたが、デブでさえなければ整った顔立ちの美人である彼女ですから、明るいニュースとしてまた話題になってます。


問題と言えば、このセットがやっかいものらしく、二階建てになっている舞台をせり下げる作動がうまくいかないこともままあるようで、初日も休憩時間が予定より長かったです。




音譜パフォーマンス


まず、話題の中心デボラ・ヴォイトですが、初日は最初声の出が少々悪くて一度はかすれたりしたものの、段々と盛り上がり、最後は貫禄と存在感で充分屈辱を晴らしました。しかし、22日は精彩がなく、ずっと声が硬いまま声量も乏しく、一体どうしちゃったのでしょう?




作曲家のジェプソンは、前にROHのコジで聴いたはずなのに全く記憶がなく、容貌も含めたらガランチャより良いなんてことはあり得ないので期待は低かったのですが、立派な声で感心しました。


おばさんっぽい外見を若い男性だと思えと言われても無理なのですが、以前のソフィー・コッシュやスーザン・グレアムと比べても歌唱面では劣らないでしょう。



さて、心配でもあり期待もあったのはツェルビネッタのジリアン・キース。なんたってこれは大変な役だから、大劇場の経験がある人でないと無理じゃないかと思っていたのですが、金髪のおかっぱ風ヘアスタイルと小柄でキュートなまるでこのパリス・ヒルトン、大袈裟なクネクネ演技もあの容姿ならぴったり。、歌も、ビジュアル面も含めて、小粒だけどとても魅力的な小娘でした。


最初声量に問題ありかと思ったのですが、肝心な超コロラチューラのアリアは元々小編成のオケの伴奏の音が小さいので舞台のすぐ近くにいた私にはよく聞こえました。2度目は一番後ろで「聞いた」のですが(ほとんど見えない席だったので)、やはり彼女のこのアリアが一番楽しめて、拍手も一番多かったです。



  



作曲家の先生役はまたトーマス・アレン。こんなちょい役、彼なら軽くこなせるでしょうし、舞台の格を上げてくれてるとは思うのですが、いつも彼ばかりで飽きました。


その他の脇役は皆さん達者に熱演して満足のいくものでした。クリストファー・マルトマンの代役のMarkus Webraもよかったし、黄色いスーツのダンス教師のAlan Okeもいいですね。私のご贔屓の韓国人テノールPark君も得意のコミカル演技で目立ってました(トラヴィアータの時は悪目立ちだったけど)。


バッカス役はダブルキャストで、私は両方聴けました。Robert Dean Smithはちょっと前にラジオで聞いたNYメトのトリスタンがとても素敵だったので期待したのですが、たしかに同じ声なのに、ラジオほど響きがよくなくてがっかり。でも、数年前のROHのローエングリンよりはましで、充分合格点。


海坊主のような奇怪な容貌のマージソンはディーン・スミスよりもクリアな声なので私は好み。仮面舞踏会の主役もとてもよかったのですが、でも残念ながら今日は高音の出がうんと悪くて、大切なところを大失敗。


最近サーの称号を授けられた指揮者のマーク・エルダーは、36人の小編成オケを駆使して流れるような素晴らしい演奏でした。


しかし、オケや脇役がいくら素晴らしくてもアリアドネの出来に左右されるので、デボラ・ヴォイトの調子が戻らないと困りますね。元おデブのデブ(デボラの省略形)、しこ踏んで意地にでも頑張らにゃ。



   


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