11月22日、オッフェンバッハのLes Contes d'Hoffmannのドレス・リハーサルを観に行きました。


リハーサル切符は、フレンズだと各booking periodで一枚だけ売ってもらえます。リハーサルと言っても、オケの人が普段着な以外は本番通りやってくれるので、お値段が安い分とてもお得。先回は平日に無理してマティルデに行きましたが、今回は週末のホフマン物語にしました。


1980年からやってるこのプロダクション、何度も観たのでかなり飽きているとは言え、80年代のプロダクションは豪華で綺麗でまともで良いですね。



Composer Jacques Offenbach
Original Production John Schlesinger
Revival Director Christopher Cowell
Set DesignsWilliam Dudley
Costume Designs Maria Björnson

Conductor Antonio Pappano
Hoffmann Rolando Villazón
Lindorf/Coppélius/Dappertutto/Miracle (Villain) Gidon Saks
Nicklausse Kristine Jepson
Andrès/Cochenille/Pittichinaccio/Frantz (Servant) Graham Clark
Olympia Ekaterina Lekhina
Giuletta Christine Rice
Antonia Katie Van Kooten
Spalanzani Robin Leggate
Schlemil Kostas Smoriginas
Crespel Matthew Rose
Luther Lynton Black
Hermann Changhan Lim
Nathanael Ji-Min Park
Voice of Antonia's MotherGaynor Keeble





本ホフマン(詩人)

ロランド・ヴィリャゾンのROHのデビューはこのホフマンでした。4年前に「凄いテノール出現!」と鳴り物入りで登場した時は、たしかに充分上手だったのですが、テノールらしからぬ太い暗い声は私の好みではないのでとてもがっかりしたことをよく覚えています。

以来、いまや大スターになったヴィラゾンは何度もROHに出てくれて、その熱血ぶりにはいつも引き込まれるものの、聞惚れる声ではないので、冷静に鑑賞してます。

先回のドン・カルロは病み上がり後最初のROH出演だし、そうでなくても大役なのでハラハラしましたが、今回のホフマンはあちこちでやってて慣れているようだし、安心して観ることができました。

調子は上々で、期待通りの余裕たっぷりの貫禄パフォーマンスでした。なんといっても彼は芝居が上手なのが強味で、実はこの役は2001年にご贔屓のマルセロ・アルバレスもやっているので、私としては迷わず歌は丸ちゃんに軍配を高々と上げますが、芝居を含む総合点ではヴィリャゾンの勝ちかな(丸ちゃんに芝居で負ける人はまずいないでしょうが)。

細身で実によく動くヴィリャゾン、特にプロローグとエピローグの飲んだくれてボロボロのホフマンは抜群で、トレードマークのゲジゲジ眉毛も付け眉毛にしてのもご愛嬌。
他に大した人が出ていないので、彼にウエイトが全部掛かる今回のちょっと淋しい顔ぶれですが、それを充分に補える大熱演でした。

手裏剣(ミューズ/ホフマンの友人)

クリスチン・ジェプソンは、今年6月の「ナクソス島のアリアドネ 」の作曲家役が記憶に新しいメゾソプラノ。小太りおばさん容貌で損してるのは相変わらずですが、今回も立派な歌唱でした。ホフマンの3人の恋人たちがぱっとしなかった分、脇役の彼女が引き立ったのもラッキーかも。

女の子オランピア(人形)

このオペラのハイライトであるお人形のアリアは、上手な人にぱ~っと華やかに軽やかに歌って欲しいのに、今回のダブルキャストは二人とも無名のソプラノだったので不安でしたが、でも将来有望な新人かも、という可能性もあるわけで、一番楽しみでもありました。

誰が歌ってもハラハラする超高音やコロラチューラなのですが、このエカテリーナ・レクヒナ譲、ギリギリ合格というところでしょうか。

声が特に魅力的なわけでもなく、高音も一応出てましたが、彼女より上手に歌える人は他にたくさんいるでしょうに、という不満は残ります。でも、調子の良いときはうんとましかも、とも思えるので、もう一度聴くのが結構楽しみです(余程下手でない限り、誰が歌っても楽しみなアリアってことですが)。



恋の矢ジュリエッタ(高級娼婦)

オランピアとは逆で、これはもうベテランでROHにも慣れてるクリスティーン・ライスですから、大丈夫、悪い筈はないし、3人の中では貫禄と実力でベストにちがいない、という予想はつきました。今年4月のトムリンソンに一歩も引けを取らなかったミノタウロス は立派でした。

でも、今日は力をセーブしているのか、いつもより声量不足だったようで、もちろん充分上手なのですが、ちょっと期待外れでした。知的で容貌も地味目な彼女にこの役は妖艶さが不足気味ですしね。







音譜アントニア(歌手志望の娘)

うわ、嫌だなあ、私の嫌いなケイティ・ヴァン・クーテンだ。2年前のラ・ボエーム は丸ちゃん聴きたさに3回も行ったけど、彼女のミミは苦痛だった・・・。あの手のくぐもった声が苦手なんです。

この役はゲオルギューも歌ってくれたことがあり、とても素晴らしかったので、どうしても比べてしまうのですが、今日のクーテンは声もよく出て容貌も可憐でぴったりだし、彼女としては今まででベストな出来でした。声の質だけで決まってしまうミミよりはこの役は我慢できたし。
でも、これも他にたくさんソプラノはいるだろうに、ROHの若手歌手育成プログラム出身だからといってクーテンにしなくてもいいのに・・・って、もうこれは好みの問題だから、仕方ないですね。

ドクロ悪漢全て

ギドン・サックスって、聴いたことのない名前ですが、一言で言うと可もなく不可もなくってとこでしょうか。漫画チックに大袈裟に演じるのは、ヴィリャゾンを向こうに回してとても大事なポイントなので、その点は評価します。
でも、かなりのおじさんだし、声も盛りを過ぎたのは明らか。バリトンには点の辛い私としては高得点を上げるわけにはいかないけれど、先回(Mペトルージ)と先々回(Wホワイト)の悪漢二人よりは総合的にはちょっとましかも。

レンチJette Parker Young Artists3人

私が応援する韓国人テノールのJi-Min Park君がなんと言っても光ってました。ホフマンの取り巻き連中の代表として酒場でホフマンに歌をせびる役ですが、明るくコミカルは役ならまかせとけで、ヴィリャゾンのダークな声とは対照的なリリカルで澄んだパーク君の声は高らかに響きます。ホフマン役も向いてると思うので、いつかできるといいね。

娼婦ジュリエッタと悪漢に魂を取られた青白く死人のようなシュレーミル役のKostas Smoriginas君にも拍手。怒る役をクールに演じて、貴族風の衣装も似合ってハンサムだったし、低音も特徴があって素敵でした。バスバリトンだけど華のある彼は売れると思いますよ。


パーク君とコスタス君は2年生なので本舞台にも慣れているでしょうが、新入生の韓国人バリトンのChanghan Limはおそらくこれがデビュー。出番は少なかったのですが、存在感はあり、先が楽しみです。

   

 

指揮者はパッパーノ親分登場。こんな古ぼけたプロダクションなのによく振ってくれました。いまいちの歌手陣でもそれなりに映えたのは彼のおかげかも。

今日はアンフィシアターでしたが(10ポンド)、本番は舞台横なので、近くで観るのが楽しみです。


カメラ舞台写真を追加しておきます。


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