オペラ三昧イン・ロンドン


Engelbert Humperdinck
のオペラHänsel und Gretelのオペラを観に行きました。12月9日の初日、16日の録画日、クリスマスにTV放映されたその録画も含めると、同じキャストで3回観たことになります。


今回はクリスマス・シーズンの家族狙いのためか公演回数は多く、世界的スター歌手が出演するAチームだけでは足りないので、Bチームもあり(A.Coote、C.Tilling, A.Murray) 以前から切符を買ってあったのはAチームだけでしたが、蓋を開けてみたらBチームもなかなか評判が良かったんです。なので観に行こうかと思ったのですが、ぎっくり腰のために断念。


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オペラ三昧イン・ロンドン
Composer Engelbert Humperdinck
Director Moshe Leiser/Patrice Caurier
Set Designs Christian Fenouillat
Costume Designs Agostino Cavalca


Conductor Robin Ticciati
Hänsel Angelika Kirchschlager
Gretel Diana Damrau
Gertrud Elizabeth Connell
Peter Thomas Allen
Witch Anja Silja
Sandman Pumeza Matshikiza
EchoEri Nakamura/Simona Mihai/Anita Watson/Pumeza Matshikiza

Dew Fairy Anita Watson

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チョキオペラパー


1893年初演のこのオペラ、今まで機会がなくて今回初めてちゃんと観たのですが、なかなか良い作品です。子供も楽しめるオペラは貴重ですが、ワグナーの助手だったフンパーディンクですからワグナー風の重厚さもあり、決して子供騙しの作品ではありません。民謡的な明るさ楽しさと覚えやるい歌もいくつかあり、聞く度に親しみがわき素晴らしさもわかりました。


ソプラノとメゾソプラノの主役二人はほぼイコールな役ですが、ヘンゼルよりはグレーテルの方が歌唱面では得な役かも。



カラオケもう一人のEフンパーディンク


エンゲルベルト・フンパーディンク? 昔そういう名前のポピュラー歌手がいたわよね、と仰る私と同年代の方もいらっしゃるでしょう。


そうです、トム・ジョーンズと競ってた1936年生まれのイギリス人で、「リリース・ミー」とか「ラスト・ワルツ」は日本でも60年代にヒットしましたよね。


特に好きではなかったけど、60年代に青春を過ごした私には懐かしさ一杯です。あの時から妙な名前だと思っていたのですが、これはこのヘン・グレの作曲家に因んだ芸名だそうで(ちがう種類の音楽だから諸にパクってもばれないと思ったのでしょうか?)、父親がドイツに駐屯してた時に本名Arnold Goerge Dorsey少年はきっとこのオペラを観て気に入ったんでしょうか。

元祖フンパーディンクのヒットはこのオペラ一つだけなので、知名度はリリース・ミーのフンパーディンクの勝ちだし、元祖を広めることにも役立ってるにちがいないですね。今でも元気に歌手活動を続けているようで、そう言えばちょっと前にロンドンでもコンサートあったような。ライバルのトム・ジョーンズも健在。日本でも沢田研二とかまだ頑張ってるみたいだし、おじさんパワーは凄いのはおばさんも嬉しいです。


本グリム童話とのちがいかさ


原作はもちろんグリム童話なのですが、オペラの設定はかなり違います。


元の童話では継母が飢餓のためにヘンゼルとグレーテルを森に捨てようとする恐ろしい口減らしがベースになっていて、捨てられてもヘンゼルは小石やパン屑を落としておくので家に帰れるのですが、オペラでは本当の母親でごく普通のお母さん。

子供たちが内職をサボったり貴重なミルクをこぼしてしまったのを叱るのは貧乏だから当たり前のこと。何も知らずに森にイチゴを積みに行かせ、お父さんに恐ろしい森の魔女の話を聞くや大慌てで子供たちを探しに出ます。


オペラはストーリーよりも音楽的に膨らませるところは膨らませなくてはならず、童話での二度目に捨てられた時パン屑を鳥に食べられてしまったエピソードは出てこない代わりにヘン・グレがが森で眠り込む場面に第二幕を全部費やし、サンド・マン(砂男)に目に砂を入れられて眠りに落ちた後は天使がたくさん出てきて、兄妹は素敵な夢を見て幸せ一杯。


ということで、グリム童話のぞっとするようなエピソードは子供たち食べる魔女だけで、これは三幕目だけですから、全体としては大して怖くはないのがクリスマス時期に家族連れでいける人気オペラたる所以でしょう。



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家舞台と衣装くつ


新プロダクションは初日に行くことにしている私、これも情報白紙の状態でわくわくしながら観ることができました(リハーサルを観た人から実はちょっと聞いてたのですが)。


大体の感じは舞台写真でわかって頂けるでしょうが、現代に読み替えられていて割とリアリスティック。お父さんが食べ物を持って帰宅する場面ではスーパーのビニール袋が笑いを誘います。


森の書き割りなどは平面的で安普請の割には見映えがして良いのですが、ぞっとしたのは、魔女の家の大きな冷蔵庫に超リアルな子供のマネキンがたくさんロープでぶら下がっていたこと。魔法で仮死状態なのですが、あまりにグロテスク

後で全く同じいでたちの本当の子供たちが生き返って出てくるのですが、あんなの子供には見せたくないですよ。テレビで観たドレスデン版では巨大なキャンディのように紙で包まれていてかわいかったのに、このROHは本当の子供虐待を思い起こさせて残酷過ぎます。


もう一つがっかりしたのはお菓子の家。やっぱりこれが一番の見せ場だし、ふんだんにお菓子を使った家を見たいじゃないですか。他の場面は割とリアリティ重視のセットだし、大きなお菓子の家を作るのは難しくはないでしょうに、なんですか、これは! ダンボール箱くらいのちっこいチョコレートの家だなんて。二人が食べてぶっ壊れるので毎回作らなきゃいけないと言ってもこれはないでしょう。客席の後ろにいる子供客にはこんな豆粒ハウスじゃ見えませんよ。

衣装もね~、ウィットの利いたゴム手袋の目覚めの精とかは面白かったけど、ヘン・グレはなにもずっと寝巻きじゃなくてもいいのに・・


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食パンテーマは食べ物いちご


主役の二人は本当に空腹で舞台に上がった方がいいかもです、このプロダクション。冒頭シーンで延々と続く「お腹が空いたよ~」でリアルさが出るから、ということではなく、パフォーマンスの中で結構色んなものを食べなくちゃならないからです。森で拾ったベリー(ラズベリーかしら?)、夢の中で天使がくれたサンドイッチ、チョコレートとスポンジorビスケットの家・・・、まだお腹が空いていれば太らせようと魔女が口に無理矢理突っ込むアーモンドやレーズン。

観る方もお腹が空いているとヘン・グレのひもじさと食べる喜びをシェアできていいかも。


女の子パフォーマンス男の子


オーストリア人のキルヒーとドイツ人のダムラウにドイツ語のこのオペラはぴったりだし、二人とも一流ですからとても楽しみにしてました。でも期待が高過ぎたせいか、派手に歌い上げるアリアもないせいか、もちろん熱演だし上手なんだけど、なんかいまいち迫ってくるものがなかった二人だったような。近くの席が買えなくて、アンフィシアターの前の方とupperslipだったせいかも。なので、同じ日のパフォーマンスを生で聴いたときよりもテレビでアップで観たときの方が細かいところもよく見えてベターでした。


でも遠目には少年らしい凛々しさがチャーミングだったキルヒーもテレビだと顔の皺まで見えてしまい・・・。アップでは若くて童顔のダムラウの方が子役では勝ちだし、大根脚の無邪気な演技も可愛くて。


でもこうして生舞台と映像と同じものを両方見るのは興味深いことで、どちらが良いとも言えず別物で、一粒で二味楽しめてお得気分。


飲んだくれの父ちゃん役はトーマス・アレンで、ホームグラウンドの気安さか、この脇役に初挑戦。余裕で自分でも楽しみながらやってるサー・トーマスにメリー・クリスマス!


60代のアレンの妻役にぴったりなのがこれまた初老のリザベス・コネル。でもコネルおばさん、これをやりながらホセ・クーラとのトゥーランドット初日 にタイトルーロールに代役を立派に努めてただの脇役おばさんじゃないことを証明。今まで名前を聞いたこともない人でしたが、ヘン・グレ母さんも上手でした。


でもアレンとコネル、二人とも60代でしょうか、両親というよりまるで祖父祖母って感じでしたが、でもだからこそ、ベッドでいちゃついたりしてもまだ見ていられたのかも。


魔女役のアーニャ・シリアは、かつての後光も消えうせたようで、ただ叫んでるだけだったのが残念。


指揮者は80代のコリン・デービス。この人はいつもゆったりとしたペースみたいで、もうちょっとテンポ速くてもよかったかなあ。Bチームの若い指揮者はキビキビしてたみたいだから、そっちも聴いてみたかったです。


カメラ2回分のカーテンコール写真をアップしときますので、お好きなのをクリックで拡大してご覧下さい。


1 12月9日 アンフィシアターより


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2 12月16日 upperslipより


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インターバルにトーマス・アレンがVIPボックスでインタビュー受けてましたが、これは何のため?


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