9月27日、バービカンのロンドン・シンフォニー・オーケストラとキーシンのコンサートに行きました。今年3月のリサイタル 以来半年ぶり。
先回は中年太り気味で肌もブツブツだったけど、今回はお腹もへっこんでお肌もツルツル。なんてことがよくわかるほど、先回も今回も近い席なんです。今回は前から3列目のやや左よりと、ピアニストを見るにはパーフェクトな位置(オケには近すぎて不向き)。これで枚数割り引きつきで20.4ポンドというありがたいお値段。
演目はベートーベンばかりで、ピアノ協奏曲第3番と交響曲第3番(エロイカ)。
当日のリハーサルをご覧になった大のキーシンファンのmoonhighさんが、「今日はとっても調子がいいわ。パーフェクトよ」、と嬉しそうに仰ったので、一気に期待は高まります。
そして、いつもは調子が出るまでに少し時間の掛かるキーシン様ですが、今日は最初から本当に素晴らしかったこと!
音がとてもシャキッと澄んでこよなく美しく、しなやかで正確無比。私の席からは手がよく見えるのです。
曲のせいか、キーシンの強味だと私が思う左手の力強さはさほど感じられなかったのですが、今日は右手の動きに魅了されました。鍵盤を表面的になぞっているのではなく、ひとつひとつ丁寧に弾きこんで、足ならぬ手が地に付いてるんです。しかも絶妙なタッチで軽やかなこと。
やはりキーシンは凄い。他のピアニストは彼に比べたら雑魚ですわ、皆。
だけど、弾き終わったときの観客の反応は、意外にクールだったのは驚き。
6月にあったPで始まる老いぼれ元巨匠の唸り声リサイタル
のカーテンコールがスタンディング・オベーション(私以外)で、なぜこんな本物の天才の名演奏がおざなりの拍手だけなんだ?!絶対に間違ってる!
まあアンコールで超人テクニックみせびらかしの曲でも弾いてくれると思ってたから、大拍手はその時に、と思ってた人が多かったのかもしれない。
そのアンコール、1曲目はベートベンのユーモラスな小品で、そんなに興奮できる曲じゃないので、また普通の拍手だけ。さあ次はきっと「おぉ~~っ!」というヤツだな、と期待したけど、結局それで終わってしまい、コンチェルトの演奏の素晴らしかった割にはあっけなく盛り上がりのないカーテンコールでした。
今日は終了後にCDサイン会とかあるのかな? と、その時は思っていたら、そうではなく、実はキーシンがそれが理由で早く切り上げたかもしれないと私が思うイベントがあったのでした。
このコンサートは、某大手日系家電メーカーがスポンサーだったのですが(通りで、日本人が異常に多かったわけだ)、終了後にキーシンも出席したレセプションがあったのです
知り合いがそこに招待されていたので、後で様子を聞かせてもらっただけでなく、彼女がキー様と一緒に撮った写真もおねだりして拝借しました。
あらあら、キー様ったら、数人の美しい日本女性に囲まれてるのに、なんか浮かない顔してるわねえ。
どうしたの? ママがそばにいないからからな~? (5m先にはいらっしゃるのでしょうが)
それとも、スポンサーに、
「キーシンさん、今日はアンコールよりもレセプションの方が大事ですから、早めに切り上げて下さいね」、
とでも言われたの?
本当はこんな調子の良い日は弾きまくりたかったのにそれができなかったので、そして数十人の日本人招待客と握手するために千人以上のお金を払って切符を買ってくれた人たちを失望させた申し訳なさで胸が痛むの?
そうだとしたら、私も腹が立つな~。
招待されなかったのをひがんでいるわけではありません。私が真近に見たいのは演奏中の姿であって、それはかぶりつき席で充分満たされているし、ミーハー趣味はないので、サイン会で並んだり出待ちも一切しないのです。キーシン様は何度かコンサートやオペラで見掛けたこともあるしね。
ただ、滅多に機会はないのだから、少しでも長くキー様の演奏を聞いていたかっただけ。
でも、まあ今日は不調だった一年前のコンサート に比べると出来はうんとよかったし、それをこんな近くで聞けただけでラッキーだったと思うことにしましょう。キーシンは立派に健在です。先生もお元気そうで安心しました。
後半のシンフォニーは、お腹空いたし(仕事が忙しくて夕食食べ損ねた)、LSOは上手でもないし(先回のシベリウスはひどかった)、コリン・デービスはテンポのろいし、無視して帰ろうかしらとも思ったけど、アンコールが短かったせいで早く終わりそうだし、一応最後までいるか、と期待しないで聞いたのですが、これがなかなか締りがあって活気ある演奏だったんです。拍手もキーシンのときより大きかった(指揮者デービスの80歳直前のご祝儀の意味もあったかも)。